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» 2019年06月29日 12時00分 公開

サイゼリヤ1号店で20年モノのサイゼリヤワインを飲む

本八幡駅北口から徒歩5分。

[山下ラジ男,ねとらぼ]

 こんにちは、ライターの山下ラジ男です。 

 インターネットの皆さんなら、サイゼリヤはもちろんお好きですよね。

 今ではリーズナブルなイタリア料理のお店としてすっかりおなじみとなったサイゼリヤですが、もともとは1968年に当時大学生だった正垣泰彦さん(現会長)が始めた小さな洋食店からスタートしたという歴史を持ちます。そして、その記念すべきサイゼリヤ1号店は千葉県の本八幡にあるとのうわさ。これはサイゼリヤ好きとしては1度は行ってみたい、いや行くしかない!

 というわけで、「サイゼリヤ1号店」に早速行ってみることにしました!







 八百屋になってました。

 (終)




 いやいやいや、違います……! ちょっと待ってください!!

 確かにサイゼリヤ1号店はすでに営業終了してしまっているんですが、跡地を八百屋に改造されたというわけではなく……、


 このように「教育記念館」として、閉店当時のままの姿を今でも残しているんです。

 ちなみに看板に書いてある内容はこちら。

サイゼリヤ1号店

教育記念館保存目的

チェーンストア理論により経済民主主義を掲げ発展するサイゼリヤ発祥の第1号店を保存し、その歴史と社会貢献企業としての未来を紹介し訪れたすべての人々に感動を与え、社会貢献の価値とすばらしさの理解をより深めることを目的とする。

前述の目的にそって記念館の運営にあたり、営利目的の使用は認めない。

サイゼリヤ1号店 教育記念館保存会

 そして別の小さな張り紙には「見学希望の方は前日までに連絡を」との旨が。


 でも連絡先が「中小企業家同友会」? サイゼリヤ本社とかじゃないの? と、さらに謎が深まっていきます。

 ということで今回は、「なぜ1号店がこのような形で残っているの?」「中小企業家同友会って何?」といった疑問やサイゼリヤの歴史などについていろいろとお話を伺ってきました。



「この店は取り壊される予定だったんですよ」

 後日、あらためてサイゼリヤ1号店に向かうと、この前来たときには閉まっていたシャッターが開いており、店の入り口へと続く階段が姿を現していました。


本八幡駅北口を出て徒歩5分の「八幡一番街商店会」にある

階段の壁にはサイゼリヤの歴史を切り取った数々の写真が……

若き日の正垣会長

当時のままの店内

年季の入ったソファー

厨房の中も見学できます! すごい!


 店内で出迎えてくれたのは千葉県中小企業家同友会の皆さん(宇田川さん、松岡さん、槍田さんほか)。いろいろとお話を伺っていきます。




左から宇田川さん、槍田さん、筆者

――いきなりサイゼリヤとは関係ない質問になってしまうんですが、中小企業家同友会って一体どんな組織なんでしょうか? まずこの疑問を解決しないと本題に入れないと思いまして。

松岡さん:正確には「千葉県中小企業家同友会市川浦安支部」、通称「いちうら」と言いまして、日本全国にある中小企業の社長たちの集まりの1支部になります。


松岡さん

――なるほど。ではサイゼリヤとはどういった関係が?

松岡さん:サイゼリヤの創業者の正垣泰彦会長が、以前「いちうら」の支部長をやっていまして、そこでビジネスの原理原則論っていうのをいろいろな人に教えてくれていたんです。今日ここにいる人たちもそこで一緒に勉強してきたメンバーで。ちなみに正垣さんは現在「いちうら」の最高顧問になっています。


店内に飾ってある正垣会長の写真

――最高顧問!? ではここが閉店後も教育記念館として残っているのも正垣会長の意向、ということですか?

槍田さん:いや、それは宇田川さんのおかげかもしれませんね。


宇田川さん

――え? それはどういうことですか?

