今のギャグ漫画は「テレビを基準にするやり方だとちょっとまずい」――『トマトイプーのリコピン』大石浩二に聞く、「面白かったね」で終わらない方法(6/6 ページ)
影響を受けた作品
――ここからは作品から少し離れて、先生自身のことについておうかがしたいのですが、まずは漫画家を目指されたきっかけを教えてください。
昔から4コマ漫画とかを描いてはいたんですけど、本格的に漫画家になろうとまでは考えてなくて。大学の授業中によく4コマを描いて隣の人に見せてたら「面白い」って結構いわれたんで、「そんなに面白いんならプロになれるかな」って調子に乗って、福岡でやってたジャンプのスカウトキャラバンに持って行ったのがきっかけですね。
そのあと1年くらい編集部とやりとりしてたんですけど、急に「ジャンプ」で代原(代理原稿)が必要になることがあったんです。当時ギャグ漫画はパッと載せられるっていうことで「ちょっと描いてみない?」っていわれて描いたものが運良く載って。代原のギャグ漫画って大体、読者アンケートの最下位なんですけど、そうでもなかったらしくて、じゃあ増刊でもやってみようかと。
――そこから連載につながっていったんですね。やっぱり昔から漫画がお好きだったんですか?
昔から読んでましたね。と言っても、マニアックなのじゃなくて『ドラゴンボール』とか『スラムダンク』とか、みんなが普通に読んでるジャンプ作品が基本で。今の若い子は分からないですけど、あの時代って「ジャンプ」が話題の共通項だったじゃないですか。「水曜日のドラゴンボールが野球で中止になった」とか、「ナメック星の5分が長い」とか。
――同世代なので分かります(笑)。影響を受けた漫画家さんや漫画作品ってありますか?
ギャグ漫画で言うと、やっぱり『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』のうすた京介先生がすごく衝撃でした。『マサルさん』より前に描かれた読み切りを読んで「この人、面白い漫画描くなあ」って。「ジャンプ」みたいな少年誌のギャグって、それまではコメディ要素が強かったんですね。青年誌ではネタ要素の強い作品もあったんですけど、あんなにネタ要素の強いギャグ漫画を「ジャンプ」でやるっていうのが斬新というか。それまでコミックスでギャグ漫画って買わなかったんですけど、『マサルさん』からはギャグ漫画を買うようになりました。
そこから先の直接的な影響だと『幕張』の木多康昭先生ですかね。『いぬまる』を始めるときに、うすた先生が『ピューと吹く! ジャガー』を連載されてたんで、その方向性でぶつかっちゃうと跳ね返されて絶対に勝てないし、別の方向性ということで、どちらかと言うと木多先生の方向だったかもしれないですね。あと、絵やギャグのテンポなら「ヤングキング」で連載されていた吉本蜂矢先生の『デビューマン』にすごく影響を受けてます。
――漫画以外の作品ではどうですか?
ヒットした映画なんかは大体見るようにしてます。小説だと、ホラー作家の小林泰三さんの作品は毎回ビックリするオチになってて、構成の参考になりますね。ホラーなのに1ページ目に答えがあったりとか。
――最近読まれた中で、おすすめの漫画ってありますか?
最近でもないんですけど、森田まさのり先生の漫画が好きで、今だと『べしゃり暮らし』とか。あとドラマにもなった『宇宙を駆けるよだか』の川端志季先生の作品も好きですね。
「面白かったね」で終わらない方法
――なるほど。そして、いよいよ最後に「リコピンのこれから」についてお聞きしたいのですが、どんな感じに展開していくんでしょう?
