「赤ペンはむしろ見にくい」「プレゼン本の『良い例』は良くない例」 色弱者に聞く“本当に見やすいデザイン”とは?(2/3 ページ)

» 2018年12月08日 12時00分 公開
[ねとらぼ]

 「色名進化論」という学説があるのですが、それによると古代日本の基本的な色は白・黒・青・赤の4つしかなく、国際的にも類似した傾向が見られるそうです。

 そもそも、これほどたくさんの色や色名が日常的に使われるようになったのは、わりと最近のことではないでしょうか。例えば、私が子供のころ、祖父母や両親はまだ、緑色のことを「青色」というのが普通でしたよ。昭和30年くらいが転換期だったんじゃないかな。

 ちょっと話がそれますが、色の認識能力には不思議なところがあります。「認識できる色が多い/少ない」だったら、多い方が便利そうではありませんか?

―― 「大は小を兼ねる」ではありませんが、言われてみればそんな気がしますね

 東京大学大学院に、サルの色覚などについて研究されている河村(正二)教授という方がいるのですが、その研究によると「一般色覚(3色覚)のサルの方が、遠くの木に実っている果物を見つけるのが上手。でも、植物に擬態した虫を探すのは色弱(2色覚)のサルの方が得意」なんだそうです。

―― 一般色覚も色弱も、一長一短という感じですか

 そもそも脊椎動物は基本的に4色覚(センサーが4つ)で、ほ乳類の多くは2色覚。われわれは“色を見る能力を一部捨てちゃった生物の一種”なんです。人間やサルは、失った能力をちょっとだけ取り戻して3色覚になりましたが、鳥類などのように紫外線を見ることはできません。

 色弱を「機能欠損」「異常」のように捉えている人もいるかもしれませんが、私は決してそうではなく、「多様性」の一種なのではないかと考えています。いろいろな特性を持っている個体がいた方が集団としては強いでしょうし、認識できる色が少ないことがデメリットでしかないなら、ほ乳類自体が進化の過程で淘汰されているのではないでしょうか。

実は使いどころが難しい「赤ペン」

―― 色弱者にとって分かりにくいデザインとはどのようなものでしょうか

 私自身、色弱なのですが、「一般色覚者向けに色分けされたデザイン」のものを使うときは、コストがかかることがあります。例えば、以前は電車に乗るとき、入り組んだ路線を指で追ったり、よーく目を凝らしたりして路線図を見ていました。

 自分にとっては当たり前なので、それを不便とは思いませんでしたが、一般色覚を持っている人は色の違いを利用してサッと読み取ってしまうわけです。

 「色がそんなに便利なら、より多くの人が利用できるようにした方がいいよね」というのが、私たちの考え方です。「俺たちに合わせて赤色のものを、青色に変えてくれ」というのではなく、「赤色でも、ちょっと工夫すれば見やすくなりますよ」という感じです。

 分かりにくい色使いの一例として、“黒赤問題”があります。以前、鳥取県内の施設で使われている資料を調査したことがあるのですが、問題のほとんどはこれでした。

―― “黒赤問題”とは?

 例えば、白い紙に黒いボールペンで文字を書いて、重要なところを赤いボールペンで強調したとしましょう。

―― 学校のノートも、そんな書き方の人が多かったと思います

 あるタイプの色弱者には、濃い赤色はこげ茶色や黒色に近い色に見えます。だから、赤色で書いたところがかえって目立たなくなったり、見にくくなってしまうことがあります。





Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた