コラム
» 2019年03月20日 20時00分 公開

アルゴンキン、ピースナウ、プトマヨ…… ゴスロリパンクブランドは本当にV系と共に衰退したのか? (2/2)

[水田眞子,ねとらぼ]
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ゴス・パンクとロリータは、どこで差がついたのか

KERA書影 雑誌・KERAや、ゴシックロリータバイブル。ゴスロリパンクファッションの入り口となることも多かったのではないでしょうか

 ヴィジュアル系のファンに多い服装として、アルゴンキンなどのゴス・パンクをモチーフにしたブランドと並べて語られるのは、ロリータファッションです。アルゴンキンなどのブランドが掲載されることで知られたファッション誌「KERA(2017年休刊、現在はWebマガジンとして存続)」でも、ロリータはゴス・パンクと共に大きく取り上げられていました。

 これらのファッションは発信地が原宿であったことから原宿系とも呼ばれることもあり、当時は休日ともなればその愛好家が竹下通りやラフォーレ原宿に集う姿も見られました。しかし、現在は原宿であってもこれらのファッションを身にまとった人を見るのはまれです。

 そんな中、街で見る機会が減ったとはいえ、当時と大きく変わらずに続いているのが”甘ロリ”を中心としたロリータファッションのブランドです。当時KERAに掲載されていたブランドが多数なくなり、全体的に縮小しているゴス・ロリ・パンクファッションのなかで、ロリータが生き残った理由はなんなのでしょうか。

 これについて、有名ロリータファッションブランドの関係者は「ブランド独自の世界観を貫いてきたためか、ブームなどは関係なく一定のファンを獲得できており、業績も極端な低迷は覚えがない」と語ります。安定した業績の理由は、一見はやり廃りのなさそうなロリータファッションですが、ロリータだけでなく一般のトレンドをブランドの世界観に落とし込んで取り入れたこと、海外ファンなど現在とは異なるターゲットを目指すなど、”新しさ”を重視したことだと考えているとのこと。

 また、現在ロリータを着用している層については「『ロリータファッションが好き!』という強い気持ちなど、着用する人それぞれのさまざまな願望や憧れを詰め込んだファッションのため、ヴィジュアル系バンドやアイドルなどの他の趣味とは関係がないと思います」という分析も聞くことができました。

 ロリータファッションは、もともと西洋のクラシックなものをソースに生み出された日本独自の比較的新しいファッション。そのため新しいものを取り入れるハードルが比較的低かったことが、ファンを離さず生き残ることができた大きな理由なのではないでしょうか。一方、西洋のファッションムーブメントそのものであるゴス・パンクはその成り立ちからオリジナルに近いトラッドな物が好まれ、ブランドの多くも変わらない良さを重視した結果、新しさやその時代らしさを取り入れることが難しく、結果として市場が縮小してしまったのではないかと筆者は考えます。

ゴスロリパンクブランドとこれから

 消費者の好みが細分化した今、ファッションブランドを存続させるのは簡単なことではありません。それは、バンドやアイドルにも同じことが言えるのではないでしょうか。好きなものをずっと楽しむには我々消費者が好きなものを「買い支える」ことが重要だ、というのもバンドやアイドルファンを中心に近年よく言われています。ゴス・ロリ・パンクブランドでも、一度はブランド休止を宣言したものの、クラウドファンディングなどにより復活したブランドもあり、これはある意味で正しいと言えるでしょう。

 しかし、ファッションなど消費者が新たなものを買うことで盛り上がるものに、作り手が新しさを求めなければ、消費者はお金を出したくても出すことができず、ブランドは衰退の一途をたどるのは明らかなことです。変わらないそのブランドらしさと、ファンをワクワクさせる新しさ、この2つが、これからのファッションブランドやエンターテイメントには必要不可欠な要素だと言えるでしょう。

 ゴス・パンク・ロリータのファッションブランドが無くなるとき、人それぞれのかわいい・かっこいいが尊重される世の中だったら、まだブランドが続いていたのではないかと思うことがあります。ゴス・パンク・ロリータファッションは、派手さゆえに街中で目立つこともあり、それゆえに興味があっても着られないという声も多く聞きます。ですが、好きな服を好きなように着て、なりたい姿になることは、何にも代えがたい喜びを与えてくれます。こうした喜びを、誰もがその人の大事なものとして扱うことが当たり前になれば、服飾文化がもっと盛り上がるのではないでしょうか。そうした社会を、私は1人のゴス・パンク・ロリータ愛好家として待ち望んでいます。

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