辞書マニアが語る“『新明解国語辞典』第4版を43冊持っている理由” 繰り返しますが「第4版だけで43冊」です(3/3 ページ)
【小型版、机上版、グンゼ仕様……】通常版“以外”のコレクション
通常版以外の仕様についてもご紹介いたします。
判型の小さい小型版は、初刷こそ通常版と当時に刊行されましたが、それ以降は独立に増刷されているため、語釈の修正のタイミングが通常版と異なっています。まだ3冊しか確保できておらず、書き換えの実態をつかむには程遠い状況です。こちらもコンプリートを目指し、本腰を入れて集め始めたいと思っているところです。
「革装版」は自慢の一冊です。豪華版で点数も少なく、さらに架蔵のものは状態が非常によくしかも初刷! ヤフオクなどでは1万円を超える値で出品されることもあり、純然たるコレクター品と化しています。中身は通常版と同じなので、完全に保存・鑑賞用です。
「机上版」はその名の通り、判型・活字を大きくした仕様です。こちらは小型版と異なり、通常版の出た1989年ではなく、やや遅れて1991年に初刷が刊行されています。
「グンゼ株式会社仕様」というのは、ちょっと説明を要します。これは、奥付に「平成八年十一月 グンゼ株式会社創立百周年記念」と記された特別仕様版で、要するに企業のノベルティとして製作されたものだと思われます。通常は赤色のビニール表紙も、グンゼのロゴと同じ青色になっているなど、たいへんな凝りようです。
詳細な発行日は不明で、中身がどの刷に相当するのかもはっきりとは分かりませんが、第32刷が1996年3月、第33刷が同12月の発行ですから、おそらく第32刷と同じ版が使われているのではないかと思います。
かつては、ノベルティとして国語辞書がよく選ばれていました。コレクションの中にも、『新明解国語辞典』第3版のアンリツ仕様や、『三省堂国語辞典』第3版の東京コカ・コーラボトリング(現コカ・コーラボトラーズジャパン)仕様、『岩波国語辞典』第4版の三菱電機仕様などがあります。どれも単に社名を入れただけのものではない凝った装いをしており、辞書が輝いていた時代を見るようで懐旧の情にかられます。
最後にご紹介する「中国版」というのは、その名の通り中国で印刷・刊行されたバージョンです。世界図書出版公司という現地の出版社が三省堂から版権を取得して刊行したもので、序文等も含めて中身はまったく日本の『新明解国語辞典』第4版第2刷と同じです。中国では多くの学生が『新明解国語辞典』を使って日本語の学習をしていたと聞いたこともあります。本書もおそらくそういう人の手を離れてここへやって来てくれたのでしょう。
本稿では架蔵の『新明解国語辞典』第4版を題材にその収集の意義をつらつらと述べてきたわけですが、刷ごとの違いの事情は他の版、他の辞書においても似通ったものがあるわけで、その探究の果てしなさといったらありません。今日もまた、まだ持たぬ刷を探し、古書店をさまよい歩くのです。
(ながさわ)
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昔は漢字の自由度が高かったもよう。
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