ねとらぼ編集部員の怪談「しゃんしゃろ」――怖い話とは一体なんなのか(3/3 ページ)
聞き書き版
ことの発端は今から12年ぐらい前なんですけど、◎◎(プライバシー保護のため伏字にさせていただきます)にAさん(仮名)っていう親戚が暮らしてて、私たちは○○(プライバシー保護のため伏字にさせていただきます)に暮らしてたんですね。Aさんがたまたま◎◎のほうで失業して、行くところがなくて、いったんうちに居候していた時期があって、半年ぐらいいたんですよ。結構いたんですよ。
Aさんがまたちょっと◎◎のほうでお仕事ができて出ますってなったんだけど、Aさんも独り身なので、Aさんはそのとき33、34ぐらいだったんですけど、まあこのAさんは生活能力の低い人で、ラーメンとか牛丼とかばっかり食べてる人だったんだけど、かわいそうだということで、しばらくはうちの家からクール宅急便でおかずとか炊いたごはんとか送ってたんですよ。
そういうことが半年続いて、私が17か8ぐらいのときに、夜寝てたのね。そしたら急に夢かどうかもわからないけど、すっごい洞穴みたいなところにいて。自分が。巨大なんですよ。洞穴。で、かがり火がぶわーー!って焚いてあって。
――それはどういう見た目なんですか。
もう洞窟みたいな感じ。
――中に最初から入ってたんですか。
そう、最初っからイン。後ろが背で洞窟の奥に向かって自分が進んでる感じで、奥に何かめちゃくちゃでかい何かがあるんだけど、わかんないのよ、火がちらちらして。で見た瞬間やばって思って。ここどこだって思って、来たことも行ったこともないの、そういう洞穴みたいなところに。でええっと思って、でもとりあえず出るにも、出たいけど何があるのか気になるほうが勝っちゃって、行っちゃったの。
――△△さん(仮名)ぽい!!!!
あはは(笑)で、行っちゃおうと思って、とりあえず行ったんすよ。そしたら私がまあこれぐらいとするじゃん(指を伸ばす)。こんなでっかいおばあちゃんが正座してたの。
――怖!
奥に。めっちゃ怖いじゃんそんなさ。
――かがり火に照らされてるんですか。
そう。かがり火にね。
――かがり火は壁に刺さってる?
なんかね、図で言うと、これ説明するの難しいんだけど……ごつごつした岩があるじゃん、で、松明みたいなのがついてるんですよ。で揺れてて、火がちらちら飛ぶ感じ? で、このへんに私がいるとするじゃん。そしたらおばあちゃんこんぐらいでかいの。(図を描く)
――うわあああ。
で、まあ座ってるんですよ、こうやって。着物着てるんですよ。でわたしは平服なんですよ。めっちゃ普通にジーパンとポロシャツ。で、ええ〜!? と思って、誰〜〜!? と思って。
――全然見たことないおばあちゃんなんですよね。
そう。だし、なんか結構険しい顔してて、おじさんぽかったの。顔が。で誰? と思ったら、ここ(おばあさんの足元)に何かいたのよ。動物が2匹。最初そこではあ? と思って目が覚めたの。で、ぱって起きたら、足が、めっちゃ、すりむいてる、じゃないけど、ひっかき傷みたいなのが脛から膝にかけてあって。なんでだろうって思ったんだけど、やばい夢を見てかきむしったんだと思って、最初はそれで納得しようと思ったら、次の日また同じ夢出てきて、そのときはもうこの状態(洞窟のおばあさんの前にいる状態)からスタートしてたの。完全に昨日の続きなの。
――うわ〜〜〜〜!
で、こっちもキレてきて誰?ってなって。
――△△さんは怒るんですねそこで(笑)。
そうなの。で、行ったらこれがね、しっぽがすごく太い動物だったの。
――犬みたいな感じですか?
そう。犬っていうか狐だと思うんだけどね。見たことない、私は狐をリアルで。でも多分狐だと思う。しっぽがもう極太なの。もう意味わからんと思って、私この人に話しかけたの。「誰ですか?」って。そしたらね、「座れ!」って言われて正座させられて。なんか知らんけど言うこと聞いちゃってね、はいって正座したんですよ。したらね、何か言ってんだけど、すっごいなまっててほぼわからないの。
――なまってる、どういうなまりですか。
うーん、なんとかなんとか、なんとかだ〜〜て……。
――どこのなまり?
