『うえきの法則』福地翼の新作 異能力ラブコメ『ポンコツちゃん検証中』がかわいすぎる(1/2 ページ)
ヒロインの夢咲さんがとにかくかわいいんだって。
『うえきの法則』『サイケまたしても』の福地翼さんによる新作『ポンコツちゃん検証中』(少年サンデーコミックス)の第1巻が9月18日に発売された。
ヒロインの夢咲さんは、毎朝目覚めるたびに「特殊能力」を1つ獲得する。「触れたものをプリンに変える能力」だったり「念じたものを平行移動させる能力」だったり、役に立つのか微妙なものばかりだが、彼女はそれらを使いこなす必要がある。ちょうど1年後、地球を滅ぼす巨大隕石が落ちてくるからだ。
が、タイトルにあるように彼女はポンコツである。普段の行動もヒロインというよりマスコットに近いくらいであり、「手で触れたものをドローンに変える能力」を貰った際には、なぜか自分の両膝をドローンにしてひっくり返っていた。完全に人選ミス。地球は終わり。あきらめよう。
一方で主人公の水戸くんは顔が怖いだけの一般人である。持ち前の洞察力を発揮して夢咲さんの能力検証をサポートする。長所が「洞察力」というのがいい。思春期真っ盛りの男子中学生は「人間観察」が大好きだし、「洞察力」に根拠のない自信を抱えているので。
この漫画、一言で表すならば大量の砂糖で煮詰めた「セカイ系の甘露煮」である。
世界の命運をかけたボーイ・ミーツ・ガールを大真面目に描きながら、それでいてセカイ系に特有の「危うさ」を徹底的に排除している。泣き叫ぶような苦難はなく、胃酸が逆流するような恋の障害もなく、ただひたすらにヒロインがかわいい。
「特殊能力を有するのは主人公ではなくヒロイン」「主人公とヒロインのプライベートな関係が世界の命運を左右する」という構図は、いわゆる「セカイ系」作品に見られがちな設定である。『天気の子』を「現代に復活したセカイ系」と評価する向きがあるのも、こうした文法をある程度踏襲しているからだろう。
ところが、『ポンコツちゃん検証中』には一般に思い浮かべるセカイ系作品と決定的に異なる点がある。世界の命運を一身に背負った少女を見ていると、普通は鬱々とした展開を連想しそうなものだが、夢咲さんの場合はそれがない。ポンコツっぷりがあまりに現実離れしているせいで、彼女の周りは「ギャグ漫画時空」と化している。つまり無敵だ。壊した家は次回になれば直っているし、たぶん隕石に当たっても「いてっ」で済むんじゃないか。
すなわちわれわれは心から安心して夢咲さんのかわいさを堪能できるのである。こんなにうれしいことはない。
異質なのは夢咲さんだけではない。主人公の水戸くんもまた本作を本作たらしめている要因である。なぜなら彼は第1話にして「夢咲さんが頼ってくれるなら……なんのために検証してるかとか……神様とか……そんなのどうでも……」などと考えてしまうからだ。
わかる。「好きな女の子といい感じになる」方が世界よりも大事になる瞬間は、痛いほどよくわかる。だけどこういうのは、いろんな葛藤を経た末にクライマックスでようやく辿り着く答えな気がするし、最初からこんなペースで、ちょっと飛ばしすぎじゃないか水戸くん!
夢咲さん側の好感度も最初からMAX。おっぱいに頭から衝突しても、市街上空から垂直落下する程度のペナルティーで済む。00年代の作品であれば意識を失うまで殴られていただろう。
うじうじ葛藤する主人公や、ヒロインの好感度を上げるためだけに用意された困難など必要としない、これは発明だ。結局のところ男子中学生が求めているのはいちゃいちゃである。マズローの欲求ピラミッドをご覧いただきたい。「恋愛が成就するまでの過程を楽しみたい」は「性欲」のきっかり真上に記されている。
というわけで、いろいろなことがどうでもよくなるくらい、夢咲さんはかわいい。以下に第1話を丸ごと掲載しているので、溶けた砂糖のように輝く夢咲さんの笑顔を自身の目で確かめてほしい。
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『ポンコツちゃん検証中』1話出張掲載!
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