「セミオトコ」まさかの“セミ役”でコメディ俳優としての才能を発揮する山田涼介 「消えてしまいたい」限界女子に笑顔が刺さる(1/2 ページ)
危うく死にかけた由香と、危うく死にかけたセミ。
「何やってんだろう、私。何なんだろう。消えたい……」
これは、さえないどころかいまにも消えてしまいたい限界女子のためのドラマだ。
7月26日(金)よる11時15分から始まった金曜ナイトドラマ「セミオトコ」(テレビ朝日系)。アイドルグループ「Hey! Say! JUMP」の山田涼介が主演を務め、「セミ」役を演じる。いや、セミ役って。
脚本はドラマ「ひよっこ」(NHK)などの岡田惠和、監督は宝来忠昭、竹園元、そしてプロデューサーは昼ドラ「牡丹と薔薇」(東海テレビ)や「やすらぎの郷」、「トットちゃん!」(テレビ朝日系)などを手掛けた服部宣之だ。
さえないどころではない限界女子
羽化を待っているセミ(山田涼介)は、地中に6年間潜っていた。その間、聞こえてきたのは近くに建つアパート「うつせみ荘」の住人たちの声。住人のひとり・大川由香(木南晴夏)の声があまり聞こえてこないことを、セミは心配していた。
ついにやってきた羽化のとき。セミは、地上に出てきてこれから羽を広げようとする。その上に、寄りかかった窓の柵が壊れ、由香が落ちてきた。まだ羽ばたいてもいないのに死ぬのか、とセミが覚悟しかけたとき、由香はセミに気づいて無理矢理体勢を変えた。
由香「ごめんね。怖かったでしょう、ごめんね」
危うく死にかけた由香と、危うく死にかけたセミ。これが、ふたりの出会いになった。
セミ「なんて優しいんだろう。なんて。でも、なんてさみしそうな顔をしているんだろう。僕にできることはないだろうか。セミにはないのか、できること」
現在公開中の映画「天気の子」の主題歌を思い出すようなセリフ。「僕にできること」「セミにできること」を探し、彼は人間の姿となって由香の前に現れた。
公式サイトやリリース記事などの紹介文には、由香は「さえないアラサー女子」であると書かれている。しかし、由香の境遇は「さえない」どころではないように見える。
由香は、「あまりに田舎過ぎて、まったくのどかではない」田舎の村で育った。両親はヤンキーでケンカばかりしていて、兄・健太(三宅健)も地元で有名な「伝説のヤンキー」として活躍していた。地味でつまらない由香は、家でも学校でも「要らない子」として扱われる。ニックネームをつけてもらったこともない人生だった。限界田舎で、限界の孤独を味わって生きてきたのだ。
あるとき由香は、工場に出没する窃盗犯を見かけて警察に通報した。その窃盗犯が健太だったせいで、家族や周囲が由香を白い目で見るようになってしまう。たとえ犯人が身内だとしても、由香は良いことをしたはずのに……。その件でいよいよ田舎に居づらくなってしまい、彼女は給料の半分を仕送りする約束と引き換えに上京した。
翔子「あのさあ、大川さんさあ、何のために生きてんの? 生きてて楽しい? どうやったらそういう人ができあがるの?」
せっかく田舎を脱出してきたのに、東京でまた辛辣な言葉を投げつけられる。お弁当工場の先輩・翔子(佐藤仁美)は、どんくさい由香にイラついている。
由香「思います。翔子さんが言うように、私は何が楽しくて、何がしたくて生きてるのかなって。死んでも、誰も悲しまないのかな。何ひとつ変わらないし、私が死んでも。生きてても仕方ないのかなって思います。でも、死ぬほど死にたいわけでもないし、いまに至る。はい……」
モテなくて……とか、結婚できなくて……とか、仕事が上手くいかなくて……とかいうレベルの「さえない女子」ではない。自分は生きてても仕方ない、死んでも良いのかもしれない、でも「死にたい」と思って実行するほどではない。そんな危ういギリギリの女性が由香だ。
これまで「さえない女子」が主人公のドラマに「いや、彼氏いるじゃん」「いや、大企業とかで働いてるじゃん」「いや、そもそもめっちゃ美人じゃん」とがっかりさせられてきた女たちも納得の限界感。ここまで下げて描かれたからこそ、やっと「これは自分のための話だ」と抗うことなく感じられてしまう。
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