えっとね、のちにわかるけど××(プライバシー保護のため伏字にさせていただきます)なまりだった。
――へえ〜〜。
全く私××弁わかんないんだけどね。で、ここで出てきたキーワードが「しゃんしゃろ」っていうキーワードを聞き取ったんですよ。
――しゃんしゃろ。
そう。しゃんしゃろ。しゃんしゃろがなんとかってずっと言ってんのよ。で「しゃんしゃろとは?」って思って。で、すっごい私怒られてて。すごい私逆ギレして、「なんでこんな目に合わないといけないんですか? 誰ですか?」ってキレて、キレ倒して起きたらひざもう真っ青。朝起きたら。両足。
――ひゃああああああ。
で、親にさすがにこれはいかれてると思って、マジでやべえんすわって話をしたの。そしたら「君はすごい寝相が悪くて、知らないかもしれないけど寝てる間に玄関まで行って寝たりしているから、しかも朝自分で戻ってきてまた寝たりしてるから、ぶつけたのでは?」って言われて。寝相っていうかそういう癖があるから。そういうことなのかなって思って納得したんですよ。で、そしたらね、また3夜連続なんですよ、これが。
――怖〜〜〜〜〜〜〜!
そう。今度はね、すげえ揺れてんの。暗いんだけど。
――え、地面ごとですか。
いや、なんかね、箱に入れられてんだな、私が。でめちゃくちゃ揺れてて、あ、これ殺されるんじゃねと思って。そん時は夢かどうかわかんなくて。
――箱は黒いですか、白いですか。
いや、真っ暗でなんも見えない。でぐわ〜〜揺れてんのよ。揺れてんだけどなんかすっごい寒いの。えって思って、なんだこりゃ〜〜ってなったら、どん! っていきなり箱が落ちて、持たれてたんだけど、落とされたみたいにぱーんって落ちて、なんじゃこりゃと思ったら、上のガムテープがばりばりばりばりって開いて、ぱかって開いたら、Aさんがいたのよ。
――おおおお。
で、え、Aさん? と思ったら、私の身体の横からさ、狐がさ、もう100匹ぐらいぶわーーーー! って出るの、箱の中から。だから箱の中には私と狐がいるって状況だよね。
――それまで狐には気づいてなかったんですか。
全く気付いてなかった。もうとにかく揺れてるし怖いって思ってて。でとにかくばんって開いて、狐がうわ〜〜って放出されて、Aさんは全然私にも狐にも気づいてなくて、どうやらこれはうちが送ってる宅急便の荷物だって気づくのよ。だから寒いんだと思って。
――ああ〜〜〜〜。
で、いったん私はとりあえず出て、やってんだけど、Aさんがこう冷凍のご飯とかをちんして食べてるのよね。食べてたら、横から食べてるものを狐がすげえ食ってて、Aさんは何も食べてないの。Aさんエアーなんですよ。狐が全部ごはんとか食べちゃってるんですよ。やば〜と思って。Aさんなんかあるんじゃねと思ってたの。
で、私そのときAさんがどういう家に住んでるのか全く知らなかったの。でもあまりに気持ち悪いからAさんに電話して、「今住んでる家ってこういう間取り?」って聞いたら、「あ、何不動産情報か何かで見たの?」って言われて。完全に見た光景だったの。土間があって、ここがキッチンで、とかが。全くばっちりあってて。で、なんか気持ち悪いこと言うけど、狐がすごい出てきてさ〜って言って。「疲れてるんじゃない?」って。その時けっこうもうすでにアルバイトしたりしてたから。で、うーんそうだと思うけどねーって言って電話切ったら、その日の夜、Aさん階段から落ちて足骨折。
――足なんですね〜〜〜〜〜……。
そう、私足けがしてたじゃん? で、右足折って左足ねんざして、歩けなかったの。Aさんが。で◎◎で入院しちゃったもんだから、「どうする? どうする?」って言ってたら、Aさんの親が死んだんですよ。
――それいつですか。
12月27ぐらいにAさん階段から落ちる、で30日ぐらいかな。夢見たのがクリスマスぐらい。クリスマスから3夜連続でやられて、4夜めにAさんが骨折して、でとりあえず入院した。28日に手術終わって、で年末年始入るんでとかどうのこうのって話をされて、病院は連れて帰ってほしそうにするのよね。急患とかあるし。でうちも○○だし。そしたら30日に親戚の人が死んだってなって、行かなきゃじゃん。で、もうどうする? って。Aさん歩けないし車いすみたいな状態だから。
でどうする? って言って、しょうがないからいったん行くかって言って、そん時初めてAさんのルーツが発覚するんだけど、××出身なんですよ。で××ってそこの方言でしゃんしゃろっていうらしい。
――へええええええええええええええええ〜〜!!!!
