こわい話に潜む「女性への抑圧」とは? “こわい話”を解剖する(1/2 ページ)
なぜ、そのこわい話は「こわい」のか?
――私の母の友人で、北海道に住むKさんの話。
昨年のお盆のこと。Kさんの二十歳になる一人娘が帰省してきた。大学進学で上京し、一人暮らしを始めてからはバイトや課題で忙しいからと、夏冬の長期休暇にも帰ってこず、顔を見るのは二年ぶりだった。
空港で待っていたKさんは、久しぶりに会う娘の表情が硬く、伏し目がちで、夏だというのに黒い長袖のニットを着ているのもあってひどく暗い雰囲気だったのに驚いた。
元々、人懐っこく明るい娘だったのだ。
帰りの車の中でも娘はほとんど喋らなかった。
「そうだ、昔よく一緒に行ったお風呂屋さんに、久しぶりに行ってみようか」
Kさんが後部座席を振り返り、娘がぽたぽたと大粒の涙を流していることに気づいた。
家に着き、Kさんは言った。「何かあったなら教えて? お母さんはあなたの味方だから」
すると娘は泣きじゃくりながら、着ていたニットを脱いでKさんに背中を見せた。
「私のこと、嫌いにならないで」
娘の背中には、卑猥なスラングやイラスト、男の名前の刺青が、びっしり彫られていた。
上京してすぐに付き合い始めた恋人が異常に嫉妬深い男で、浮気防止と称して無理やり、彫らせたのだという。――
……というこわい話は、私がでっち上げた大ウソです。サイコ男にタトゥーを彫らされた女の子は居ないので安心してください。ここからは、この“こわい話”を解剖していきます。
白樺香澄
ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。クラブのことを恋人から「殺人集団」と呼ばれているが特に否定はしていない。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba
「整形失敗者」の物語でもある口裂け女
前回は、怪談が「都市伝説」として長く・広く語り継がれるために必要な条件のひとつが「多くの人が共感する教訓性を含んでいること」だと紹介し、1979年の「口裂け女」譚の流行には、「受験戦争」へのネガティブな世論が反映されていたのではないか……という話をしました。
「口裂け女」にはもうひとつ、見逃せない要素が含まれています。
それは「女性への抑圧」という、この手の都市伝説にたびたび見られるプロットです。
「口裂け女」の正体はしばしば「美容整形手術に失敗した女性」と説明されます。
ここには、「美容整形」に対する不信感と嫌悪感が反映されています。
美容整形に批判的な人の常套句に、「親からもらった体を傷つけるなんて」というのがあります。実はこの言葉のルーツは儒教で、『孝経』巻頭に「身體髪膚、之れを父母に受く、敢へて毀傷せざるは、孝の始なり」とあります。
2018年に大阪樟蔭女子大学の松下戦具氏が発表した質問紙調査の結果によれば、上述のような「道徳的信念」は、回答者が美容整形に否定的な感情を抱く、最も重要な因子となっています。
「整形=親不孝=悪」という、クラシカルな家父長制に根差した「道徳観」は、今日においても多くの人に内面化されており、「口裂け女」譚にもそれが教訓として織り込まれているのです。
関連記事
- 「誰もが知っているこわい話」の共通点とは? “こわい話”を解剖する
こわい話を解剖すると、もっとこわいものが出てくるかも。 - 【特集】ねとらぼGirlSide真夏の特集 テーマ「怖い話」(8月10日〜15日)
夏はやっぱり怖い話。 - ねとらぼ編集部員の怪談「しゃんしゃろ」――怖い話とは一体なんなのか
奇妙な夢から始まる謎の事件について聞き書きを行いました。 - 謎の男の顔が…… 三代目JSBとDA PUMPの集合写真は“心霊写真”なのか? オカルト研究家山口敏太郎に聞く
ファン騒然。 - 首吊り鳥居、古戦場跡、血を流す松 三和交通「心霊タクシー」ツアーにガチ突撃! 取材班のカメラに写り込んだこれはいったい
やだ怖い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
消波ブロックの隙間にカニカゴを仕掛けたら…… 「うそでしょ!」“想像を絶する結果”に大興奮「見てて声出た」
-
「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
-
「正直破格です」 成城石井の元店長が辞めてからも買い続ける“名品”がリピ必至 「ヨダレが出そう」
-
これは“1秒”で解きたい! 「8×2×0÷4」の答えは? 【算数クイズ】
-
【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
-
「レベル間違えてる」 イオンの“1944円恵方巻”、衝撃ビジュアルにネット大騒然 「なにこれ」「本気かよ」
-
100均ビーズをどんどんテグスに通していくと…… うっとり見入る完成品に世界が注目「これは傑作」「どれも可愛いいい!」
-
「こんなお母さんになりたい」 北海道で暮らす67歳女性の“手作り料理”がすてき 「参考にしたい」「ぱぱっと作ってみな美味しそう」
-
「この子はきっと豆柴サイズ」と言われた子柴犬、4年後の姿が大きな話題に…… それから約1年たった“現在の様子”を聞いた
-
親の反対を押し切り、17歳で同棲を開始→それから13年後…… 若くしてママとなった女性の“現在”が話題
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
- スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
- 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
- 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
- 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
- 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
- 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
- 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
- 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議