東日本大震災で工場を失うも東電の補償はわずか 苦境の「もち処木乃幡」が再起賭けクラウドファンディング
オリジナル商品「凍天」が話題になって生産体制を増強した矢先に被災し、その後苦しい経営が続いていました。
東日本大震災に被災し、苦境に追い込まれた福島の米菓メーカー「もち処木乃幡」が、3月14日からCAMPFIREにてクラウドファンディングを開始します(リンク先は当日午後オープン予定)。新福島本店の開店資金調達が目的で、目標金額は1500万円。その背景には同社の悲惨な状況がありました。
同社は伝統食「凍(しみ)もち」の生産設備を有する唯一の企業。凍もちとドーナツをあわせたオリジナル商品「凍天(しみてん)」は、「福島のソウルフード」と呼ばれるまでの人気を博していました。2011年にはテレビ番組にとりあげられ、全国から注文が殺到。半年分の製造量に及ぶ注文に応えるべく、同社は生産体制の強化を決定しました。
しかしテレビで話題になってから約2週間後、東日本大震災が起こりました。本社工場は福島第一原発から20キロ圏内にあったため、5年間立ち入り禁止に。増産のために用意されていた1年分以上の原材料1億2000万円相当を残して、退去せざるを得なくなりました。のちに確認したところ、工場は野生動物に荒らされて、食品工場として使える環境ではなくなっていたそうです。
復興を目指し、同社は宮城県名取市へ新工場を開設することに。東電からの賠償を見込み、銀行から4億9000万円の融資を受けて計画は進められました。ところが、その後東電との交渉は停滞。長年を経てようやく2019年2月26日付で提示された新工場移転費用及び増加利息・保証料に対しての和解案は、実際損額8億円に対しわずか1600万円弱だったといいます。
さらに同年1月21日には、売上の3割強を支えてきた福島本店の、定期借地権契約が終了。メインバンクからは限度額の融資を受けていたため、新たな融資元を探したものの、借地の買い上げや他所へ移転する費用を調達できず、本店は惜しまれながらも閉店となりました。
この会社存続の危機といえる事態を乗り切るべく、もち処木乃幡はクラウドファンディングを決定しました。調達した資金で作られる新福島本店では、新たに飲食スペースを設け、ホットドリンクや雑煮、ぜんざいなども提供する甘味処としての営業も行う予定とのことです。
発表に際し、木幡喜久雄社長は「閉店間際にいただいたお客さまからの『多くの店が福島から撤退していく』との言葉が、胸に突き刺さりました。私たちは全国チェーンではなく、地元に根差して、地元に育てていただいた企業です。ですので、なんとしても早期に福島本店を復活させようと誓いました」とコメント。「事業の再建は、自社の再起への挑戦の第一歩として、また、お客さま、従業員、地元経済の復興に必ず役に立てるはずと信じて、新しい福島本店を復活させていきたい」と意気込みを述べています。
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