ついにスタート、西島秀俊×内野聖陽「きのう何食べた?」。奇跡なんか起こらない普通の食事ドラマ、料理もちょっと地味、だがそこがいい

4月5日24時12分に放送開始。

» 2019年04月05日 10時30分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 よしながふみ原作、西島秀俊、内野聖陽主演のドラマ24「きのう何食べた?」(テレビ東京)が4月5日の深夜からスタートする。連載開始から実に12年、「待望の」というフレーズがこんなに似合う作品もない。ドラマ化が発表されてから、ネットは沸きっぱなしだ。

きのう何食べた? 4月5日24時12分、待望の放送開始! ドラマ「きのう何食べた?」(C)「きのう何食べた?」製作委員会

 主人公は弁護士・筧史朗(シロさん)と、美容師・矢吹賢二(ケンジ)の同性カップル。同棲中の2人を取り巻く人間関係の機微をていねいに描く。核にあるのは、タイトルからもわかるように「食事」である。

 きちょうめんな筧は、節約のために毎日きっちり手料理をつくる。原作コミック内でも、かなりのページ数が筧の調理シーン(あと、1円でも安い素材を求めるスーパーでの買い物シーン)に費やされている。調理シーンは丁寧に手順が描かれているが、だからといって分量などが細かく記されることもないので、料理の素人にもマネしやすいのが特徴だ。

奇跡なんか起こらない普通の食事

 筧がつくるのは、特別な料理じゃない。原作の第1話に出てくるのは、ごぼうとまいたけの炊き込みごはん、豚肉とかぶとかぶの葉のみそ汁、小松菜と厚揚げの煮びたし、卵とたけのこのせんぎりとザーサイの中華風いためもの。ね、全然特別じゃないでしょ? 

 ある意味、ものすごく地味。味は「あまからすっぱい」のバランスがとれているが、なんとなく茶色い。筆者はいつもすごくおいしそうだと思うので(さっきメニューを書いているだけで腹が鳴った)、たまにマネしてつくってみたりするのだが、ある若い女性に「全然おいしそうじゃないですよね」と言われて驚いたことがある。まぁ、食事の趣味はいろいろだ。

 『きのう何食べた?』では、シロさんの手料理を食べて誰かが涙を流して感動したり、何か事件が解決したりするようなことは一切起こらない。奇跡も起こらないし、ロマンや説教めいた能書きが語られることもない。おいしいごはんで、ケンジがちょっと幸せを感じる。それを見て、シロさんがうんうんとうなずく。それぐらいだ。

 食事は毎日のこと。家庭の人々の生活を描くホームドラマは、かつて「めし食いドラマ」と呼ばれた。だとすれば、「きのう何食べた?」は同性カップルの家庭生活を描く王道のホームドラマと呼んでいい。

隅から隅まで充実のキャスティング

 原作が進むにつれて登場人物は年齢を重ねているので、シロさんはもう52歳、ケンジは50歳になった。発表されるなり「イメージ通り」「そっくり」と大反響を巻き起こした“今、一番エプロンが似合う俳優”西島秀俊は実年齢が47歳、イメージよりちょっとゴツかったけど、すさまじい憑依具合でケンジになりきっている内野聖陽の実年齢は50歳。ちょうど年頃もぴったりだ。

きのう何食べた? シロさんを西島、ケンジを内野が演じる(C)「きのう何食べた?」製作委員会

 普段は無表情なのに恋人には甘くて右往左往させられる芸能プロマネージャー・小日向さんに山本耕史、彼を翻弄する“ジルベール”に磯村勇斗がキャスティングされている。

きのう何食べた? 小日向さん&ジルベールのキャスティングにもネットが湧いた(C)「きのう何食べた?」製作委員会

 ほかにも富永さんに田中美佐子、大先生に高泉淳子、美容室の店長にマキタスポーツ(原作だと見た目はレキシ)など、よしながふみのキャスティングへの強いこだわりに制作サイドが十分応えたのがよくわかる充実ぶり。個人的に楽しみになのが、シロさんの母親役の梶芽衣子。イメージぴったりすぎて笑う。

きのう何食べた? シロさんとケンジの家庭、周囲の人間関係をていねいに描く本作。キャスティングが絶妙すぎます(イラスト:たけだあや)

 原作のKindle版がいま1〜2巻無料キャンペーンを行っている。1巻から読み返してみると、2007年の同性愛者に対する社会や人々の認識がものすごく雑だったり、無理解がはびこっていたりして驚く。人の良さそうな人たちが無遠慮な発言をして、それに筧がびくっと反応するが、なんとなくやり過ごすという展開が多い。連載当初は、筧の反応や周囲の人たちとのやりとりで、「ああ、同性愛者の人たちはこういう言葉についてこんな風に感じているのか」とほんのり理解していたような気がする。それぐらい筆者もこういう世界について無知だった。

 大ヒットした男同士のラブストーリー「おっさんずラブ」、オネエ言葉を話さない男性カップルが登場した「隣の家族は青く見える」、トランスジェンダーかつレズビアンの主人公が登場した「女子的生活」など、セクシャルマイノリティーを主人公にしたドラマが続出した2018年を経て、いよいよ真打ち登場という感が強い「きのう何食べた?」。今夜4月5日24時12分スタート。

きのう何食べた? 原作最新巻(15巻)。連載の中でシロさんとケンジは年を重ねている(C)よしながふみ/講談社

大山くまお

ライター。「文春野球ペナントレース2019」中日ドラゴンズ監督。企画・執筆した『ドアラドリル』シリーズ発売中。

Twitter

たけだあや

イラスト、粘土。京都府出身。Twitter

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」