「仲良くなりたい」思いが交差を続ける―― 陰キャとギャルのすれ違い百合漫画『ふたりモノローグ』レビュー

みかげとひなたの告白の行方は――。

» 2019年01月08日 18時30分 公開
[miyamoコミスペ!]
コミスペ!
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています


 2018年12月1日。「サイコミ」で配信されていたWebマンガ『ふたりモノローグ』が完結を迎えた。2016年10月の連載開始から2年余りで、きっちり全100話。内容も話数もきれいな幕引きである。


ふたりモノローグ コミスペふたりモノローグ コミスペ

 小学生時代に親友だったふたりの少女、麻績村ひなたと御厨みかげ。彼女たちは過去にある行き違いから離れ離れになった間柄なのだが、高校に上がったおり、偶然にも同じクラスになっていた。ひなたは、ある日「あっ」と気付く。隣の席に座る、いかにも不良なおっかないギャル。彼女は10年前に仲良しだった「みかげちゃん」ではないか!

 いったい今までどうしていたのか。聞きたい。お話をして、また仲良くなりたい……が、いまや自分はすっかり腰の引けたネクラな女の子になってしまった。かつて、ふたりが疎遠になるきっかけを作ってしまったのは自分だ。まだ怒っているのでは? 絡まれてキレられたらどうしよう!? でも……。

 一方、みかげはひなたが思いもよらない内心を渦巻かせていた。「ひなたちゃん」がついに自分のことを思い出した様子。気づいてもらえてうれしい! 自分たちは特別な関係、一生の親友だ。ある事情から離れてしまったが、自分は彼女を守れるかっこいいクール女子になるべく10年ずっと努力してきた。落ち着け、落ち着いて声をかけるのだ……!

 かくして、陰キャだが意外と芯の強い少女と、見た目派手だが意外にネガティブで弱心臓なギャルが、仲良くなりたい気持ちは同じなのにそれぞれの性格のためにズレた思考にからめとられ、それでもなんとかかんとか距離を縮めていく怒涛(どとう)のコミュニケーション&ディスコミュニケーション物語が幕を開ける。

 見どころは地味っ子ひなたがみかげ視点では超絶かわいい天使めいた美少女と認識されている情景。ひなたの一挙手一投足に尊さを感じてはみかげがいちいち死にかける極大リアクションに大笑いさせられる。

 「食べてしまいたいくらいかわいい」という強烈な衝動にかられたみかげが顔面をモンスター化させてひなたをおびえさせる図がちょくちょくあって面白すぎるのだが、そこでみかげの怪物ヅラがイメージ演出と思いきやどうも本当に物理的な変化を起こしているのでは……? と思えるところに注目したい。

 後になって登場する、ドロドロの破滅的メロドラマ思考の権化・サロマちゃんがドス黒い泥のような影に全身まみれる姿もふくめ、イメージと物理が判然とせず入り交じる絵面は本作の数ある持ち味のなかでもとりわけ“マンガらしいマンガ表現”である。

 そのイメージと物理のミックスした表現がついにキャラクター個々の肉体レベルを超え、一つの空間を満たして概念バトルの場を形成するクライマックス(第98〜99話)は、壮絶の一語。ぜひ見届けてほしい。

 また、キャラクターの心情を追う筋立ては最終回までに波乱があり、ふたりの関係は友人としての好意に加えてみかげがもともと抱えていた恋慕を軸にロマンス色を帯びていくことになる。

 (恋愛感情としての)片思いをこじらせるみかげがいつ告白にふみきるか……告白するとひなたに引かれて友情が破綻するのではないか……というスリルが長くストーリーの底に敷かれていたのが、ある時点で逆にひなたがみかげに“片思い”を芽生えさせ、ひなたのほうが告白の勇気をもてるかどうかに焦点がスライドする転換は鮮やかで、そうくるかー! と感心に包まれる。

 ラブコメ作品全般でしばしば、最初は主人公が高根の花に憧れていたのが、途中で相手が主人公にほれて、逆にそちら視点で主人公の方が憧れの対象として追いかけられるようになる“折り返し”の展開がみられる。『ふたりモノローグ』後半は、そういう折り返しのひじょうに見事な例として今後長らく記憶されるべきだろう。

 そして最後の最後、大団円のなかで念を押すように“気持ちは通じ合いつつ思考はズレ続ける”ふたりの姿は、『ふたりモノローグ』というタイトルに対しても、また人と人の歩み寄りを描く物語であることに対しても、とても誠実でグっとくる。

 いやあ、ほんとうにいいマンガでした。





© COMICSPACE ALL RIGHTS RESERVED.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」