槍田さん:もともとこのお店は2000年の2月に閉店してその時にそのまま取り壊される予定だったんですよ。でも、そのときに「もったいないから残しておくべきだ」と声を上げたのが宇田川さんでね。だから、それがなかったら1号店が今もこうして残っているということはなかったと思います。

――友情を感じるというか、なかなかアツいお話ですね。

槍田さん:みんな正垣さんには大変お世話になってますからね。

 例えば私が同友会に入ったとき自分の会社の規模はまだ2店舗程度しかなかったんですけれども、正垣さんからいろいろと経営のイロハをすごく親身に、学校の先生みたいな感じで教えていただいたんです。そうやって他人の会社のことを自分のことのように考えてくれるのが正垣会長で、そういう人に出会えたのが素晴らしかったなと思うし、みんなもそれでついていってるんですよ。


槍田さんは現在50店舗を経営している


「日曜日のお昼ごろにはだいたい開いてます」

――なるほど。では1号店についての質問になるんですが。

宇田川さん:はい。

――いつもはシャッターが閉じていますけど、今日のように中に入れる日というのは「電話で問い合わせが来たら開けて、そのついでに一般にも開放する」ということなんでしょうか?

宇田川さん:いやー、実はだいたい毎週日曜日の午後1時くらいには鍵を開けてどなたでも中に入れるようにしているんですよ。それまでは気が向いたら開けるという感じだったんだけど、市役所から「開けてくれないか」っていう要望があったので、それからは同友会の中で誰か開けられる人がいればできる限り毎週開けるようにしています。


普段は1階の八百屋さんと完全に一体化している

――そうだったんですね! 実は電話をかけるのに結構勇気が必要だったので、その情報で救われた人もたくさんいると思います。

宇田川さん:「近所を通ったんだけど気になるからいつ行けばいいんですか?」っていう問い合わせも結構ありますから、そんなに身構えなくても大丈夫ですけどね。


店内の張り紙

――なるほど。店中に入って最初に気になったのがこの「サイゼリヤ入社おめでとう」という張り紙なんですけど、これは「教育記念館」という名前から察するに1号店が社員研修などにも使われているということですか?

松岡さん:いや、それは聞いたことないね。新入社員は毎年何百人といますからここには入りきれないでしょう。きっと、この張り紙は内定をもらった人が自主的にここに見に来ることを見越して、歓迎のために貼ってあるんだと思いますよ。教育記念館とは言うけど基本的には一般の見学の方のための資料館になってます。

――確かに興味深い資料がたくさんありますよね。このテーブルの下に展示してあるのは昔のサイゼリヤのメニューですか?

松岡さん:はい、開業してから2000年に閉店するまでのメニューがそろっていますよ。


右上から時計回りに新しいメニュー

――これとかかなり古そうなメニューですけど、いつのものですか?


松岡さん:それはサイゼリヤが洋食店だったころのメニューで、ここにあるなかで一番古いものですね。1967年創業なので約50年前のものになります。正垣会長のお父様が手書きで書かれたものなんですよ。


開店当時の店内を描いた絵

松岡さん:この絵もお父様が描いたものなんですよ。

――へー。でも今の店内とはだいぶ違うように見えますね。

松岡さん:これは火事になる前の絵ですからね。

――え、火事?

松岡さん:ええ。昔、この店が開店してまだ半年くらいのときの話なんですけれど、この店は夜中の4時くらいまで営業してたんですよね。


昼夜逆転生活みたいな時間に営業していたことが分かる

松岡さん:それで夜中まで空いてるもんだから、ここがヤクザのたまり場になっちゃったんですよ。それである日ヤクザ同士のけんかが始まって、石油ストーブの投げ合いになって、そのせいで火事になって、1回このお店は全焼したんですよ。

――大変なことじゃないですか!

松岡さん:正垣さんはそこでお店を完全にたたむつもりだったそうですけど、お母様から「ここはあなたの最高の場所だから、もう一度同じ場所で頑張りなさい」と、いうことを言われてもう一度続けることにした、っていうのがサイゼリヤ1号店のなりたちなんですよ。



「みそ汁は日本食のワインです」


初代メニューの中身

――そうだったんですね。あらためて当時のメニューを見ると今のサイゼリヤにはないメニューがたくさんありますね。

松岡さん:うん。まだイタリアンレストランになる前の洋食屋時代のメニューだからね。「おしんこ」とかもあるでしょ。


イタリアン創業期のメニュー

松岡さん:それと、こっちはイタリアンレストランとしてスタートしたあとのメニューだけど「みそ汁は日本食のワインです」って書いてあるでしょ。しばらくはそういうのも出してたんだ。




ミラノ風ドリアはこのころからのメニューだ

――サイゼのみそ汁、飲んでみたかったなぁ。でもこの段階からどのメニューもかなり安いですね。ミートソース180円とかハンバーグ200円とか。これって当時としては普通の値段なんでしょうか?

