「出版社以外」からの収入のほうが大きくなった──うめ小沢高広さんに聞く「いま漫画家デビューを狙うならこうします」(3/4 ページ)

» 2019年06月07日 09時00分 公開
[堀田純司ねとらぼ]

――小沢さん、では組む相手として「意識高い系のドヤ編集者」と、伝統的精神論の「魂で描け型編集者」では、どちらが望ましいですか。

小沢 それはアレですよね。絶対、どちらかを選ばないといけないという究極の選択としたら、ですよね。

――はい。

小沢 それなら僕は、意識高い系と組みます。まだしも言葉が通じるから。

 意識高い系の人の意識を、「そうはいってもさ。泥水すすろうぜ」といって、低くすることはまだできると思うんです。でも「魂で描け」な人に「しなくていい努力はやめて、作戦練ろうぜ」といって、魂を解きほぐしてもらうのは、すごく大変でしょう。

 なので、僕ならば意識高い人のほうが楽だと思いました。意識高い人も、直接会うと、そんなに高くないですし。「実はさ」って話もいっぱいあるし。仕事をするのだったら、そちらの人のほうが、費用対効果が高いかなと思います。

――もし「魂で描け派」の人の長所を挙げるとすれば、どういうところでしょう。

小沢 魂派は、信頼関係をつくるのに、すごくコストがかかる人たちだと思うんです。だから、ゼロからその人に取り入って、認めてもらうところから始めるのは大変ですけど、最初から「おまえの魂を信じているんだ」と信頼してくれているのであれば、人一倍のマンパワーを発揮してくれるかもしれない。

photo 新連載『東京トイボクシーズ』は、入学希望者数を下げ止めるためにeスポーツ科を新設した学校が舞台(コミックバンチwebより)

もし今の時代にデビューを目指すなら?

――小沢さんが、SNSやnoteのようなプラットフォームがある今の時代にデビューを目指すとしたら、どのような戦略を採るでしょうか。後に続く人の参考として、ぜひ教えてください。

小沢 本を1冊、まず出すことだけを狙うのであれば、あまり手をかけない、つまり製作コストの低いマンガを、Twitterにどんどんアップする。そしてバズるまでネタを変えていって、バズったらそれをシリーズ化する。これを繰り返してるうちにたぶん、編集部から声が掛かる。そのパターンが早いとは思います。出版社の旧来の新人賞は狙いません。

――狙いませんか。

小沢 もう出版社の編集に、新人を教育して育てていくようなコストも時間もなくなっていますから。

 それに賞に出して受賞して、担当がついて、次にネームコンペに出すみたいなプロセスは、時間がかかりすぎて、コスパが悪い。

 しかもそこでどういう人が担当になってくれるのか、こちらは選ぶことができないでしょう。編集部内の力関係も分からないし。ほとんどガチャじゃないですか。フィギュアが出ると思って回してるのに、こんにゃくが出るかもしれないような不透明で一方的なガチャに、人生を賭けたくないですよ。

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