「そこは蒸気機関士の意地なんです」 「SL銀河」で感じた鉄道マンのカッコ良さ:月刊乗り鉄話題(2019年8月版)(2/4 ページ)
独特の「揺れ」が楽しい
ポッ、と汽笛が聞こえました。蒸気機関車が先頭に連結された合図。いよいよ出発です。4時間22分の銀河鉄道の昼の旅が始まります。今度はポーオーッと長い汽笛。ガシャンと連結器が鳴ります。そしてゆっくりと釜石駅を離れます。駅員さんやショッピングモールを訪れた人々が手を振って見送ってくれました。
車窓の右側には転車台と蒸気機関車の車庫がありました。甲子川(かつしがわ)を渡ると、右手に線路が分かれていきます。あれは「三陸鉄道リアス線」です。もともとJR東日本の山田線の一部でした。しかし東日本大震災で沿岸区間が津波に流されてしまいました。長い協議の末、JR東日本が線路を復旧させた上で、三陸鉄道に事業を移管させた区間です。車窓の左手、甲子川がいったん離れていきます。しかし市街地が終わる頃、またこちらの線路に寄り添います。釜石線は陸中大橋駅付近まで、甲子川の谷間を走ります。
蒸気機関車の汽笛と駆動音が谷間に響き、次第に線路は高くなって街を見下ろす風景になります。窓の外を時々煙がたなびいていきます。SL列車の車窓の特徴ですね。でも、他のSL列車とは乗り心地が違います。耳を澄ませば、ディーゼルエンジンのような音が混じっています。そして揺れ方も。左右の揺れだけではなく、前後方向にも小刻みに揺れています。他の列車だと、加速中は引っ張られる感覚だけです。でもSL銀河はちょっと違う。引っ張られつつ、時々戻る感覚です。
なぜこのような音と挙動になるのかというと、実は、SL銀河の客車がディーゼルエンジンを搭載しており、蒸気機関車と力を合わせて坂を上るからです。蒸気機関車が走る。客車も走る。だからディーゼルエンジンの音が聞こえて、お互いの速度の小さな誤差が前後方向の揺れになるのです。他のSL列車は客車に動力がないので引っ張られるだけ。音も静かです。
SL銀河の客車にディーゼルエンジンがある。その理由は、ディーゼルカーを改造したからです。急勾配の釜石線でSL列車を応援するためのアイデア。JR東日本はJR北海道のディーゼルカー「キハ142」を4両購入しました。
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