ネットがリアルの一部に “招待制”で市民権を得たSNSの元祖「mixi」の足跡:連載「わが青春のインターネット」(2/2 ページ)
衰退のきっかけとなった? 足あとと招待制の廃止
リアルタイムで訪問履歴が分かるシステムから、1週間に訪れた人をまとめて翌週に表示するサービス「先週の訪問者」へと機能が変更されたのです。一見、これまで足かせだったかのような「足あと」機能がバージョン変更されただけに見えましたが、これには多くのユーザーが反発。「mixi足あと機能改悪反対!」といったコミュニティが生まれたほか、システム改変に反対する署名活動まで行われました。
というのも、コミュニティでつながった人が自分のページや日記に来訪→コメント→ユーザー同士のやりとりが発生といった方式で、従来のSNSよりも密なやりとりができるというのがmixiの良さの1つだったのに、リアルタイムでの「足あと」が分からなくなったことで、日記を書くモチベーションが低下し、結果的にユーザー同士のコミュニケーションが少なくなるといった影響が出てしまったのです。その後、mixiは2014年9月に「足あと」を復活させたものの、一度離れたユーザーはなかなか戻りませんでした。
また2010年3月からは、従来の“完全招待制”を撤廃し、招待状なしでも新規登録が可能になったことから、「限られたユーザーのみがやりとりできるコミュニケーションの場」から「間口が開かれたSNS」へと変化したこともユーザー離れの一因に。“特別感”を失ったmixiはFacebookやTwitterといったSNSに次第に差をつけられる結果となりました。
mixiきっかけで結婚
今回の取材に際し複数のmixiユーザーにお話を聞いたところ、IDが3000番台だという古参男性ユーザーは、体調に関するコミュニティにて奥様と知り合い、結婚に至ったというエピソードを語ってくれました。
この男性ユーザーによるmixiコミュニティ内での書き込みの印象について当時配偶者は、「いけ好かない」と感じていたそうですが、初めてオフ会で顔を合わせたところ意気投合。その後は関東と関西の遠距離状態だったそうですが、当時流行していた「Skype」を利用して親しくなっていったそうです。
なお結婚の報告については、「2人で決めた時刻にお互いの日記で済ませた」と言い、家族にはmixiがなんなのかを説明するのが面倒だったため、「サークルのようなもので知り合った」と紹介したことを振り返りました。その後は子どもにも恵まれて、夫婦で健康をほぼ取り戻すことができたというこのユーザー。現在では2人ともmixiから離れているものの「お世話になったので、まぁいいか」と、「mixiプレミアム」への課金機能を継続しているとも言い、「mixi様さまです!」と語りました。
このほかにも取材に協力してくれた13人中なんと5人が結婚にこぎつけており、共通の趣味を持つ人や同じ地域で暮らす人など、mixiをきっかけにしたリアルな出会いが幸せを運んできたようです。
足あと機能について
また足あと機能の廃止復活については、「(足あとの廃止で)どんな人が興味持ってくれたか分からなくなった。実際熱が結構逃げたと思う」「どのくらいの人が自分のページに来てるかは楽しみの一つだったので復活時は喜んでいた記憶がある」「正直いらない機能だったから復活しても……」「mixiらしさがなくなったと思ったが、もともとあまり気にしていなかった」「ハマっていた当時は日記書く→足跡→レスを気にするのループだったので、味気ないものになったなとは思った。ただ復活するころにはどうでもよくなっていた……」とさまざまな反応。
「mixiを現在も使っているか」という質問については「Twitterへ移行した。周りの友達もTwitterメインになったので、写真の保管庫としてmixiのアカウントは残っている感じ」と、周囲が別のSNSをメインに使い始めたことをきっかけにmixi離れをしたとの回答が目立つ一方、毎日手作りのお弁当の画像や献立が投稿される「手作りのお弁当」や今夜の飲み友達を探す「酒好き」といったコミュニティは現在も人気が高く、ネット上のつながりを求める人や、リアルな出会いのきっかけとしてネットを利用する人にとって、今もmixiは欠かせないものとなっているようです。
現在のmixiはどんな雰囲気?
一方黎明期から現在に至るまでmixiを利用しているというユーザーからは、「初期のmixiは和気あいあいとしていたが、現在はmixiがないと生活ができないという感じのヘビーユーザーの利用が目立つように感じる」「LINE IDをコミュニティーに書き込むなど、出会い系的な使い方をしてトラブルになっているユーザーを見かけることが増えてきた」といった声も。また「SNSというものは基本的に公の場で誰もが平等であるべきだが、コミュニティ等ではメンバーを追放したり、コメント削除する権限を持つ『管理人』や『副管理人』が“神”になってしまう。そうした不平等さもmixi離れの一端になったのではないか」といった意見も聞かれました。
mixiのお作法は今のネットに生きているか
本名や勤務先などリアルな情報を書き込んでいる人の多かったmixiやFacebookに対して、じわじわと市場を拡大してきたのが匿名性の高いやりとりで人気を博すTwitter。mixi全盛期のあのころ学んだネットマナーは現代でも通用するのでしょうか。
例えばTwitterでたびたび見かける「FF外から失礼します」は、mixi文化を継承している可能性がある最も有名なフレーズとして2019年2月に“「FF外から失礼します」はmixi由来の慣習? 「日本のTwitter文化、mixi起源説」が話題に”との記事が話題を呼びました。これは、あるTwitterユーザーが唱えた俗説で、「フォロバはリプください」(フォローバックの際にはひとこと言ってください)や、「お別れはブロ解で」(フォローを外す際はブロック機能を使い、互いにフォローしていない状態にしてほしい)などの文化は、mixiでのマイミク文化の影響を受けているのではと唱えて多くの支持を得ました。
また「バトン」も現在では「お題」に姿を変えたイメージがあるものの、mixi全盛期のような強制力は下がっており、やりたい人がやるという形になるなどいずれも形を変えて継承されているようです。
mixiでのつながりでできたつながりは今でも
そんなmixiで生まれたたくさんのつながり。今でもその交流が続いているというエピソードもいくつか聞かれました。
mixi創成期に、サウンドクリエイター集団「I've」とバンドセッションするという珍しいイベントに参加したというあるユーザーは、mixiのおかげで詩月カヲリさんと対バンができたという素晴らしい経験を語り、その対バンの派生として誕生した「初音ミクバンオフ」が2019年現在も続いていると明かしました。こうした交流については、多くの有名クリエイターや著名人がmixiを利用していたからこそ生まれたと話し、「mixiがなかったら成り立たなかったと思います」と振り返りました。
多くの人の人生と日本のネット社会を変えたSNS「mixi」。あなたにはどんな思い出がありますか。久々にログインしてみると、新たな発見があるかもしれません。
連載「わが青春のインターネット」
この記事は、ねとらぼとYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。平成時代とともにに生まれ、育ってきたインターネット。これまで約30年、さまざまなWebサービスや出来事、有名人が生まれては消えていきました。かつて一世を風靡した「あのサービス」を振り返り、同時に今のネットの問題点を考えることでWebの栄枯盛衰や怖さを伝えつつ、失われることのないネットの楽しさの本質に迫っていきます。そして、令和時代のインターネットの将来について考えていきます。
(Kikka)
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自分の日記が閲覧注意すぎる。
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