「いつか窪田正孝を、松田翔太を超したい」 山本舞香インタビュー、映画「東京喰種」で感じた“悔しさ”とは(1/2 ページ)
「初めて共演者に対して“悔しい”と思った」と話す山本さんに聞きました。
女優、山本舞香は出演作品によって大きく印象が違わない――2015年公開の映画「暗殺教室」ヒロインの茅野カエデ役や、テレビドラマ「チア☆ダン」、現在は「スカム」など多くの作品に出演する山本さんの女優としての印象を一言で言うとそんな風に表現できるかもしれない。
そのスタイルはバラエティー番組などでも変わらず、周りに左右されず芯の通った自然体を貫いているようにも見える山本さん。役柄によってはそのスタンスがよくハマるが、こと映画「東京喰種 トーキョーグール【S】」について言えば、悪魔的天使顔と名付けたいクールな容姿や、突き放すような冷たい口調など、その雰囲気は霧嶋董香(トーカ)のそれとよく重なる。
7月19日公開の映画「東京喰種 トーキョーグール【S】」で主に描かれるのは、作中屈指の変態喰種、月山習の存在。主要キャストのうち、今作から出演するのは、月山を演じる松田翔太さんと、前作からキャストの変更によりトーカ役に抜てきされた山本さん。劇中ではワイヤーアクションを使った演技もみせる山本さんに話を聞いた。
―― よろしくお願いします。早速ですが、今作の原作である石田スイさんの『東京喰種』はもともとご存じでしたか?
山本 作品の存在は知ってはいましたけど、見てはいませんでした。
―― そうなんですね。そんな作品の出演オファーを受けようと思ったのは何がポイントだったんですか?
山本 この作品のお話をいただいたとき、アクションもあるということで、アクション好きだからやってみたいなーと。それで前作を見たんですけど「まぁまぁグロいな」って(笑)。でも、自分がその場にいて完成したものはちょっと見てみたいとは思いました。
―― 自分なら作品に何を付け加えられると感じたんですか?
山本 いや、そういうのは全然考えていなくて、ただ何となくの好奇心。アニメの「東京喰種」は見ていたので、感情を炎で表したりするアニメなら成立するような演出は映画だとどうやるんだろうとか興味もありました。
―― 撮影は2018年夏に行ったそうですね。これは山本さんが出演されていたテレビドラマ「チア☆ダン」の後ですか。
山本 そう、「チア☆ダン」のすぐ後だったかな。撮影は2カ月くらい。作中ではトーカの人間の親友、小坂依子を森七菜(もりなな)さんが演じているんですけど、彼女すごく純粋で、(広瀬)すずのデビューのときにそっくりなんです。本人に「メチャクチャすずのデビューのときそっくり!」と連絡したもん。そしたら「知ってるよ。共演した」って返ってきて(笑)。
―― 岩井俊二監督の映画「Last Letter」(2020年公開)で共演されていますよね。ところで、前作からの続編で、しかも自分が演じるのは前作で違う女優さんが演じていた役柄。そのことについて何か思うことはありましたか?
山本 “超えてみせよう”と。
―― はっきり言いますね(笑)。その手応えは得られましたか?
山本 結果的に、超えた、とは思えなかったです。思えなかったというか、最初私、全然自信がなくて、監督やプロデューサー、窪田さんや(松田)翔太さんにも「私できません! 今全然プランがないし」と言っていましたし。でも窪田さんは「舞香なりのトーカをやってほしい」って言ってくださって、徐々に。
―― 山本さんが考える今作の見どころは?
山本 最後20分のアクションシーンと、人間と喰種のドラマ、例えばニシキ(白石隼也)と貴未(木竜麻生)のストーリーとか、それぞれの存在の葛藤をみていただきたいです。
―― 山本さんは過去に空手での優勝経験などもあり、運動神経はかなりよいですね。「チア☆ダン」でもヒップホップのダンスうまかったですし。もしかして空手の組手の方での優勝だったんですか?
山本 いや、型ですね。「チア☆ダン」のときもそれまでヒップホップダンスはやったことなかったんですけどね。ワイヤーアクション自体は映画「暗殺教室」でもやりましたけど、つるしてバク転とかはなかったので、今作のアクションは基本的に楽しかったです。
―― 原作漫画には熱意あるファンが多くついています。今作のスタッフもそうじゃないかと思いますが、現場の雰囲気はどうでしたか?
山本 今作は川崎拓也さんと平牧和彦さん両監督の体制で、川崎監督が演出、平牧監督が映像の方を主にやられていましたが、2人ともこだわりは強かったですね。川崎監督には、お芝居のことで結構意見をぶつけたりもしました。
―― ぶつかるとは例えば?