しゃんしゃろってずっと言われてたのは、××に帰れって多分言いに来てたんだと思う。
でとりあえずうちの家族も機転を利かせて、もうしょうがないから一旦○○から、飛行機とかないから、◎◎まで行って、Aさんを拾って、××まで車で連れていくかってなって。葬式は待てないじゃん。だからそのルートでいって、結局Aさんの家についたの。Aさんのお父さんの家。
初めて着いて、着いた瞬間めちゃくちゃ気持ち悪くて。普通に吐き気。でなんだろうこれと思って、なんかずっと地面が地震で揺れてるような感じなのよ。酔ってんのか?ってぐらいの揺れ。で、きもちわるって思ったけど、お父さんの遺品の関係とかをちゃんとやっとかないと困るって言われて、で、なんか家入ったんすよ。したらすごい変な家で、家入ってからだいぶ土間。あの、土足で上がれるところね。そこにキッチンとか全部あんのよ。で、畳、小上がりがあってそこから畳で、お父さん大工さんだったから大工さんの作業スペースとかいろいろあんだけど、その土間が、もうどうもおかしいのよ。
で今考えたらおかしいんだけど、鍵開けてぱっと入ったら女の人がいたのよ。普通に。で土間で野菜か何かを洗ってて、でももうこっちも○○までいってぐるぐるして疲れてるし気づいてなくて、あ女の人いる、って思って。Aさんがいろいろ葬式で使う写真だなんだってやってたんだけど気持ち悪すぎていれなくて。もうめちゃくちゃ申し訳ないんだけどめちゃくちゃ具合悪いからもう私車で待ってるわ、つって、じゃわかった、つって私がまず車に戻ったのよ。したら5分もしないうちにうちの親も帰ってきて、めっちゃ気分悪いよね、ってなって。「アスベストとかそういうやつなのかな?」みたいな。家が。つって、Aさんが一時間ぐらいで帰ってきたんですよ。で私が帰ってきたAさんに、「さっきの女の人誰?」って言ったら、「え?誰もいないよ」みたいな。
――ひえええええ……。
え? いたでしょ? つって。白い服着ててさあ。こうこうこうでさあ、って言ったら「あ、お袋だ」って。
――はああああ…………。
で、聞いたら、のちのち発覚するんだけど、あの人結局おばあちゃん。Aさんのお父さんのおばあちゃん(お母さん)で、おばあちゃんがめちゃくちゃ嫁いびりしてたらしくて、お母さん蒸発してんのよ、要は。でめっちゃいびってて、ずっと怒られてて、「野菜の洗い方が悪い」ってずっと言われてたっていってて。なんかわかんないけど、念みたいな? なのかなって思ったけど、気持ち悪いから「あ、そうなんだ」って言って、でなんか雰囲気的にもさ、人死んでんのにお化けがどうたらとかさ、言えないじゃん。
――あああ、いろんなこと起きすぎてますもんね……。
そうそう。で、Aさんの家がめっちゃぽつーんって一軒だけあんのよ。周り家なんもないの。集落あるのにその家だけハブられてんのかなっていうぐらいで。でよーーーく見たら、これが結構衝撃的だったんだけど、縦から見た図ね、これ。(図を描く)家がこう、サザエさんみたいにあるとするじゃん。そしたら、普通ここって地面じゃない? じゃなくて、ここに水路が通ってんだよ。家のど真ん中に水があんの。
――なんでえ……?
で、上から見ると、こういう屋根だとするじゃない? もう、こんな感じ。水が。下、水なんすよ。川なの。これがなんか農業用水らしくて、こっちが畑で、こっちに捨てるんだよね。泥とかを。で、その泥の上に立ってんの、この家。
――いつ建ったおうちかとかってわかるんですか?
いやでもだいぶ古かったよ。戦後すぐとかじゃない? 空襲でその辺何もなかったらしいから。で、なんか結構風水とかでは、水の上に家建てちゃいけないとか、井戸の上にもの建てちゃいけないっていうのに、大工のお父さんがそこに建ててんのね。
――なぜ〜〜〜。
で、おかしいじゃん。明らかに。ええーーって思ってたの。一瞬、その時点で。で、とりあえずお寺にお父さんの遺体があるから行かなきゃって言ったんだけど、車走り出した瞬間に、なんかちょっと待ってっつって。なんかあそこの神社にすごい行きたいって思って。急に。私全く神信じてないのよ。神様お願いしますとか言える権利ないんだけど。で、あの賽銭を投げたことのない人間が急に神社に行きたいって言いだしたわけだよ。
したらその車に乗ってた全員が「あ、神社行っといたほうがいいね」って。うち全然信心深くないんだけどね。みたいな。寺がこっち、神社がこっち、みたいな分かれ道で、じゃあ神社に行きましょうっていってぶーんって行ったの。したら駐車場のところに、なんか、立ってて。宮司さんが。仁王立ちで。で、私が車降りた瞬間に「やっと来ましたね」って言われて。
――うわああああ〜〜〜〜。
ええー? ってなって。で、私がやばいからとりあえず行きましょうって言われて、私と、Aさん? まあAさんは両手松葉づえ状態なんだけどね。で母が車止めてたんですよ。したら母がめちゃくちゃすごい形相で上がってきて、「やばい」つって。「どうしたん?」って聞いたら、私たちが入った後からめちゃくちゃ旧式のセダンが来たんだって。ぴーって。で真横にぴっとつけたんだって。でぱっと見たらだれも乗ってないんだって。
――怖〜〜〜〜〜〜!!!!
