救ってあげた少女を「取り殺してやる」 背後霊がひねくれた愛を見せる漫画、結末があたたかくも切ない

悪霊のふりをしながら、生き残った女子の人生を幸せな方へ――背後霊が見せる無償の愛。

» 2019年05月14日 07時30分 公開
[ねとらぼ]
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 交通事故でクラスの女子の身代わりとなって死んでしまった男の子の霊が、「取り殺してやる」とその子に憑き始めたけれども――。ひねくれ者な背後霊と少女、2人の歩みを描いた漫画「背後の霊くん」がTwitterで人々の心をあたためています。

画像提供:しまざき(@shimazakikazumi)さん

 暴走トラックに引かれそうだった女子を蹴り飛ばし、代わりに死んで幽霊となってしまった玲人。こんな形で早々に死ぬつもりはなかったようで、生き延びた女子が彼の葬式でいつまでも湿っぽくしている姿に腹を立て、彼女を取り殺すことを決意します。



 しかし殺すなんて建前で、実際は彼女の人生を救ってばかり。罪悪感に駆られ歩道橋から飛び降りようとしている彼女を「俺が取り殺すっての」と蹴飛ばして止めさせたり、大学入試試験日の朝に目覚ましに気付かず眠り続けているのを「幸せそうに寝てんなし」と蹴り起こしたり。荒々しい言動で悪霊を演じていますが、やっていることは完全に彼女の守護霊です。




 背後霊の存在に気付かずとうとう社会人となった彼女は、職場で思いを寄せていた男性からプロポーズされます。しかし玲人の死を引きずっているためか素直に喜べず、悩んだ末に断ろう、としたところへ玲人が激しい蹴りをお見舞い。これがきっかけで結婚することになり、彼も「人生の墓場に送り込んでやったわ」と皮肉を吐きます。




 最後、玲人の墓に結婚を報告しに来た彼女。「いちいちこんなとこ来んなし」と相変わらずひねくれた態度を取り続ける背後霊をよそに、彼女は天国の彼に向かってこう笑いかけ、物語は幕を閉じるのでした。「相手の人 玲人くんに似ててね」「やさしいの」。

 死んでしまった自分に縛られず、幸せな人生を送るよう彼女を導く――そんな玲人の無償の愛は彼女には見えていなかったわけですが、彼がそういう優しい人間であることを彼女は初めから知っていた上に、忘れることもなかったのです。ラストの「やさしいの」という一言には、玲人の真心が報われたような感動があると同時に、「もし2人が結ばれていたら」と別の未来を考えずにはいられない、一抹の切なさがあります。墓前で笑いかけられた玲人は、どんな表情をしたんだろう。

 作者は、ガンガンpixivで『三年差』を、ツイ4で『乙女男子に恋する乙女』を連載している漫画家のしまざき(@shimazakikazumi)さん。Twitterで不定期に投稿している短編漫画も人気で、今回の「背後の霊くん」は3年前に制作したものを再度紹介したものでした。

 漫画はTwitterで1万5000回以上リツイートされるなど大きく話題に。読者からは「自分、涙よろしいか?」「電車で、泣いた」「お話が優しすぎて死ぬ」と感動の声が多く寄せられ、「切ない...玲人君ええやつやなぁ」「愛のある蹴り」と玲人の優しさに心打たれる声が目立っています。

 なおしまざきさんは同作の続きとなる漫画「帰ってきた霊くん」「霊くんとわたし」をpixivで公開中です。結婚した彼女はどうなったのか、玲人くんは相変わらず背後霊を続けたのか、気になった人は追いかけてみてください。

画像提供:しまざき(@shimazakikazumi)さん

しまざきさんの書籍(Kindle Storeで配信中)

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