山本 ここは力を入れたいというシーン、例えば教会でトーカが貴未に「赫子がきれい」と言われるシーンとかですね。
私、基本的に思っていることは口に出して言うし、力が入れば入るほど言うたちです。自分でも分からないけど、自分の中にトーカがいるというか、トーカだったらこうするという気持ちがどんどん膨らんで、だからぶつかったし、ぶつかれる監督でした。でもそれは、ものを言える監督だったということで、言葉のイメージほどにはとげとげしいものではないですけど。
月山もオリジナルというか翔太さんの色がすごく出ていたんです。窪田さんは前作から引き続いての出演だから、カネキを忠実に再現しようとしているのが周りにもすごく伝わってきて、すごいなと思いましたね。
―― 窪田さんの印象をお聞きします。今作と順番は前後しますが、窪田さん主演のテレビドラマ「ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜」にも山本さんがゲスト出演されてテレビドラマでも初共演されましたね。
山本 窪田さんは、ザ・座長、という感じです。顔は幼いのに、大人。かっこいいし現場での言い方だったり、周りへの気遣いとかとても優しい方。カメラが回ったときの顔つきは全然違うし。それは翔太さんもそうですけど、別人なんですよ、窪田さんって。
―― 先ほどから松田さんを翔太さんと呼ぶのに新鮮な感覚もありますが、松田さんについてはいかがですか?
山本 外国人みたい、というか、いろいろな才能がある人。お芝居もそうですけど、よく海外に行っていて、窪田さんと車の話をしていたり。何か“アメリカン”な人ですね。そんな翔太さんが演じた月山(習)は、“実写ならではの月山”だと思いました。
―― 実写化の常ですが、原作やアニメと比較して語られやすいですよね。例えば、月山のマスクだったり、カネキへの妄執から来る変態的な発言のトーンだったりを原作を思い出しながら作品を見ましたが、演者としてはその辺りはどういう風に消化しているんでしょう。
山本 映像だとここまで表現しないと伝わらない、実写だとこう伝えるんだ、という翔太さんなりの月山というか、あれだけ経験してるからこその月山だなって思いましたよ。だから私は悔しくて。
―― 悔しい? 同じ今作からの出演組として、自分なりの月山を出した松田さんと、トーカを演じた山本さんの間に何か決定的な差があったから?
山本 そうですね。経験値がまず違うのが大きいだろうなとは思うけど、とても印象に残る月山だなって。でも私が演じたトーカは、周りからは好評ですけど、自分的には満足してないんです。満足しちゃったら終わりなんですけどね。
―― この作品は、次作、次々作と続いていくかもしれません。山本さんにとっても長い付き合いになるかもしれませんが、もし次作があればこんなことがしたいなどの思いはありますか?
山本 私、この作品で初めて共演者に対して“悔しい”と思ったんです。今まで共演者に対してそんなこと思ったこともなかったのに。窪田さんとも翔太さんとも、すごく仲良しなのは間違いないんです。でも、本編をみたときに、悔しくて。別日に本編をみた翔太さんから電話が掛かってきて「トーカよかったよ」って言ってくださったんですけど、すごく悔しくて(笑)。
―― でもそれは多分お世辞ではないですよね。
山本 翔太さんはお世辞をいうような人ではないです。悔しいけど翔太さんも窪田さんも大好きなのは変わらないです。
―― 2018年は変化の年だったかと思いますが、山本舞香の2019年はどんな年になっていますか?
山本 私、20歳になるまで、「これはやっちゃダメ」とか事務所にある意味守られていたわけですけど、それ故に表に見せる顔が自分自身ではないように感じていて。お芝居もどこか抑制されていた気がして、「私はこんなもんじゃない!」という思いがあったんです。
でも成人して全てが自己責任になったことで責任感も生まれたし、解放されたからこそ自分でちゃんとしなきゃとか思いながらお芝居も自由にやれている。一方で、今、自分がもし他のことをやりたいとふと思って、それが実現するとなったら私は多分女優のお仕事を辞めるだろうと思うんです(笑)。
―― 執着がないというか、自分の人生を自分で選択していきますね。
山本 でも、共演者や、これからも続くであろう作品を裏切るつもりはないし、そこはまっとうしていきたい。続けるにあたっても、私はもっともっと表に出て、もっともっとヒットするよう実力を付けていきたいです。
成長していきたいんです。いつか窪田正孝を、松田翔太を超したいです!
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