えん下障害の人の選択肢広げる“とろみ”ボタンつき自販機が話題 開発元に話を聞いた
コーヒーやココア、お茶なども。
一見するとよく見るカップ式自販機だけど、飲み物に「とろみ」をつけるボタンがついている――医療・介護の現場向けに開発された自販機が「これは便利」「全国に設置すべき」と話題になっています。
自販機のラインアップはコーヒー、カフェオレ、ココア、緑茶、抹茶オレなど一般的な自販機と変わりませんが、「とろみボタン」がついているところが違います。ボタンを押してとろみの濃度(薄いとろみ、中間のとろみ、濃いとろみの3段階)を選ぶと、飲み物がとろみの付いた状態で出てきます。
この自販機は、介護向けの補助食品を手掛けるニュートリーと、自販機大手のアペックスが共同で開発したもの。高齢や病気のためにえん下(食物などを飲み込むこと)がうまくできなくなった人のために作られました。
えん下機能が低下すると、水分や食物が誤って気管に入ってしまう「誤えん」が起きることがあり、誤えんしたものと一緒に細菌が気道内に入って誤えん性肺炎を引き起こす場合もあります。さらさらした飲み物は流れが速くて飲み込みにくいため、えん下障害のある人が安全に飲み込めるようにとろみをつける必要があります。
このため、えん下障害のある人が好きな飲み物をどこでも手軽に安全に飲める、とは言えない状況です。Twitterではとろみボタン付き自販機が、「少しでも多くの人が飲みたいものを飲めるようになる」と選択肢の幅を増やすと期待する声が寄せられています。編集部では、ニュートリーに開発の背景などをうかがいました。
ニュートリーは、飲み物にとろみをつけるとろみ材を販売しています。医療・介護の現場では飲み物にとろみ材を入れて手でかくはんしているため、時間と人手がかかります。とろみボタン付き自販機は、その解決策の1つとして開発したと同社は語っています。また、「えん下障害のある人が外出したときにどこでもとろみのついた飲み物を飲める状態でない」ことを解決したいという思いも背景にあったといいます。
開発にあたって大変だったのは、この自販機ではさまざまな飲み物が選べる一方、飲み物によってとろみがつくスピードが異なるということ。自販機から出てきたときに、それぞれの飲み物が同じ粘度になるためのレシピ構築やそれを機械化する点に苦労したとしています。
とろみボタン付き自販機は、現時点で都内の病院クリニック1軒で本格導入され(デモ設置も数軒)、スタッフや利用者からは好評を得ているとのこと。ニュートリーは病院や高齢者施設を対象に、2021年に2万台の設置を目指すとしています。
この自販機のメリットは、コーヒー、カフェラテ、ココアなど、なんにでもとろみを付けられ、ボタン一つで利用者の状態にあわせた粘度を選べるところだと同社。「誰でもどこでも飲みたいものを気軽に楽しめる」の実現に期待がかかります。
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認知症患者の水分摂取を支援することが目的。
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