松岡さん:いやいや、最初のころはもっと高かったんですよ。でも立地の悪さもあって全然お客さんが来なくて、それでまずは値段を5割引きにして、それでも来なかったから最終的に7割引きにしたんですよね。それがそのミートソース180円とかの価格です。

――7割引き? そんなドラッグストアの冷凍食品じゃないんだから……。

松岡さん:ははは(笑)。ほかのメニューもいろいろ見てごらん。


80年代後半、チェーン展開を始めたころのメニュー

お酒の種類が豊富

肉料理がおいしそう、みそ汁もまだある

90年代のメニュー、ドリンクバー導入前

人気商品ミラノ風ドリア

昔はミラノ風グラタンもあった

エスカルゴが高い

――あの、気付いたんですけどミラノ風ドリアが480円ですね。

松岡さん:そうですよ。でも1番人気の商品だから99年にさらに値下げしたんです。商品の中身も初期から1000回以上も改良を重ねてるらしいですよ。

――さすが、ミラノ風ドリア。


「2000年への提案」と書かれた99年のメニュー



ミラノ風ドリア貴重な値下げの瞬間だ

――ところで、店内にはワインの瓶がたくさん並んでますけど、これってもしかしてここが閉まってからずっと置いてあるものなんじゃないですか?


店内はワインだらけ

右にあるのは昔使われていたデカンタ。この1個しか残っていないらしい

松岡さん:あーそうですねー。蓋が開いてるのもあるし閉店前のやつがそのままになってるんでしょうね。

――いい感じに熟成されてたりなんてしてないですよね。

松岡さん:うん、たぶんほとんどお酢みたいなことになってると思いますよ。直射日光が当たるし、夏場は50度くらいになるしで保存状態がかなり悪いのでね。

宇田川さん:いや、飲めるぜ。


宇田川さん

――えっ?

宇田川さん:俺んちに10年くらい前のサイゼリヤのワインがあってさ、それを最近飲んだんだけど、うまいんだよ。

全員:へー。

宇田川さん:しかも高いやつじゃなくて安いやつだったから、かなりおっかなびっくり飲んだんだけどうまくてさ、驚いたね。

松岡さん:たぶんめったにないことですよ、管理が良かったんでしょう。

宇田川さん:でもねー、うまくなってるかもしれないよ。試してみる?

――はい! ぜひとも飲んでみたいです。

宇田川さん:栓抜きどこにある? ないかもなー。

――じゃあ買ってきます!




ワイン試飲会、開催

 というわけで、突如サイゼリヤ20年ものワイン試飲会が始まりました。

 ※サイゼリヤ1号店で通常行われているサービスではありません。


棚の上のワインを取りに行く

 最初に飲んでみたのがこちら。


キャンティワイン、通称「ラファエロ」。98年製と書いてあったので21年ものということになります

現在は1080円で売られている

ひとまず乾杯!

恐る恐る飲んでみると……




――これは確かに、うまい!

 【みんなの感想】

  • すごいいい色だし、いい香り
  • これはうまい
  • なにこれ、いいよこれ
  • 安いワインがこんなすごいことになっちゃうんだね


 21年ものの「キャンティ(ラファエロ)」は保存状態が奇跡的に良かったのかかなり高級な香りと味わいに変化していました。


 次に開けてみたのがこちら。


95年製の「キャンティ ルフィナ リゼルバ」

現在は2160円で売られている


 サイゼリヤの中ではやや高級な部類に入るこちらのワイン。果たしてどうなっているのか……?



あまりワインを飲まない筆者でも、「ああ……、いい香りだ」と分かる

 【みんなの感想】

  • においがすごいですね、甘いにおいが
  • 味も甘いというか、まろやかというか、もともとはこんなに甘みはないですよ
  • 軽い飲み口になっちゃっててちょっと不満かもなぁ
  • いやいや、これはこれでいい。うまいよ
  • ラファエロは酸味、ルフィナは甘みが強く出てきてる。両方とも抜群のおいしさだよ
  • 普通に寝かせるとお酢になっちゃうものなんですけどね、奇跡ですよ

おいしかった、見学に来た人も交えて飲みました


 2本目も見事な熟成具合。ひょっとして1号店内はワインにとっていい環境なんでしょうか?

