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» 2019年05月23日 17時54分 公開

格ゲーのコントローラーに新たな潮流 “最短入力”が可能なレバーレスコントローラー「ヒットボックス」に注目集まる

理論上最強とされるコントローラー。

[イッコウ,ねとらぼ]

 格闘ゲーム界で、レバーレスのコントローラー「ヒットボックス」が注目されています。従来、格闘ゲームで使用されるコントローラーはゲームセンターの筐体と同じように操作する「アーケードコントローラー」(アケコン)と、両手で持って操作するタイプの一般的なコントローラー「ゲームパッド」(パッド)の2種類が主流でしたが、「ヒットボックス」の優位性が格闘ゲーマーの関心を集めた形です。



 ヒットボックスとは、従来は十字キーやレバーで行っていた8方向への入力をボタンで行えるようにしたコントローラーの総称(もともとは特定の製品を指していましたが、同様の特徴を持つものも「ヒットボックス」と呼ばれることがあるようです)。ヒットボックスは少なくとも2011年には存在していましたが、格闘ゲーマーの間で「ストリートファイターV」のプロゲーマー・ガフロ選手が2018年にヒットボックス型のコントローラーを使用し始めたことが話題となり、その後2019年から同型のコントローラーをウメハラ選手が使用しはじめたことで、一気に広まったとみられます。


画像 ウメハラ選手とガフロ選手が使用しているのはヒットボックスを更に改良したもので「ガフロボックス」などと呼ばれていますが、この記事での表記は便宜上「ヒットボックス」に統一します(画像はガフロ自作コントローラー販売ページより)

なぜヒットボックスは有利なのか

 では、なぜウメハラ選手とガフロ選手はヒットボックスを使い始めたのでしょうか。その答えは「入力を最短で行える」という点にあります。


画像 ※以下、方向キー入力をテンキーに変換して表記します。(↓が2、→が6、↑が8など) (参考URL:入力方向と数字表記について - ゴジライン

 例えば、アケコンを使用して歩きガード(前入力の直後に後ろを入力)した場合や、ガード方向を即座に切り替えた場合、ほとんど目視できないほど一瞬ですがニュートラル(どこにも入力していない状態=「棒立ちして無防備な状態」)を経由することになります。こうした操作は1試合中に何度も行うものですが、ヒットボックスはレバーではなくボタンで方向入力を行うため、歩きガードやガード方向の切り替えを行う場面でも構造上ニュートラル状態の時間をゼロにすることができます。細かい要素ではありますが、こうした「一瞬の無防備」を減らせばディフェンスの面で決して小さくない影響が出るのです。

 ヒットボックスはオフェンスの面でも大きな利点があります。例えば、ウメハラ選手が使用する「ガイル」の必殺技「ソニックブーム」のコマンドは「4タメ→6+パンチ」というもの。ソニックブームを連発する際は4と6の入力を往復する関係上、何度もニュートラルを経由してしまいますが、ヒットボックスであればこれをなくしてより回転の早い連発が可能になります。また、タメ時間を最適化することもでき、アケコンやパッドでは(現実的に)不可能なコンボが可能になるケースもあるようです。そのため、ウメハラ選手が使用する「ガイル」やガフロ選手が使用する「バイソン」のようないわゆる「タメキャラ」は、ヒットボックスを使用するメリットが特に大きいといわれています。


画像 入力にかかったフレーム数を(裏技で)表示できる「THE KING OF FIGHTERS XIV」で検証してみました。レオナのムーンスラッシャー(コマンドは「2タメ→8+パンチ」)をなるべく最速で入力してみたところ、やはりニュートラル状態が1フレームから2フレームでてしまいました(「・」の部分がニュートラル部分。横の数字がフレーム数)

※フレーム:ゲームの時間を示す単位のこと。現在のほとんどの格闘ゲームでは60フレームで1秒となるため、1フレームはおよそ0.0167秒。

※タメキャラ:一定時間特定の方向に入力し続けてから必殺技が出せるようになるキャラクターのこと。

 ヒットボックスは、アケコンやパッドと比較して明確な欠点が見いだしづらい一方、有利に働く場面は前ステップやバックステップ、ファジー、タメコマンドへの適性など多岐にわたります。もちろん「ヒットボックスを使うだけで大幅な格上に勝てるようになる」ということはありませんが、ヒットボックスを自在に使いこなせるようになれば、互角だった相手にも優位に戦えるようになるはずです。

※ファジー:複数の攻め手に同時に対応するために行う行動のこと。ファジーガード、ファジージャンプなど複数の種類がある

ヒットボックスの使用は禁止されるのか

 ヒットボックスの優位性に注目が集まる一方、「大会での使用を禁止するべきなのでは」との声も上がっています。実際にヒットボックスが禁止される可能性はあるのでしょうか。


画像 ヒットボックスが禁止される可能性はあるのか

 日本の格闘ゲーム界で使用されるコントローラーはアケコンと純正パッドが主流となっていますが、もともと格闘ゲームの海外大会では多様なコントローラーが認められてきた歴史があります。例えば、XBOX360版ソフトで行われたEVO2014の「ウルトラストリートファイターIV」部門では、初代プレイステーションの純正パッドを使用したルフィ選手が優勝。2018年に行われた「ドラゴンボールファイターズ」のワールドツアー日本予選では、もともと定められていた「正規ライセンス品以外のコントローラーは認めない」とするルールがコミュニティーからの反発を受けて削除されるといったケースもありました。

 国内でも、キーボードを使用する人や自作コントローラーを使用する人などがまれに見られます。そのため、もしヒットボックスと同様の機能を持つコントローラーや自作のコントローラーを禁止すれば、その影響は極めて大きいものになるでしょう。強烈な優位性を持つコントローラーであるがゆえに不公平感が生まれるのも仕方ない一方、一気に禁止まで持っていくには高いハードルが課せられているのも確かといえます。

 なお、ウメハラ選手は関係各所に確認の上、今週末に行われる海外大会「Combo Breaker 2019」にヒットボックスを使用して出場する見込み。格闘ゲーマーの間では既にヒットボックスへ乗り換えようとする動きが始まっていますが、ウメハラ選手の大会結果次第ではこの動きがより加速するかもしれません。

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