でセダン今来たんだって。「セダン今止まってんだけど!」つったら「追いかけてきましたね」って言われて。宮司さんに。「早くやりましょう」って言われて、「はあ?」って言って、「ちょっと待ってください、なんのことかわからんけど私本当に全く神は信じてなくて、お布施とかいっさいできないんで大丈夫です」って言ったら、「お金いらんからとりあえず座ってください」って言われて、「え」ってなって。
そしたらがーーんって開けられたら、もう今から儀式しますみたいな準備整ってんのね。火もついてるし祭壇もあって、なんか宮司さんすげえ帽子かぶってて、ファッサファッサやるやつ持ってんのね。でえ? って思って、「とりあえずなにも言わなくていいから座っててください」って言われて、で「正座で」って言われたから私とAさんが座ってたんですよ。そしたら祝詞みたいなの言いだしたのね。でこっちも疲れてるからはあ〜始まった〜〜と思って。
でなんか一応こうやって(手を合わせて)くださいって言われてたから、そうしてたのよ。したらある節に来た瞬間に後ろから思いっきり蹴り飛ばされたぐらい私が前に飛んで。1メートル半ぐらい飛んだのよ、体が。
でばーって見たら、私の方が左だとして、Aさんが右だとしたら、私のほうの火だけめちゃくちゃ燃えてんのよ、びびるぐらい。で、「やば〜(笑)」と思って。Aさんは全然どうもないの。Aさんは普通に話聞いてて、私だけ毎回ひどい目に合うのだいたい(笑)。
で、それが終わって、とりあえず座ってくださいって言われて、今回はあなたは何の関係もないけど、いろんな人のところにおばあちゃんが呼びかけに行って、本人のところにも行ったし、うちの親のところにも行ったんだって。だけど全く誰も聞いてくれなくて、あなただけが唯一なんだこれと思って調べたりいろいろしたから、「こいつは使える」と思われて、使いによこされました、って言われて。え〜〜つって。
「あなたこれ見たでしょう?」って言われて、ぱって見たら狛犬の像があったのよ。で何だこれ、どっかで見た? と思ったら、あのおばあちゃんの足元にいた狐みたいなやつがそれだったの。そこの神社の狛犬がすげえ変わってて、狐みたいなかっこうの狛犬だった。私が見たことない動物だなあって思ったのは、そりゃいないもん、狛犬だからね、っていう話で。
でどうやらおばあさんは、神社の人なの。でもお父さんがいい人すぎて本当は神社に通わなきゃいけなかったのに、地元の、いじめじゃないけど寄り合いみたいなところに、寺の世話をしろって言われて、お寺の人もお坊さんももういないんだけど掃除したりなんだりいろいろやってたと。
したらその宮司さんいわく、神社のほうの使いと寺のほうの使いがもめた、みたいな感じで、お父さんがあそこに家を建ててたのも、汚れ? 農作物とかいろいろな汚れをここで浄化していくみたいなところで、要は信心深かったから、家を無理やり建てさせられて、すごいあそこは地場が悪いんですって言われて。地場ってなんぞやと思ったら、「行った時気持ち悪かったでしょう? 地面揺れたでしょう?」って言われて。「揺れてました」って言ったら「あそこはね、磁石置いたらぐるぐる回るんですよ」って言われて。
だからお父さんは最後まで神社にも寺にも行ってしまったから、なんかそういう、神々の争いみたいなそういう状況になってて、でおばあさんは神社に行けって言ってすごいやってんだけど寺に行っちゃうから。で結局死因も最後までよくわからない死に方だった。家で死んでた、みたいな……そんなめちゃくちゃ年でもなかったんだけどね。
で、なんかいろいろあった、ってなって。結局なんやかんやして、これで祓えましたから、って言われて。私が車乗った瞬間に、宮司があたしにこう(手招き)やんのよ。でなんか私だけ呼ばれたからぱーっと行ったら「またあの人来ますからね」って言われて。
――ひええええええーーーー。はい。
で、今のところは来てないけど、またいつか来るんかな、と思ってる。そんなお話です。
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