東日本大震災で工場を失うも東電の補償はわずか 苦境の「もち処木乃幡」が再起賭けクラウドファンディング

オリジナル商品「凍天」が話題になって生産体制を増強した矢先に被災し、その後苦しい経営が続いていました。

» 2019年03月11日 18時07分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 東日本大震災に被災し、苦境に追い込まれた福島の米菓メーカー「もち処木乃幡」が、3月14日からCAMPFIREにてクラウドファンディングを開始します(リンク先は当日午後オープン予定)。新福島本店の開店資金調達が目的で、目標金額は1500万円。その背景には同社の悲惨な状況がありました。


プロジェクト

 同社は伝統食「凍(しみ)もち」の生産設備を有する唯一の企業。凍もちとドーナツをあわせたオリジナル商品「凍天(しみてん)」は、「福島のソウルフード」と呼ばれるまでの人気を博していました。2011年にはテレビ番組にとりあげられ、全国から注文が殺到。半年分の製造量に及ぶ注文に応えるべく、同社は生産体制の強化を決定しました。


凍天 人気商品「凍天」

 しかしテレビで話題になってから約2週間後、東日本大震災が起こりました。本社工場は福島第一原発から20キロ圏内にあったため、5年間立ち入り禁止に。増産のために用意されていた1年分以上の原材料1億2000万円相当を残して、退去せざるを得なくなりました。のちに確認したところ、工場は野生動物に荒らされて、食品工場として使える環境ではなくなっていたそうです。


現地 同社が公開した原発7キロ地点の様子

 復興を目指し、同社は宮城県名取市へ新工場を開設することに。東電からの賠償を見込み、銀行から4億9000万円の融資を受けて計画は進められました。ところが、その後東電との交渉は停滞。長年を経てようやく2019年2月26日付で提示された新工場移転費用及び増加利息・保証料に対しての和解案は、実際損額8億円に対しわずか1600万円弱だったといいます。

 さらに同年1月21日には、売上の3割強を支えてきた福島本店の、定期借地権契約が終了。メインバンクからは限度額の融資を受けていたため、新たな融資元を探したものの、借地の買い上げや他所へ移転する費用を調達できず、本店は惜しまれながらも閉店となりました。

 この会社存続の危機といえる事態を乗り切るべく、もち処木乃幡はクラウドファンディングを決定しました。調達した資金で作られる新福島本店では、新たに飲食スペースを設け、ホットドリンクや雑煮、ぜんざいなども提供する甘味処としての営業も行う予定とのことです。

 発表に際し、木幡喜久雄社長は「閉店間際にいただいたお客さまからの『多くの店が福島から撤退していく』との言葉が、胸に突き刺さりました。私たちは全国チェーンではなく、地元に根差して、地元に育てていただいた企業です。ですので、なんとしても早期に福島本店を復活させようと誓いました」とコメント。「事業の再建は、自社の再起への挑戦の第一歩として、また、お客さま、従業員、地元経済の復興に必ず役に立てるはずと信じて、新しい福島本店を復活させていきたい」と意気込みを述べています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/01/news004.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに……衝撃の経過報告に大反響 2024年に読まれた生き物記事トップ5
  2. /nl/articles/2501/01/news052.jpg ryuchellさん姉、母が亡くなったと報告 2024年春に病気発覚 「ママの向かった場所には世界一会いたかった人がいる」
  3. /nl/articles/2501/02/news027.jpg 【ハードオフ】2750円のジャンク品を持ち帰ったら…… まさかの展開に驚がく「これがジャンクの醍醐味のひとつ」
  4. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  5. /nl/articles/2501/02/news038.jpg 「どういうことなの!?」 ハードオフで13万円で売っていたまさかの“希少品”に反響「すげえ値段ついてるなあ」 
  6. /nl/articles/2501/02/news034.jpg 「脳がバグる」 ←昼間の夫婦の姿 夜の夫婦の姿→ あまりの激変ぶりと騙される姿に「三度見くらいした……」「まさか」
  7. /nl/articles/2501/01/news051.jpg 「衝撃すぎ」 NHK紅白歌合戦に41年ぶり出演のグループ→歌唱シーンに若年層から驚きの声 「てっきり……」
  8. /nl/articles/2412/31/news047.jpg 知らない番号から電話→AIに応対させたら…… 通話相手も驚がくした最新技術に「ほんとこれ便利」「ちょっと可愛くて草」
  9. /nl/articles/2501/01/news001.jpg 【今日の難読漢字】「手水」←何と読む?
  10. /nl/articles/2501/01/news048.jpg 「見間違いかと思った」 紅白歌合戦「ディズニー企画」で起きた“衝撃シーン”に騒然「笑った」「腹痛い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  2. 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  3. 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
  4. 「麻央さんにそっくり……」 市川團十郎の11歳息子・勸玄の成長ぶりに驚きの声 「大きくなってる!」「すでに貫禄がある」
  5. チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  6. 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  7. 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  8. 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  9. 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  10. 「デコピンを抱き寄せたのはもしかして」 妻・真美子さん第1子妊娠発表で大谷翔平の発言と行動に再注目 「“もう帰る?”は気遣っていたのかも」
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」