向井理史上最高の当たり役「わたし、定時で帰ります。」5話 「セクハラしてくる会社と仕事する必要はない」(1/2 ページ)
「本当にあんな飲み会が楽しい?」「相手に気を持たせるレベルでやめてます」同性に嫌われる女の葛藤がリアル。
5月14日放送「わたし、定時で帰ります。」(TBS系)が取り上げたテーマは、セクハラ。“同性に嫌われる女”と描かれがちな派遣社員・桜宮の葛藤を描いた5話はリアリティにあふれていた。
第5話あらすじ「どこまでならやっていいですか?」
ある日、ランダー社から緊急の要件だと呼び出された制作4部のメンバー。先日OKが出たはずの20周年サイトのデザインに「ピンとこない!」とダメを出され、困り果てる東山結衣(吉高由里子)たちであったが、桜宮彩奈(清水くるみ)は先方の要求をあっさり承諾した。「桜宮さんに任せておけば問題なし!」と笑顔で中西(大澄賢也)らに言われ、結衣はランダー社と桜宮の関係を不信に思う。
後日、2人だけでランダー社に行った結衣と種田晃太郎(向井理)。そこで晃太郎は桜宮がセクハラされているとの報告を受けたと中西に告げた。中西は飲みの席で桜宮と盛り上がっている動画を見せ「そんなバカなまねはしない」と強調する。帰社後、結衣は「本当にあんな飲み会が楽しい?」と桜宮に問うが、彼女は「どこまでならやっていいですか?」「相手に気を持たせるレベルでやめてます」と笑顔で返答した。
その日、中西からグラウンドでのランニングの誘いを受けた桜宮は、「開発中のウェアのモニターをしてほしい」と水着のようなウェアを手渡され、仕方なくそれを着てランニングした。翌日、吾妻徹(柄本時生)に呼び出された結衣はランダー社の草加(田本清嵐)と会い、ウェアを着て走る桜宮の動画を見せてもらう。怒り心頭の結衣は動画を晃太郎と福永清次(ユースケ・サンタマリア)に見せた。晃太郎は「一旦、俺に預からせてくれ」と言って席を立った。
その日はランダーとの打ち合わせがあり、結衣は中西に「桜宮にセクハラをするな」と訴える。そのタイミングで、晃太郎が遅れて到着。晃太郎は結衣の態度を謝罪しながら、ポストイットで「そのまま、続行。先方を怒らせていいから言いたいことを俺に」と結衣に指示、結衣はランダー社への文句を言い続けた。たまらず、「この仕事は他社に任せる!」と怒り叫ぶ中西。その言葉を聞いた晃太郎は「承知しました」と言って退出した。実は晃太郎は制作本部長とあらかじめ話をしており、悪評が出ているランダー社から断られるようにしろと指示を受けていたのだ。しばらくして、ランダーのブラック体質は週刊誌に掲載された。
屋上で「ウェアを着ろと言われたときは情けなかった」と涙する桜宮。結衣はそんな彼女を「自分を大切に仕事しよう」と抱きしめた。
反感を買いやすい桜宮の葛藤を掘り下げていた
桜宮のような存在にはリアリティがある。愛嬌があって、ノリが良く、容姿が良い女の子。自分の腕に自信が持てなかった彼女は「相手に気を持たせるくらいのほうがうまくいく」と割り切っていた。事実、その方法で仕事が円滑になることは多い。でも、両刃(もろは)の剣だ。相手からのハラスメントが強くなりかねない。身を削ることでしか勝負できないと思い込み、いつしか消耗している。そんな女性はよく見てきた。「どこまでならやっていいですか?」と戦略的なつもりでも、そんな割り切れるほど人は強くない。しまいには露出の激しいウェアを着せられ「さすがに情けなかった」と桜宮は涙を見せた。
彼女のようなひとが職場にいた場合、周囲(男女問わず)のリアクションでありがちなのは「自業自得」と切り捨てる態度である。しかし、“同性に嫌われる女”と描かれがちな桜宮の葛藤を、このドラマは丹念に掘り下げた。仕事のために自らを犠牲にしてはいけない。「自分を大切に仕事しよう」と結衣が桜宮を抱きしめる場面には救いがあった。泣くほどのつらさを見て見ぬふりしてきた彼女に「桜宮さんは腕あるよ」と言葉をかけた結衣。やはり、彼女もこんな風に正当に認めてもらいたかったのだ。
そういう意味で、福永の存在は見逃せない。身を削って成功しようとする桜宮を“便利な子”呼ばわりし、「プライベートで飲みに行く分には自由」「女性ならではの役割がある」と口にしてしまえる怖さ。この手の上司は世に多いが、「あの飲み会は変」と正面切って言ってくれる存在はあまりいない。
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