「講談社見学」回もそうなんですけど、SNSで話題になってもそこで止まっちゃって、それがきっかけでみんなが『リコピン』を読みだすようになるとか、コミックスがすごく売れるとか、そういうわけでもないんですよ。
――えっ、そうなんですか。
人生をかけて今までで一番面白いネタが描けたとしても「面白かったね」っていわれて終わっちゃう気がする。だからたぶん、根本的にやり方を変えないとダメなんじゃないかなって最近は思いますね。普通だったら新キャラが出てくるとかなんでしょうけど、『リコピン』はそうじゃないと思うんで。
――やり方を変える、ですか……。
例えば、海外のクリエイターズトイの世界だと、まずキャラクターのフィギュアを出して、そこから人気が出てきて漫画化するとかあるんですよ。『リコピン』も最初に企画してた段階では、キャラ先行でもいいんじゃないかって思ったんです。「ジャンプ」だけじゃなくて、「週刊ヤングジャンプ」とか「週刊プレイボーイ」「non-no」みたいな女性誌にも1ページずつ載って、「何かこのキャラ最近よく見るよね」っていわれたら、「漫画が面白い」じゃなくても勝ちだなっていう。
だから、もうちょっとリコピンのグッズとか出してほしいんですけどね。サンリオみたいにグッズから入って「こんなのあるんだ」っていう。マンガを読んでキャラを好きになってもらってから、そのキャラグッズを買ってくださいっていうのが「ジャンプ」のやり方だと思うんですけど、その逆でやってほしいんですよ。僕は漫画を描くことしかできないんで。
――今日先生が持って来られたリコピンのぬいぐるみみたいなグッズがもっと増えるといいですよね。ちなみに、これって売ってないんですか?
これは読者プレゼント用に100体くらい作ったんですよ。
――(ぬいぐるみを触りながら)これ、すごくよくできてるじゃないですか。普通に買いたいんですけど、市販する予定ってないんですか?
今メルカリとかで何万円にもなってて貴重なんですよ。(中路氏に向かって)市販してくださいよ。
(※中路氏、特にリアクションなし)
――では、今後の展開っていうのはストーリーにとどまらず、キャラグッズを含めたもっと広いものを考えておられるということですね。
「いちおう漫画もあるよ」って言うか、どっちかって言うと「漫画はもう別にいい」みたいな。好きな人には漫画を読んでほしいですけど、LINEのスタンプとかサンリオ的な売れ方をしてほしいです。
――いいですね。リコピングッズをどんどん広げて、まんまとやられる人を増やしていきましょう(笑)。最後に、本当に毎度ベタな締めで恐縮なんですが、『リコピン』の読者、そしてねとらぼ読者のみなさんにひと言お願いします。
今日はわざわざこんな汚いところ(※集英社)にお越しいただいて、僕のような、かわいいだけが取り柄の漫画家にインタビューしていただきありがとうございました。
そうだ、いつか、ねとらぼさんの編集部も見学させてください!
――それはぜひ!
さすがに今日明日とかではないですけど、忘れたころに伺わせていただきます!
――では、いつかねとらぼ編集部が漫画になるのを楽しみにしてます!
関連記事
- 集英社というか大石浩二が暴挙 ジャンプ+『リコピン』の出版社見学回に「攻めすぎ」とネット噴飯
よくある“マンガ作りの現場をレポートする回”かと思いきや……? - 全作完結済み! 「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい!2019
虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ! 第96回は、毎年恒例の特別企画。2018年の発表作からUK大おすすめのマンガベスト5を紹介。 - “心霊現象起こりまくりの実家”でおばあちゃんが地縛霊になったら ちょっぴりホラーなエッセイ漫画「霊感一家のふしぎな実話」インタビュー
信じるか信じないかはあなた次第です……けど、どういう生活になるんですか、その家。 - 「お姉ちゃんはブサイクだね」は愛情表現? エッセイ漫画「自分の顔が嫌すぎて、整形に行った話」インタビュー(1)
「こういう記憶って大人になっても忘れられないんだな」。 - 「のび太は植物状態」など都市伝説化している“ドラえもん最終回” 本物のエピソード知ってる?
ググるといろいろ出てくるけど、どのエピソードが本物なの?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
-
「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
-
「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
-
餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
-
毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
-
「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
-
放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
-
脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
-
父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
- 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
- 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
- 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
- コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
- 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」