ニュース
» 2019年05月08日 18時06分 公開

芸能人が天皇陛下に「お疲れ様でした」で炎上 → 国語辞典編集「新しい謎ルールの誕生としか言えない」

「目上には失礼」は「新たな謎ルールの誕生」なんだそうです。

[高橋ホイコ,ねとらぼ]

 ある芸能人が「天皇皇后両陛下お疲れ様でした」とInstagramに投稿したところ批判が殺到したという報道を受けて、『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明氏は「目上への『お疲れさまでした』が不可とされるなら、それは新しい謎ルールの誕生だとしか言えません」とTwitterに投稿。「お疲れさま」がどのように使われてきたかを解説しています。

上司に「お疲れさま」と言って怒られる部下 「お疲れさま」は目上の人に用いてOK

 投稿に対し寄せられた批判は「天皇皇后両陛下に対し『お疲れさま』という言葉を使うのは失礼だ」といったものでした。目上の方に使うべき言葉ではないと、筆者も最近どこかで聞いた覚えがあります。それ以来「お疲れさま」という言葉が非常に使いづらくなりました。

 飯間氏は国語辞典編さんのために、現代語の用例を採集する作業を続けています。「お疲れさま」という言葉がどのようにして生まれ、どう使われてきたのかをTwitter上で分かりやすく説明しています(以下、Twitter投稿を引用。太字は編集部によるもの)。

 小林多計士『ごきげんよう 挨拶ことばの起源と変遷』などによれば、「お疲れさま」はもともとは芸能人の間で階級抜きの挨拶として使われ、戦後に一般に伝播したようです。ただし、島崎藤村「破戒」には〈『おつかれ』(今晩は)〉という農村の挨拶があり、起源はけっこう古いらしい

 昔は、目上に対して「ご苦労さまでした」が普通に使われました。昭和天皇に対して三木首相(在位50年記念式典)や中曽根首相(在位60年記念式典)が「ご苦労さまで(ございま)した」と述べた例も報告されています。ところが、20世紀末に「目上に『ご苦労さま』は失礼」という謎ルールが生まれます

 倉持益子さんの研究では、1990年代に「上司には『ご苦労さま』より『お疲れさま』がふさわしい」と言われるようになった模様。平成17(2005)年度の国語世論調査では、上司をねぎらう場合に7割近くが「お疲れさま」を選んでいます。「お疲れさまでした」は目上への挨拶の新スタンダードだったのです。

 「ご苦労さまでした」にしろ「お疲れさまでした」にしろ、「俺は苦労も疲れもしとらん」「目下から言われたくない」と思う人は当然います。そういう人への配慮はあっていい。でも、一般的には、目上に「お疲れさまでした」と言ったとしても問題ない。集中的に批判されるようなことではありません。

 飯間氏は、各種国語辞典がどう解説しているかにも言及しました。三省堂国語辞典・明鏡国語辞典・現代国語例解辞典では「目上に使う」としており、新明解国語辞典第5版のみが「目上の人には用いない」と解説しています。

「お疲れさま」各国語辞典の記述(抜粋)
辞書名 版数(発行年) 階級に関する記述
三省堂国語辞典 第5版(2001) 階級に関する記述なし
三省堂国語辞典 第6版(2008) 上役に向かっても言う
三省堂国語辞典 第7版(2014) 目上に向かっても言う
新明解国語辞典 第5版(1997) 一般に目上の人には用いない
新明解国語辞典 第6・7版(2005・2012) 同輩以下に対するねぎらいの言葉として用いられる
明鏡国語辞典 初版(2002) 目上の人に対しては(御苦労様より)「お疲れ様」を使う方が自然
明鏡国語辞典 第2版(2010) 目上の人に対しては(御苦労様より)「お疲れ様」を使う方が自然
現代国語例解辞典 第5版(2016) 普通、目上の者にいう場合に用いられる
辞書の抜粋 「お疲れさま」各国語辞典の記述(画像提供:飯間浩明(@IIMA_Hiroaki)さん)

