“ゲイの本音”に挑む2話「腐女子、うっかりゲイに告る。」 全部が欲しくて苦悩のゲイに腐女子が告白しちゃった
「母さん、はやく孫が見たいなぁ〜」オカンの願いのために女性を抱けるのか?
腐女子が思いの外ソッコーでゲイに告白した、よるドラ「腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。」(NHK総合・土曜23時30分〜)第2話。
第1話では腐女子とゲイがお互いを理解し合おうとしながらも、根本の部分で分かり合えない姿が描かれていたが、第2話では、安藤純(金子大地)がゲイであると知らない状態ではあるものの、腐女子・三浦紗枝(藤野涼子)が予想以上にグイグイ距離を縮めてくる。
第2話のあらすじ「君が取るべき行動は3つしかない」
水族館でのダブルデート以降、純へ思いっきり分かりやすくアプローチをかけ続けている紗枝。純が読んでいる小説を自分も読んでみたり、QUEENを聴いてみたり、お弁当に誘ったり……。
純のチャット仲間ミスター・ファーレンハイトは「間違いなく彼女は君に惚れているね」と指摘、「君が取るべき行動は3つしかない」と選択肢を挙げる。
「自分が同性愛者だと明かして彼女を振る」「同性愛者だと明かさずに彼女を振る」「同性愛者だと明かさずに彼女と付き合う」
紗枝のことは好きだが「ラブじゃなくてライクだ」という純に対し、ファーレンハイトは「ラブとライクでは『好き』のすべてを表現できないよ」「勃つ好きと勃たない好き」があると主張。結局、純にとって紗枝は「勃つ好き」ではないということなのだろう。
一方、幼なじみの高岡亮平(小越勇輝)に対しては、「ボクは亮平と付き合いたいと思ったことは一度もない。だけど亮平とセックスしたいと思ったことは何度もある」と考えている。つまり「勃つ好き」なのだ。
純はそんな亮平から半ば強引に誘われる形で、紗枝とクラスメイトの今宮麻衣(吉田まどか)、小野雄介(内藤秀一郎)、そして雄介の彼女と一緒に、遊園地に行くことになる。グループ交際! 青春!
ボクはすべてが欲しい!
人間として好意を持ってはいても、性的対象としては見れない紗枝、いくらグイグイとアプローチしてこようと「付き合わない」という選択肢しか考えられないわけだが、純はそう単純には割り切れない。
だいぶ年上な同性の恋人・佐々木誠(谷原章介)が、ゲイであることを隠して、妻子と家庭での生活を続けているように、純も将来は結婚をし、世の中の男性が持つ「普通」を手に入れたいと考えているからだ。
「純くんがステキな家庭を築く未来が今見えた! 母さん、はやく孫が見たいなぁ〜」
母親・陽子(安藤玉恵)もこんなことを言ってくる。たわいのないオカン・トークなんだろうが、ゲイの息子にとってはなかなか重い。自分の性志向に素直に従っていたら、世間一般でいう「ステキな家庭」も「孫」も手に入る見込みはないのだから。
そんな思いを抱きつつ当日を迎えた遊園地デートでは、雄介から「(今日のデートは)お前と三浦をくっつけるため」だとネタばらしをされる。
「好きな人が幼なじみに奪われようとしているのに、のんきに応援とか正気の沙汰じゃねえわ」
流れ上、紗枝が純に告白するのに協力するような形になっているが、実は亮平は紗枝のことが好きなのだ。
「亮平のことを思うなら、お前はそれ(告白)を断れ」
自分の気持ちを押し殺して、紗枝と純の応援をする亮平。雄介も言葉はキツイが、それも友達である亮平のことを思ってのこと。紗枝は紗枝で、思いっきりストレートに純への好意を丸出しにしている。みんな高校生らしいピュアさ!
一方、思いっきり裏の顔を抱えているのが純だ。紗枝も、まさか純が父親ほど年の離れたおっさんと不倫をしており、濃厚な肉体関係を持っていようとは思ってもいないだろう。
観覧車の中でマンツーマンという、どんな返事が来ても逃げ出せない、初心者にはなかなかおすすめできないシチュエーションで告白をする紗枝。
紗枝は「勃たない」程度の好き。亮平の気持ちも知っている。なによりアイ・アム・ア・ゲイ。純の選択としては断るのが正解だが、ここで心の叫びが。
「欲しい! 欲しい! 欲しい! ボクは全てが欲しい! 男に抱かれて悦びたい。女を抱いて子をなしたい。誰かの息子として甘えたい。自分の子どもを甘やかしたい!」
友達たちを巻き込んで、ピュアネスの塊のような告白を繰り出してきた紗枝に対して、純は煩悩丸出しで「すべてが欲しい!」とキスをした。
ゲイは女性を抱けるのか?
今回、フィーチャーされていたQUEEN楽曲は「I Want It All」。ファーレンハイトはこの曲を踏まえて「アニタの気分だよ」といっていたが、これはもちろん、チリ人妻・アニータ・アルバラードのことではない。
「I Want It All」はQUEENギタリストのブライアン・メイが、強欲な妻・アニタ・ドブソンの口癖「全部欲しい、今欲しい」をヒントに作った楽曲とされている。ブライアン・メイ作詞作曲だが、若かりし頃には女性の恋人と付き合っており、後年は男とも女ともヤリまくりだったフレディ・マーキュリーの人生とも重なってくる。
同性の恋人がいるのに「同性愛者だと明かさずに彼女と付き合う」を選択した純。自ら「鬼畜だね」と語っていたルートだ。
純からオッケーをもらい、メチャクチャうれしそうにしていた紗枝だが、どう考えてもハッピーになる結末が見えてこない。
近年、LGBTを取り扱ったドラマは増えているが、多くはキャラクター設定のひとつ。萌えの一要素として程度の扱い。本作は「ゲイの本音」という、そこから一歩踏み込んだテーマに挑んでいる。
原作『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』の作者・浅原ナオトは自らゲイであることをカミングアウトしている。それ故に、ゲイを過剰に貶めることもなく、必要以上に「萌え」みたいな扱いにすることもなく、リアルな本音を表現できているのだろう。
ゲイは世間体のために女性を抱けるのか?
さらに突っ込んだテーマを、NHKがどこまでドラマ化できるのか見届けたい。
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