長谷川京子×水野美紀×玄理×大政絢 金10「ミストレス 女たちの秘密」男性陣が怖すぎる、距離感が狂ってる
女4人の関係は浅くもないが深くもない。
ドラマ「ミストレス──女たちの秘密──」(NHK)第1話が、4月19日(金)夜10時から放送された。長谷川京子、水野美紀、玄理(ひょんり)、大政絢と、女が4人集まった。「女って怖い」的な描かれ方をするのかと思いきや、怖いのは取り巻く男たちのほうだった。
1話あらすじ「だからお願い、この秘密は墓場まで持って行って」
内科・心療内科医の香織(長谷川京子)、夫を亡くしてパン屋で働く主婦・友美(水野美紀)、化粧品会社勤めのビジネスウーマン・冴子(玄理)、お嬢様でジムのインストラクター・樹里(大政絢)の4人は、5年前にマラソン大会で出会った。それぞれ仕事も性格も違うが、定期的に女子会を開いて近況報告をし合う関係だ。
ある日の女子会で、香織は不倫相手・光一郎(橋本さとし)が亡くなったことを3人に明かした。死因は自殺。しかし、自殺のために光一郎が使ったモルヒネは、香織が違法に処方したものだった。友美は「もう終わったこと」「この秘密は墓場まで持って行って」と香織を諭す。
一方、友美は娘の友達の父親・周平(甲本雅裕)にお茶に誘われたことを喜んでいた。冴子はセックスがおざなりになっている夫・悟志(佐藤隆太)の気持ちを盛り上げようと、セクシーな下着を買い込む。父親のすすめで婚約を考えていた樹里は、ジムでレズビアンを公言する玲(篠田麻里子)に出会う。
距離感がおかしい男性たち
本作は、イギリス・BBCで2008年から2010年までに放送された人気ドラマ「ミストレス 愛人たちの秘密」(原題:Mistresses)の日本版リメイク作品だ。日本以外でも、アメリカ、ロシア、スロバキア、韓国でもリメイクされている。
アメリカ版のタイトルは「ミストレス 溺れる女たち」、韓国版は「ミストレス 愛に惑う女たち」と、いずれも邦訳時にサブタイトルがつけられている。愛情や他者によって女性が翻弄されていく物語であることがわかる。
女性が複数名集まると、互いに足を引っ張り合い「女って怖い」と溜飲(りゅういん)が下がる状況が期待されることがある。それに反するかのように、香織、友美、冴子、樹里の関係はカラッとしている。ビジネスウーマンの冴子が突然タヒチのハネムーンに思いをはせはじめても、香織が自分の不倫の状況を話しはじめても、それをとがめたり馬鹿にしたりする人はいない。離れすぎず近づきすぎない、大人の良い関係だ。
距離感がおかしいのは、彼女たちを取り巻く男性陣のほうだ。夜中に一人暮らしの香織を訪ねてくる光一郎の息子・貴志(杉野遥亮)。帰ろうとする友美を何度も引き留めようとする周平。この2人には、特にゾッとした。
貴志は、亡くなった光一郎の電話を使って香織に電話をかけていた。電話の中も見ているならば、香織が父親の不倫相手だということも確信しているかもしれない。
貴志「父は、最期のとき誰と一緒にいたんでしょう」
そう香織に問う貴志のまっすぐで光のない目と、後日香織を訪ねてきた貴志の母・佳恵(麻生祐未)の目がそっくりだった。
周平に出会ってから、友美は非通知の無言電話をよく受けるようになる。まだ誰がかけてきているのかはわからない。娘の友達の父親だからと、周平を強く警戒しない友美。亡くなった夫の保険金を盗られないように、という樹里たちからのアドバイスは、伏線なのかどうか。
女性4人の関係はどう変わるか
冴子の夫・悟志役の佐藤隆太がベッドで寝ている場面で、2016年に放送されたドラマ「ナオミとカナコ」(フジテレビ系)を思い出した。佐藤隆太は、ナオミ(広末涼子)とカナコ(内田有紀)に殺される夫でありDV加害者を演じていた。そのDV加害者役が、かなりのハマり役だった。
悟志は、冴子の気持ちをくまない夫だ。SNSやインターネット上の記事では、よく「女は共感して察してほしがるから良くない」という趣旨のものに賛同が集まっているのを見かける。しかし、冴子はしてほしいことも、何を考えて何に傷ついているのかも、全部素直に悟志に伝えている。それなのに、悟志はアクションを起こさず無視して笑ってやりすごす。彼の態度には、貴志や周平とはまた違った怖さがある。
「ナオミとカナコ」では、女性2人が信じ合い、支え合って男性や社会から逃げ出していく姿が描かれていた。今なら「百合」と評判が高まるかもしれない、濃密な女性同士の関係だった。
「ミストレス」はどうだろう。先に述べた通り、4人の関係は浅くもないが深くもない。今のところは、抱えている問題もバラバラだ。この4人が仲良しでいることに、どんな意味が与えられていくのかが楽しみだ。
第2話は、今夜26日22時から放送。
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