葬儀業界のプロに聞く「最期に後悔のない別れ方」ができる家族の共通点(1/6 ページ)

生きているうちに、考えておくべきこと。

» 2019年06月16日 12時00分 公開
[中山順司ねとらぼ]

 みなさん、死ぬ準備はできていますか?

 たぶんNOだと思います。筆者もそうです。まあ、ふつうに生きていて死を意識する機会ってそうそうないですからね。しかし、いつかは向き合わなくてはいけない現実であるのもまた事実です。

 かつて葬儀業界に身を置き、数多の遺族の方々からお話を伺って記事化する、というお仕事を続けていたライターのIさんに取材しました。人の数だけ人生があり、悔いや悲しみの形も人それぞれ。一度きりの人生を悔いなく送りたい人すべてに読んでほしいです。



中山順司(なかやま・じゅんじ)

ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ブログ「サイクルガジェット」運営。Faber Companyの中の人。



やらなかった後悔はいつまでも残る

――これまでたくさんの遺族を見届けてきた中で、印象に残っていることはありますか?

 「やった後悔よりも、やらなかった後悔は大きい」っていうじゃないですか。あれは本当で、故人に対してやり残した、やってあげられなかったって後悔はずっと残るものです。

 行きたがっていた場所に連れて行ってあげなかった、食べたがっていた好物を食べさせてあげられなかった、ペットに会いたがっていたのにそうしてあげなかった……とか。

――親孝行、したいときには親はなし……ですね。遺族の「してあげなかった後悔」でもっとも多いのは何ですか?

 「感謝の言葉を伝えなかった」です。生きているうちに伝えられなかった、ありがとうって言葉を掛けないまま死なせてしまった、という後悔は非常に多いです。

――伝えない理由ってのは、照れとか恥ずかしさのせいなんでしょうか。

 日本人特有の奥ゆかしさ、ですかね。欧米人のように親愛の情を大っぴらに表さないのがふつうじゃないですか。以心伝心というか、言わなくても愛情は伝わっているはずって解釈して、言葉にしない人がものすごく多い。だから、死後に後悔の念を昇華させるまでに時間を要しますね。

――具体的に、どう昇華させるんでしょう?

 例えば、いろんな品々を棺(ひつぎ)に入れる、とか。故人の好きだった食べ物、大切にしていた服、感謝の言葉をつづった手紙、思い出の写真を切り貼りしたコラージュ、飾り絵などです。

――手紙というのは……歓送迎会の色紙のようにみんなでメッセージを書くとか?

 いえ、一対一のプライベートな手紙ですので封をして誰にも見せません。人に見せるような性格のものではないんです。

――そうやって個々人で故人と向き合っているんですね。悲しさの中に、はかない美しさというか、ピュアな愛情を感じます。

 まあ、現実的な話をすると、「恨みつらみをぶちまけられなかった」ってタイプの悔いもありますよ。例えばきょうだいでえこひいきを受けて育った被害者の方の子どもは、死ぬ前にひとこと言ってやりたかったって恨んでいることもありまして。

――あー、そういうパターンもあるのか……きれい事だけじゃないんですね。そういう場合はどうするんです?

 私の経験したケースですと、荼毘に付すとき、布団に寝かされた状態の故人と恨みのあるお子さんが枕を並べて、一晩一緒に過ごした……というのがありました。で、お子さんが遺体に向かって「なんで父さんはあのとき私にこんなひどいことを言ったんだ」「すごく傷ついたし、腹が立った」って言葉を浴びせ続けるという……。

――それで心は癒されたんでしょうか。

 完全とはいかないまでも、ある程度はご納得いただけましたね。必ずしも涙涙の別れ……ばかりではないということです。



       1|2|3|4|5|6 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた