「どこか寂しげな空気なのに暖かい」 アニメ「おばけとこどもアニメーション」の不思議な世界観に中毒者続出
ずーっと見ていたくなる。
美大生が卒業制作で作った自主制作アニメ「おばけとこどもアニメーション」が、不思議な世界観で注目を集めています。なんかずーっと見ていられる。
話題になっているのは美大生の相原ふう(@aiharafu)さんが、TwitterやYouTubeで公開した約2分21秒の作品「おばけとこどもアニメーション」。“ちょっと不思議な世界の、ごはんの準備”をテーマに、体がちょっと透けているおばけと一緒過ごす女の子のひとときを描いています。
冒頭、キッチンに居るおばけは冷蔵庫から自分のごはんを取り出します。するとそこに「飯盒(はんごう)」のようなものを持った小さな女の子がやってきますが、それをあたためるためのレンジは高い所にあり、女の子の背では届きません。
するとそれに気づいたおばけは女の子から飯盒を受け取り、ぬ〜っと腕を伸ばして飯盒をレンジにIN。慣れた手つきでタイマーを合わせ、女の子にホカホカのご飯を渡します。
その後も女の子がうれしそうにご飯をふーふー冷ます間に、ティーバッグのお茶を用意してあげたりと、女の子をかいがいしく世話するおばけ。“おばけと人間”という一見コミュニケーションが取りにくそうな2人ですが、そこには確かな愛情があるように感じられます。
この作品にはTwitterでも「どこか寂しげな空気なのに暖かい」「会話という会話がないのに、仕草や動作から二人の関係性の良さを感じとれるので見ていてほっこりします」と世界観を絶賛する声が上がっており、動画は1週間で19万3000以上の“いいね”を集めています。
作者はなぜおばけを題材にした?
多くの人の心をつかむ作品はいかにして生まれたのか。ねとらぼ編集部は作者の相原ふうさんに取材を申し込みました。
――とてもステキな作風で寂しくも楽しい気持ちになりました。今回の作品で“おばけ”をモチーフに選んだのはなぜですか。
相原ふう:「こどもを見守る親か祖父母のような存在」を作中に組み込みたいと考えていたのですが、そこでわざわざリアルな大人像を描き込んでしまうのは何か違う……と。メッセージ性が露骨すぎて、押しつけがましさすら出てしまうかもしれないと思ったので、存在をぼかして、あえてよく分からないキャラクターとして描く事にしました。
――すごく引き込まれる不思議な世界観ですよね。キャラクターデザインにもオリジナリティーを感じました。
相原ふう:私はいわゆる「ギャップ萌え」を感じるものが大好きで、この作品でも、冷たさや不気味さがある中にも暖かさと優しさがあるような、二面性のある世界観を出したかったんです。そのために 背景はリアルな描写で薄暗く、どこかジメッとした不気味さすら感じさせるように描き込みましたが、対して、キャラクターはディフォルメされた絵柄で、かわいらしさを強く押し出したい気持ちがあったので、おばけもこどもも、このような丸っこいシルエットのデザインとなりました。
――作品をより楽しめるために注目してほしいポイントはありますか。
相原ふう:このシリーズにおいて、「ここはどういう世界で、なぜこどもとお化けは同居しているのか」、具体的なストーリーを語ることを私はあえて避けるようにしています。その理由は、見る人それぞれに想像の余地があってもいいと、それぞれの正解があってもいいと思っているからです。見た方々の感想や解釈を読み、他の誰かによってさらに作品が深まっていく……という流れがこの作品には生まれてきているようで、私自身も、その楽しみ方をしていただくことを、是非推していきたいと考えて欲しい。そんな風にして、それぞれの世界を広げてほしいです。
――制作期間はどのくらいかかりましたか。
相原ふう:約9カ月です。2018年4月〜2019年1月の間に「おばけとこどもアニメーション」シリーズの新作アニメ3本を、同時進行で進めていました。6月までは就活と並行してネタ考案、大まかな世界観設定、背景作画(没案も含め背景は新規で4.5枚描きました)を進め、アニメーション制作は大体7月から開始しました。目標としては11月までにアニメ3本(各2分ずつ)完成させたかったのですが間に合わず、いまも残りの2本を制作中です。
――作品は卒業制作で作ったとのことですが、卒業後はどんな進路に進まれる予定ですか。
相原ふう:実は勘違いされがちなのですが、就職先はアニメ・映像業界ではありません……。進路についてものすごくざっくり言うと、IT系のデザイナーとして就職いたしました。自分で作りたい物を生み続ける時間をこれからもずっと大切にしていきたいと思っていて、卒業後は仕事と並行してイラストやアニメーション制作を続けていけたらなあと思っています。ただ、自由に使える時間は美大生の今より圧倒的に少なくなってしまうと思うので、いかに作業を効率よく進めるか、いかに作り続けるための体力を持ち続けるか……という事が今後の課題です。卒業手前にしてこれが本当にうまくいくかどうか悩んでいるところなので、社会人として創作活動をコンスタントに続けて、自分のコンテンツを展開していらっしゃる方々のお話など、ぜひお聞きしたいなと思っているところです。
今後はどのような展開が待っているのか。「おばけとこどもアニメーション」の続編公開が楽しみですね。
画像・動画提供:相原ふう(@aiharafu)さん
(Kikka)
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