辞書マニアが語る“『新明解国語辞典』第4版を43冊持っている理由” 繰り返しますが「第4版だけで43冊」です(2/3 ページ)

» 2019年09月07日 12時00分 公開
[ながさわねとらぼ]

 現在の辞書では、内容の大きな修正を伴う改訂を「版」で、同じ版のまま新たに印刷を行う場合を「刷(さつ・すり)」で数えるのが普通です。辞書の奥付に「第3版第6刷」と書いてあれば、それはその辞書の2度目の大規模アップデートがされたバージョンの、6回目に印刷されたものであることを示しています。

 したがって、刷だけが違っている場合、内容にも違いはないというのが原則というか、たてまえ。ですが、実際には増刷の際に一部の内容が手直しされるというのはよくあることです。内容が手直しされているんですから、刷が違えばそれはもう紛れもなく別の辞書ですよね。すんなり納得いただけたと思います。納得いただけたものと思って話を先に進めます。


別の一部

 我が家に36冊ある通常版の『新明解国語辞典』第4版は、いずれも刷が異なっており、それぞれ内容も微妙に違っているため、持っておく意味があるというわけです。もしかすると、全く内容に変更のない増刷もあるかもしれませんが、その事実を確認するためには当然それぞれの刷を見なければなりませんので、やはり持っておく意味があります。

 当然、目指しているのは全ての刷のコンプリートです。現在所有している『新明解国語辞典』第4版のうちで最も数字が大きい刷は、1997年7月31日発行の第39刷です。この年の11月には第5版が刊行されていますので、これがほとんど最後の増刷ではないかとみられます。だとすれば、あと13冊で第4版の全ての刷をコンプリートできることになります。

 ん? 計算が合わない? いや実は、初刷(第1刷)を5冊、第2刷〜第7刷を2冊ずつ持っており、36冊全てが別の刷というわけではないんです。刷の数字の小さいものはレアで人気も高いので、古書店で見かけるとつい救い出してあげたくなるんですよね……。特に初刷は貴重です。状態のいい保存用が2冊、普段遣い用に1冊、布教用に1冊、あとは予備……初刷はもうさすがに買い足すことはないと信じたい。

 『新明解国語辞典』第4版で「面白い」と人気のある語釈には、若い刷にしかなく、後の刷で修正されてしまったものが複数あります。いきおい、若い刷を求める人が多くなります。

 例えば、有名な「マンション」という語の語釈は、初刷から第4刷までは以下のようなものでした。

マンション〔mansion〕スラムの感じが比較的少ないように作った、鉄筋のアパート式高層住宅。〔各階で個人・家族が使用する一郭には、賃貸しのものと分譲する方式のものとが有る〕[かぞえ方]一棟(ヒトムネ)。居住者を中心としては一戸(イッコ)。部屋単位では一室

 ところが、第5刷以降ではこのように書き改められているのです。

マンション〔mansion=もと、大邸宅の意〕高級性を志向した高層アパート。〔各階で個人・家族が使用する一郭には、賃貸しのものと分譲する方式のものとが有る〕「―のスラム化は当初から懸念された問題であった」[かぞえ方]一棟(ヒトムネ)。居住者を中心としては一戸(イッコ)。部屋単位では一室

 また、有名なものだと、動物を「飼い殺し」にするなどと書いていた「動物園」の語釈は第7刷で穏当なものに修正されています。その他、細かい修正は数知れず、「愛す」の項目が削除され子見出しだった「愛すべき」が独立したり(第2刷)、「年(ねん)」の語釈が6行分も加筆されたり(第5刷)、「土塁」という項目が新たに追加されたり(第15刷〜第17刷)など、内容もタイミングも多岐にわたっています。


また別の一部

 「将官」の項目にいたっては、第4版の間になんと都合3回も内容が書き換えられています

第1刷

しょう かん【将官】陸海空軍の武官のうち、大将・中将・少将の総称。

第2刷

しょう かん【将官】〔陸海空軍で〕大将・中将・少将の総称。〔将校では最上級〕

第12刷

しょう かん【将官】〔陸海空軍の将校で〕最上級のもの。佐官の上。→大将・中将・少将

第17刷

しょう かん【将官】陸海空軍の将校を、大きく三つに分けた中の最上級のもの。佐官の上。

 迷走の末、「将官」の語釈は結局これに落ち着いたらしく、最新の第7版でもこのままになっています。

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