「VODがテレビを逆転」「TikTokで14億人がバイヤーに」 中国戦略マーケター「なつよ」さんが見た、2019年の中国で起こっていること(2/3 ページ)

» 2019年01月22日 12時00分 公開
[ひらりさねとらぼ]

トレンドは韓国からやってくる

 TikTokや、巨大ECサイト・Taobao(淘宝網)など、中国から世界に発信されるサービス・トレンドも増加してきている昨今。しかし、なつよさんによれば、中国は、韓国からやってきたトレンドをローカライズし拡張するのがうまいのだという。



 「日本は0→1でアイデアを形にするのが得意なんですけど、韓国は仕組み化・ブランディングが強く、世界への見せ方が分かってるんですね。中国はアイデアも仕組み化もまだ弱いのですが、投資マインドと圧倒的な市場があるので、ローカライズで1→5に爆発させられる」

 エンタメ業界での韓国→中国の流れを大きく加速させたのが、人気K-POPアイドルグループ「EXO」の中国人メンバーたちだ。韓国の大手事務所で韓国人メンバーたちとともに活動し、経験とファン層を得た彼らが、中国での活動に専念するようになったことで、「中国のエンタメ業界に確変が起きた」という。


契約争いやさまざまな原因で大多数の中国人メンバーが脱退した「EXO」だが、それが結果的に中国のエンタメに影響を与えている

 「2018年のインターネット番組の総ビュー数ランキングの5位までが、全部彼らの出演番組で占められてるんですよ。31億ビューとか、信じられない数ですよね、人口超えてます」

 中国全土で一大ムーブメントを巻き起こしている番組「創造101」(tencent)や「偶像練習生」(iqiyi)も韓国の大ヒットオーディション番組「PRODUCE101」からきているコンテンツである。

※上掲の企業名に一部誤りがあったため、修正しました(2019年1月31日8時15分追記)


動画が取得できませんでした

 「中国では今、各動画プラットフォームがいかにクオリティの高いオリジナルコンテンツを配信しユーザーを取り合うかの状態。日本のアイデアを生かして、独自性の強いコンテンツを輸出するいいチャンスだと思います」


全ては“アイコン”に巻き込まれる

 人口が多く、企業も多く、あらゆる情報やモノが氾濫している現代中国。トレンドをけん引している若者たちがモノやサービスを選ぶときの基準としているのが、誰が“偶像(アイコン)”であるかだ。どんなモノやサービスの広告にもアイドルが起用され、「まるで街中で何かの番組がオンエアされているような状態」だと、なつよさんは語る。



 「ピザからスマートフォンまで、全ての商材で、誰かしらがイメージキャラクターをしています。Web上でもオフラインでも同じ。みんな、Taobaoで検索するときも“○○同款(○○が持ってるのと同じもの)”というキーワードを打つんです。だから、メーカー側も最初から彼らにモノを持たせたり、スポンサーについたりする。消費者の思考回路や物を買う方法がある程度固定化されており、コンテンツとスポンサーの関係は非常に密ですね」

 各番組には1社単独でスポンサーがつき、番組の前後にCMを流すだけでなく、スタジオのあちこちにロゴをかかげ、出演者の飲み物やスマートフォンにも、そのスポンサーの商品が使われている。つまり、コンテンツと切り離された広告ではなく、コンテンツ自体に商材を入れ込む「プロダクト・プレイスメント」が主流になっている。

 この手法は日本や欧米でもメジャーになりつつあるが、中国では既に、映画関連広告市場において、シネアド(映画館で流れるCM)の売上を上回るほどの存在感を放っている。このトレンドの裏にある理由が「動画コンテンツの独り歩き」現象だという。

 「テレビがマスメディアとして君臨し、そこへの広告出稿が中心にある日本のエンタメ業界と違って、中国の”マス”の概念としては既にVOD(動画配信サービス)がテレビを逆転している。マーケティングもトレンドも中心はVODコンテンツなんです。ネット上の話なので、それがいろんなプラットフォームで拡散され、そうやってコンテンツが独り歩きすると、いわゆる外部の広告枠は消えてしまうじゃないですか。なので作品のなかに商材を入れ込まないといけない。特にVODの時代なので広告は基本『埋め込み型』が主流になりました」

 プロダクト・プレイスメントによって、コンテンツとスポンサーの関係は強化され、その媒介であるアイコンをフィーチャーした番組が大量に制作されたのが2018年の中国。2019年の各VODサービスの番組編成を見てもその傾向はしばらく続きそうだという。


若者に伝統芸能の魅力を伝えるというコンセプトのバラエティ番組「国風美少年」。中国のアイドルブームを活用し、伝統文化を若者に広めるというコンセプト

ストリートカルチャーの盛り上がりも最近のトレンド。「The Rap of China(中國有●哈)」は番組だけでなく、クラブやアパレルなども展開している(※●は口へんに喜)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/18/news145.jpg “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/17/news197.jpg 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  5. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  7. /nl/articles/2412/18/news059.jpg 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  8. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. /nl/articles/2412/18/news056.jpg 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
  10. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」