「セミオトコ」まさかの“セミ役”でコメディ俳優としての才能を発揮する山田涼介 「消えてしまいたい」限界女子に笑顔が刺さる(2/2 ページ)

» 2019年08月02日 11時30分 公開
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コメディ俳優としての山田涼介

 主演の山田涼介は、映画「鋼の錬金術師」(2017)やドラマ「もみ消して冬〜わが家の問題なかったことに〜」(日本テレビ系/2018)を経て、コメディ俳優としての才能を開花させつつある。

 「鋼の錬金術師」のときには、主人公のエドワード・エルリックのアニメーション的な走り方をしっかりと押さえていた。序盤シーンの走り方ひとつで「これはエドなんだ」と納得させる説得力を作り出していた。

 「もみ消して冬」では、家族に虐げられている三兄弟の末っ子・秀作役を演じた。周囲に振り回される役柄のため、泣いたり落ち込んだり舞い上がったりと百面相を繰り出していた。そのとき、笑える表情なのに「変顔」にはならないのが山田の特性だ。顔がきれいで品があるという理由もあるだろう。さらに山田の表情には、「変顔」のある意味空気を壊して笑わせる爆発力に頼っておらず、相手のアクションを受ける延長線上に表情をつくりだす。

 「セミオトコ」では、山田の説得力と調和がどちらも活きている。

 セミ「しーっ! 夜は鳴いたり大きな声を出す時間じゃないよ。鳴くのは太陽が空にある時間だけ。それが世界のルールさ」

 突然部屋に入ってきた男(セミ)に驚いて声をあげそうになる由香に、セミが「しーっ!」とジェスチャーして見せたとき。また、由香の部屋に楓の樹液であるメープルシロップを見つけ、はしゃぎながら飲むとき。指先をきれいに揃えたり、足先をやたらとパタパタ動かしたり、人間の形をしているけれど人間はしない余計な動きを加えて、異質な者であることを存在で示す。

 セミの登場に驚き、早口でしゃべる由香との掛け合いも良かった。由香が挙動不審になればなるほど、セミの落ち着いた雰囲気とのギャップでおかしさが生まれる。由香のテンションが上がると、セミのほうは絶妙にブレーキを踏む。このバランス感覚が、コメディ俳優としての山田の宝だ。

肯定され慣れていない女性たち

 由香への恩返しに、セミは願いを何でも叶えるという。由香の願いは「『生きてて良いんだよ』って言って、そっと抱きしめてください」だった。セミは、それを叶えた。こどもの頃に呼んでもらいたかった「おかゆ」というあだ名でも呼んでくれる。

 一番初めの願い事がそれって、つらすぎる。でも、それに感動する女性がたくさんいる。普段肯定されずに生きている人がたくさんいるのだ、ということがまた切ない。

 「7日間、7日間一緒にいてもいいですか」とセミは言う。

 由香「なんで7日だけ?」

 セミ「7日だけ? 違います。7日も、です」

 期限付きだという時点でもうすでに切なくなってしまうが、セミの言うとおり「7日も」と自分に言い聞かせて、2日目の放送を待ちたい。

むらたえりか

宮城県出身のライター・編集者・ハロヲタ。

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たけだあや

イラスト、粘土。京都府出身。

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