2019年夏ドラマのダークホース「ルパンの娘」にフジテレビの本気を見た ぶっ飛びドラマにマッチする深キョンがすごすぎる(1/2 ページ)
開始5分で嫌な予感が消えた。
7月11日に放送された「ルパンの娘」(フジテレビ系)の第1話。初回放送直前のレビューで「大コケか大化けのどちらかになる」と書いたものの、筆者は内心「大コケに傾くのでは?」と踏んでいた。実は。
全力で謝りたい。開始5分で「意外と面白いかもしれない」と思い始め、その10分後には確信していた。ようやく、フジテレビが本気になった! こういうぶっ飛んだドラマにフルパワーで取り組む姿勢に感動を覚える。コメディーでありつつ細かいところに注意を払い、セットには明らかに手間とお金を掛けている。2019年夏ドラマ、他局の隙を突いて意外な伏兵が好スタートを切った。
「“Lの一族”を捕まえれば一課入りは確実」
先祖代々家族全員が盗みの専門家である“Lの一族”の娘・三雲華(深田恭子)は、恋人の桜庭和馬(瀬戸康史)に家族を紹介され、ガチガチに緊張している。一方、和馬の両親は華の勤め先にガッカリした様子。桜庭家は、なんと代々警察官の一族だった。華は和馬を諦めようと考えた。
和馬は父・典和(信太昌之)に捜査一課の刑事になれたら華との交際を認めても良いと言われる。その後、三課の先輩刑事・巻栄一(加藤諒)に相談すると「“Lの一族”を捕まえれば一課入りは確実」とアドバイスされた。
別れを言い出せずにいた華は、和馬に誘われ宝石店を訪れる。そこには、偶然にも華の母・悦子(小沢真珠)がいて、父の尊(渡部篤郎)を交えた4人で食事をすることに。帰宅後、華は尊から「和馬に泥棒の素質はない」と交際を反対されてしまう。
翌日、華と和馬が行った宝石店に強盗が入る事件が起こる。事件を担当する和馬は、ヤクザと共謀する宝石店社長に誘拐された。華は両親と共に和馬の元へ向かい、宝石の窃盗に成功。同時に社長とヤクザを成敗した。
なぜ、この手のドラマに深キョンは合うのか?
なぜ、この手のドラマに深田恭子はマッチするのだろう? 「ルパンの娘」のストーリーは現実離れしている。そして、深田本人も浮世離れした存在だ。他の女優だと現実との架け橋はつながったままだが、深田なら遠慮なしにぶっ飛べる。演技力うんぬんの話ではなく、存在そのものが唯一無二。思えば、映画「下妻物語」や「富豪刑事」(テレビ朝日系)も彼女じゃなきゃダメだった気がする。
ちなみに、「ルパンの娘」で監督を務める武内英樹は、98年放送の深田恭子主演ドラマ「神様、もう少しだけ」(フジテレビ系)でもメガホンを握った重鎮だ。かつてはHIVをテーマに深田でヒットを飛ばし、20年後には深田にこんなハチャメチャをさせている。なんたる振り幅! 深キョンの使い方を熟知した人によるドラマなのだ。
他のキャストもいい。実年齢では深田のたった6歳上だが“奇跡の美魔女”という設定で母・悦子役に起用された小沢真珠。深田と同じく、小沢も「キャラに合うか?」を基準に選ばれたコメディエンヌである。2004年放送の昼ドラ「牡丹と薔薇」(フジテレビ系)では「この泥棒猫!」と言っていた小沢が、15年後には泥棒を演じているというのもリンクしていて最高だ。
刑事にあるまじきヤベえ出会い
華と和馬の出会いのシーンは、一体何だったのだろう? 子どもたちに読み聞かせをする図書館司書の後を追い、いきなりキスする男。「ごめんなさい!」(和馬)、「いえ……」(華)というやり取りから、矢も盾もたまらず抱き合う2人。刑事にあるまじき流れである。瀬戸康史の顔面でなければ犯罪として立件されていたはずだ。どこのディズニー映画なのか!? と問いたい。
この日のことを思い出し、うっとり打ち明ける華の話を聞いているのは円城寺輝(大貫勇輔)。華の幼馴染で、いきなりミュージカル調に歌って踊る変人だが、2人の出会いのくだりを知った途端、「ヤベえ話だな」と一言。ヤベえ奴にヤベえ話とあきれられ、よほど突き抜けているのだと実感させてくれるナイスな場面だった。
華がヒーローで和馬がヒロイン
和馬を助けるため、両親の窃盗に加担する華。さっきまではおっとりしたキャラだったのに、泥棒スーツを着るや、色気をだだ漏れさせるのは秀逸な二面性だ。サーファーだけあって、さすがに深田の体は引き締まってる。美ボディすぎてびびった!
ぶっ飛んだコメディーでも、伏線はしっかり張られている。高級すし店で龍崎組組長と食事していた宝石店社長はヤクザの身内だった。「昨日、おすし屋さんにいらっしゃいましたよね?」と口を滑らせたり、ピュアでどこか抜けている和馬。だから、彼はあっさり拘束される。その後ろに降り立った華は、正体を知られないよう和馬に手刀を振り下ろし、和馬は白目をむく。この白目、どうやら毎週恒例になりそうだ。次回予告でも和馬はバッチリ白目をむいている。その間に見事なアクションで敵を撃退する華。なるほど、「和馬が白目の間に華が事件を解決する」という“コナン方式”をとるわけだな? そういえば、和馬は華の印象としてこんなことを言っていた。
「か弱いこの女性をこの手で守りたい。どこまでも純粋で汚れを知らない華のことを」
か弱い、純粋、汚れを知らない、この手で守りたい……って、全部君のことだよ! 「ルパンの娘」はつまり、和馬がヒロインで華がヒーローという役割分担である。
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