「VODがテレビを逆転」「TikTokで14億人がバイヤーに」 中国戦略マーケター「なつよ」さんが見た、2019年の中国で起こっていること(2/3 ページ)
トレンドは韓国からやってくる
TikTokや、巨大ECサイト・Taobao(淘宝網)など、中国から世界に発信されるサービス・トレンドも増加してきている昨今。しかし、なつよさんによれば、中国は、韓国からやってきたトレンドをローカライズし拡張するのがうまいのだという。
「日本は0→1でアイデアを形にするのが得意なんですけど、韓国は仕組み化・ブランディングが強く、世界への見せ方が分かってるんですね。中国はアイデアも仕組み化もまだ弱いのですが、投資マインドと圧倒的な市場があるので、ローカライズで1→5に爆発させられる」
エンタメ業界での韓国→中国の流れを大きく加速させたのが、人気K-POPアイドルグループ「EXO」の中国人メンバーたちだ。韓国の大手事務所で韓国人メンバーたちとともに活動し、経験とファン層を得た彼らが、中国での活動に専念するようになったことで、「中国のエンタメ業界に確変が起きた」という。
「2018年のインターネット番組の総ビュー数ランキングの5位までが、全部彼らの出演番組で占められてるんですよ。31億ビューとか、信じられない数ですよね、人口超えてます」
中国全土で一大ムーブメントを巻き起こしている番組「創造101」(tencent)や「偶像練習生」(iqiyi)も韓国の大ヒットオーディション番組「PRODUCE101」からきているコンテンツである。
※上掲の企業名に一部誤りがあったため、修正しました(2019年1月31日8時15分追記)
「中国では今、各動画プラットフォームがいかにクオリティの高いオリジナルコンテンツを配信しユーザーを取り合うかの状態。日本のアイデアを生かして、独自性の強いコンテンツを輸出するいいチャンスだと思います」
全ては“アイコン”に巻き込まれる
人口が多く、企業も多く、あらゆる情報やモノが氾濫している現代中国。トレンドをけん引している若者たちがモノやサービスを選ぶときの基準としているのが、誰が“偶像(アイコン)”であるかだ。どんなモノやサービスの広告にもアイドルが起用され、「まるで街中で何かの番組がオンエアされているような状態」だと、なつよさんは語る。
「ピザからスマートフォンまで、全ての商材で、誰かしらがイメージキャラクターをしています。Web上でもオフラインでも同じ。みんな、Taobaoで検索するときも“○○同款(○○が持ってるのと同じもの)”というキーワードを打つんです。だから、メーカー側も最初から彼らにモノを持たせたり、スポンサーについたりする。消費者の思考回路や物を買う方法がある程度固定化されており、コンテンツとスポンサーの関係は非常に密ですね」
各番組には1社単独でスポンサーがつき、番組の前後にCMを流すだけでなく、スタジオのあちこちにロゴをかかげ、出演者の飲み物やスマートフォンにも、そのスポンサーの商品が使われている。つまり、コンテンツと切り離された広告ではなく、コンテンツ自体に商材を入れ込む「プロダクト・プレイスメント」が主流になっている。
この手法は日本や欧米でもメジャーになりつつあるが、中国では既に、映画関連広告市場において、シネアド(映画館で流れるCM)の売上を上回るほどの存在感を放っている。このトレンドの裏にある理由が「動画コンテンツの独り歩き」現象だという。
「テレビがマスメディアとして君臨し、そこへの広告出稿が中心にある日本のエンタメ業界と違って、中国の”マス”の概念としては既にVOD(動画配信サービス)がテレビを逆転している。マーケティングもトレンドも中心はVODコンテンツなんです。ネット上の話なので、それがいろんなプラットフォームで拡散され、そうやってコンテンツが独り歩きすると、いわゆる外部の広告枠は消えてしまうじゃないですか。なので作品のなかに商材を入れ込まないといけない。特にVODの時代なので広告は基本『埋め込み型』が主流になりました」
プロダクト・プレイスメントによって、コンテンツとスポンサーの関係は強化され、その媒介であるアイコンをフィーチャーした番組が大量に制作されたのが2018年の中国。2019年の各VODサービスの番組編成を見てもその傾向はしばらく続きそうだという。
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