セブン-イレブン店舗オーナーが本部を「おでん無断発注」で告発 → どんな問題があるのか弁護士に聞いてみた

セブン-イレブン店舗のオーナー5人が、「本部社員がおでんなどの商品を無断で発注した」として公正取引委員会に申告書を提出しました。

» 2019年09月18日 11時45分 公開
[戸部マミヤねとらぼ]

 セブン-イレブン加盟店のオーナー5人が9月11日、公正取引委員会を訪れ、同社を告発する内容の申告書を提出したと報じられています。店舗に無断でおでん等商品を発注されたことなどを理由に、セブン本部の独占禁止法違反を主張しています。



 オーナーらは「最終的にキャンセルできたが、(店舗にやってきた本部社員に端末を操作され)勝手におでんを発注された」と陳述しており、セブン本部の強引な経営方針が波紋を呼びました。ネット上では「独禁法違反以前にこれ犯罪でしょ?」「文書偽装の罪で逮捕じゃないのか……」など、独禁法のみならず刑法にも抵触するのではないかと推測が飛び交っています。

 告発が真実であれば、実際に法律上、どのような問題があるのでしょうか? グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士は以下のように回答しています。


1.独占禁止法上の問題について

 優越的な立場に立っていることを利用して、立場の弱い者に対し、商品を購入させるような不公正な取引は、いわゆる独占禁止法で禁止されています。

 セブン-イレブン・ジャパン本部と店舗オーナーとの立場を考えたとき、店舗オーナーに比べ本部が優越的な立場にあるといえます。

 このような、本部社員が店舗オーナーに無断でおでんを発注するような行為は、本社の優越的な立場を利用して店舗におでんを買わせるものと考えられ、独占禁止法に違反する可能性があります。特に、おでんが買い切り商品で返品等が認められない場合、独占禁止法に違反する可能性が高いです。

2.刑法上の問題について

 本部社員が、オーナーに無断でおでんを発注した場合、オーナーはその発注を取り消したり、多く買ったおでんを売り切るよう通常と違う業務を強いられたりすることとなります。このような場合,偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

 またオーナーは,まさか「本部社員が勝手におでんを注文する」とは思っておらず、もしそのような無断注文の目的で来ていると知ったら、本部社員を店舗に招き入れることは当然ありません。このような場合、「建造物侵入罪」が成立する可能性があります。

 なお、ケースにもよりますが「詐欺罪」などの犯罪が成立する場合もありえます。

 さらに、店舗事務所の端末のアクセスがオーナーにしか認められていないにもかかわらず、店長のIDやパスワード等を無断で入力し、その端末を利用するような場合には、いわゆる「不正アクセス禁止法」に違反する可能性があります。


3.民法上の問題について

 本部社員が、オーナーに無断でおでんを注文するような行為は、本部とオーナーとの間の信頼関係を壊すような行為です。このような信頼関係を壊すような行為をすることは、本部とオーナーとの間の契約に違反する場合や、店舗に損害が出ないよう配慮する義務に違反するものとして、債務不履行にあたる場合があります。

 また、契約違反ではないとしても、キャンセルが間に合わず、おでんが大量に余り廃棄せざるを得ないような場合、本部社員はオーナーに違法に損害を負わせたとして、不法行為にあたる場合があります。

 このように、本部社員のおでんの無断注文によりオーナーが損害を被った場合、オーナーは本部に対して、その損害を賠償するよう請求できることとなります。


4.まとめ

 今回の報道について、詳しい事実関係は明らかではありません。ですが本部社員がおでんを無断注文する行為は、上記のような法律上の問題をはらむ行為と考えられます。

 たとえ法律上問題がないような場合でも、おでんの無断注文は褒められた行為ではなく、一定の社会的責任を問われ得る行為だと考えられます。それがオーナーの利益を考えたものであったとしても同様です。


取材協力:井上圭章弁護士(グラディアトル法律事務所)



セブンーイレブン本部が「おでん無断注文」 オーナーらは独禁法違反の理由として、「おでん無断注文」以外にも、24時間営業の義務化や、オーナーを補助するための制度が自由に活用できないことなどを挙げています(画像はセブンーイレブン・ジャパン「オーナーのサポート体制」ページより)

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