「何言ってるか分からないけど面白い」が最強の記事 ねとらぼ編集部員に聞く「お前の原体験はなんだ」〜杉本吏編〜:ねとらぼの中の人インタビュー(3/4 ページ)
杉本:そうだと思う。でも「良い記事」と「売れる記事」は確かに違うんだけど、結局“良い”にいろんな種類があるだけだからね。自分らが思う「売れないんだけど良い記事」を堂々と作るために、「売れる記事」をめっちゃ作らないとなとは思ってるよ。「ねとらぼアンサー」もそういう考えでやってるから。
――面白い記事はどうやって作っていくべきなんでしょうか。
杉本:取材したり他の人の文章編集してて思ったんだけど、「面白い記事」の種類はいろいろあって、「自分の思いを言語化してくれた」みたいな面白さもあるし、「全然知らなかったことを解説してくれてありがとう」みたいな面白さもあるんだけど、「何言ってるかわかんないんだけど面白い」ってのが最強なんですよ。
これはもう俺の中のポリシーで、例えば昔マインスイーパ日本一の人に取材したことがあるんだけど、その人が「ずっとプレイしていると、理屈じゃなくて感覚でどこに地雷が埋まってるかわかるようになる」って言い出したんですよ(笑)。
――それ、もはやオカルトの領域ですね(笑)。
杉本:もう肌感でわかると。「何言ってるんだろう」と思うんだけどそれが超面白くて(笑)。あと、「ドラゴンボールファイターズは通常投げが無い」みたいな記事もそうなんだけど、やっぱり何かに入れ込んでる人がその熱量をそのまま表に出すと超面白くなるね。
もちろん、こっちは理解してもらえるように書くんだけど、一定以上に行くとそれは不可能になるんですよ。よく「簡単なものを難しく言うやつはバカ」という意見と、その逆に「難しいものを簡単に言えるやつこそが頭がいい」という意見があるんだけど、前者はともかく後者が成り立つとは限らない。「難しいもの」は簡単に言えないから難しいわけで。
――なるほど、わかる気がします。
杉本:例えば、「5分でわかるニーチェ」みたいなのあるけど、あんなのニーチェからしたらガチギレじゃないですか(笑)。そういうのはそれっぽくすることはできるけど、欠落してる部分が大きすぎる。結局、難しいものは難しくせざるを得ない理由があるんだよね。「超訳」とか銘打つならまだわかるけど。
オセロの元世界チャンピオンにもインタビューしたことがあって、やっぱり言ってることはすごく難しいけど、かみ砕いちゃいけないんですよ。こういう取材のときって「要するに」ってのがけっこうNGワードで、向こうが言おうとしていることをこっちの浅い知識で要約しちゃいけない。
将棋のプロとかもそうで、みんな羽生さんの言葉を理解しようとはするんだけど、本当のところはわかんないじゃないですか。例えば、将棋には「打ち歩詰め(※)」という反則があるんだけど、これはすごく変わったルールで別に無くてもゲームは成立するし、打ち歩詰めが起こりうる局面はめちゃくちゃ少ないから、本来はどうでもいいはずのルールなんだ。
※持ち駒の「歩」を打って相手の王を詰ませてはいけないというルール。
将棋は何百年という歴史の中で徐々にルールが整えられていったから、この「打ち歩詰め」も誰かが過去に付け加えたはず。で、このルールに対して、羽生さんは「打ち歩詰めが無かったら、先手必勝になっちゃうと思うんで、誰かが付けたんじゃないんですかね」と言ったことがあるんだ。
――……それはすごい発言ですね。
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