 奇跡2連発に気をよくしたわれわれは3本目も開けてみることに。


みんな大好き「ハウスワイン 赤 マグナム」98年製だ

1.5リットルで1080円。安すぎる

この色は、はたして……?
  • あーこれは、澱がすごいね
  • 高いワインとか年代物のワインは大体下の方にたまってるものだからね
  • 開けないほうがいいよ(笑)
  • いや、開けてみるか。こんな人数いないと味見しようって気にならないもんな

これが、ワイン……?
  • あんまり匂いしないねえ
  • もともと赤? これが?
  • 飲んでみますか? やめた方がいいと思いますけど
  • 味がどんな風に変化してるか見てみましょうよ

 不穏な空気が漂ってきましたが、せっかくなので飲んでみたところ……。


 こうなりました。



 【みんなの感想】

  • なんて言ったらいいんだろう。チェリー酒?
  • ブランデーみたいな感じだね
  • もうワインじゃない。飲めるけど
  • 戻そうか、これは(笑)

 結論としては、やっぱり「ラファエロ」が1番おいしいということに。みんな今のうちにラファエロを買って20年後に飲みましょう。



インタビュー再開


――おいしいワインをありがとうございました。さて、そろそろインタビューに戻ろうかと思うんですが、サイゼリヤのワインってなんでこんなに安くておいしいんですかね?

宇田川さん:そりゃ正垣会長がイタリアに行かれてブドウ畑を全部契約してるんですから。例えばフィレンツェの有名なシャトー(お城・ワイン農園)の所有者と直接話して、畑を見ながら、ワインを飲んで「年間何万本もらうよ」っていう契約してくるから安くておいしいんだよ。イタリアから輸入してくるワインの約7パーセントはサイゼリヤのワインだしね。


イタリアからの表彰状

松岡さん:あと、そういえばさ「ルフィナ」のラベルの絵は宇田川さんが描いたんだよね。

――え、そうなんですか?


「キャンティ ルフィナ リゼルバ」のラベル

宇田川さん:うん、まあね(照)。この絵は、ワインが取れるところの畑と農家の小屋を描いたんだ。小屋っていうのはお客さんが来てご飯を食べたりする場所ね。シャトー(お城)は写ってないところにあるんだよ。

――ラベルと言えば「ラファエロ」のラベルはサイゼリヤの店内にある壁画ですよね?


「ラファエロ」のラベル

松岡さん:ああ、あれはたしか長岡さんが決めたんだよ。

――長岡さん?

松岡さん:当時は商品部で商品開発をやっていて、今は取締役をなさってる方です。


店内にある長岡さんのパネル

松岡さん:ラベルに使うための絵を何枚か長岡さんが提案して、そこから正垣会長が決めたって話ですね。あの絵はラファエロが描いた「システィーナの聖母」っていって本当はもっと大きい絵なんですよ。


この天使は世界で最も有名な天使とも呼ばれている(パブリックドメイン)

――いつも見てるサイゼリヤの壁画にそんな秘密があったなんて驚きです。今日はいろいろと貴重なお話とおいしいワイン、ありがとうございました。


宇田川さん:え、もういいの? じゃあ僕らは駅前のサイゼリヤでこの続きやるから。キミはどう?

――いいですね! ……でもこの後記事書かないといけなくて。今でも皆さんサイゼリヤに行かれるんですね。

松岡さん:週に5回くらいは食べるからな(笑)

――(笑)。

宇田川さん:じゃあ面白く書いてよね! われわれはプロシュートでも食べに行きますか!



 1号店を閉めた後はいつも駅前のサイゼリヤでワインを飲むという同友会の皆さん。僕も皆さんのように年をとっても友人たちとサイゼリヤで飲みたいものです。皆さん本当にありがとうございました!

まとめ

 というわけで今回は「サイゼリヤ1号店教育記念館」の中を見ることができました。

 この記事の中では紹介しきれなかった資料もまだまだたくさんあるので、今度の休日にでも本八幡まで足を伸ばしてみてはいかがですか? 見学後に駅前のサイゼリヤでワインを飲むのも“オツ”ですよ。


ちなみに駅前のサイゼリヤ(本八幡北口パティオ店)にも、当時の様子を写した資料が展示されています

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