 『新明解国語辞典』だけが「目上の人には用いない」と解説しています。これはどう解釈すれば良いのでしょうか。

 「お疲れさま」が多くの国語辞典に載るようになったのは、以外に最近で、とりわけ、会社用語として一般化してからです。『新明解』第5版の説明は、それ以前の、まだ「お疲れさま」が敬語として出世する前の語感に基づいているのかもしれません。あるいは、「お疲れさまで(ございま)す」ではなく「お疲れさま」は目上には使わないという意味かもしれません(ならば当然です)。なお、第6・7版では禁止的な表現を避けています。

 現在、「お疲れさま」を目上に用いてOKという辞書は多く、この用法を不可とするのはやはり酷でしょう。

 「失礼だ」と感じる人に対し個別的に配慮することはあってもいいですが、SNSの投稿を批判するほどのことではないようです。

高橋ホイコ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2201/24/news081.jpg 「めっちゃ痩せててびっくり」「尊敬しかない」 ガンバレルーヤ、1カ月半で“22キロ減”の別人ショットに反響
  2. /nl/articles/2201/25/news024.jpg 「抱っこされる時のおててが可愛すぎる」 猫ちゃんが両前足をおなかの上でそろえる姿にもだえる人続出
  3. /nl/articles/2201/25/news097.jpg 「かつみ・さゆり」さゆり、美肌極まる“ナチュラルメイク”姿に反響 「本当に奇跡の50代」「めっちゃ綺麗!!」
  4. /nl/articles/2201/25/news036.jpg 【漫画】妻から夫へ「私が100回言っても聞かないのに他人が言うと一発」 夫婦の会話の攻防に「いいね100万回押したい」
  5. /nl/articles/2201/25/news093.jpg 工藤静香、愛犬バブルが腕の中で天国へ 病魔と闘い抜いた家族との別れに「辛過ぎますが愛している証」
  6. /nl/articles/2112/21/news078.jpg 和田アキ子、“美人で有名”なめいっ子と偶然再会 芸能人並の顔立ちにファン沸く「きれい」「かわいい」
  7. /nl/articles/2201/25/news110.jpg トンガに物資を運ぶ自衛隊員の“ステキなアイデア”にジーンとくる…… 「お疲れ様です」「泣けてきました」と称賛の声
  8. /nl/articles/2201/25/news177.jpg 犬の散歩中に野生のコヨーテに遭遇! 米俳優、とっさの行為が「愛犬家の鑑」「スーパーヒーロー」と称賛
  9. /nl/articles/2201/24/news035.jpg 「みんなのパピー時代見せて」 愛犬のかわいい写真を投稿→ぶっこまれたオチが「この破壊力w」と爆笑を巻きおこす
  10. /nl/articles/2201/25/news145.jpg 競泳・池江璃花子、ヘアカットでばっさりショートに 抗がん剤治療後のくるくるヘアにも「可愛い」の声

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「どん兵衛」新CMに星野源が復活も衝撃の新展開 “どんぎつね”吉岡里帆の正体明かされ「完全なホラー案件」「狂気を感じる」
  2. ハラミちゃん、“公称145センチ”も本当の身長にゴチメンバー驚き 「デカイっていわれるのが嫌になっちゃって……」
  3. 西川史子、退院を報告 「生きていて良かったと思っていない」と告白も、力強い現在の心境明かす「私は医師です」
  4. 「もうアヒル口」「美人確定ですね!」 板野友美、生後2カ月娘の“顔出しショット”にみんなメロメロ
  5. 「気ぃ狂いそう」 木下優樹菜、生配信中止で“涙のおわび動画” やらかしたスタッフに「生きてたらミスぐらいする」
  6. 東大王・鈴木光、“お別れの笑顔”で司法試験合格を報告「本当にありがとうございました」 SNS閉鎖に涙のエール続々
  7. 「こんな普通に現れるの?!」「バレそうで心配」 倖田來未、駅のホームに“普通に並ぶ”姿にファン驚き
  8. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」「どストレートに餅で笑った」と称賛集まる
  9. 第1子妊娠のすみれ、母・松原千明と2年ぶりに涙の再会 「やっとママに会えました」と感動的な親子ショット公開
  10. 渡辺裕之、66歳バースデーで息子と2ショット 合同誕生日会に「すごいお料理とケーキ」「イケメン息子さん」