黄金銃を持つ教官、号泣高速実習、チャラ男と鳥人間コンテスト……忘れられない合宿免許の思い出(1/2 ページ)

普段なら出会わないような人に会う、それが合宿免許。

» 2019年10月03日 20時00分 公開
[しげるねとらぼ]

 大学生のころ、合宿で運転免許を取りに行ったことがある。鳥取の、行ったことがないような場所の自動車学校だが、とにかく値段が安い。「やろう」ということになり、同じサークルの1学年上の先輩とタメの友達とおれという、全員オタクのしょっぱいパーティで計画を立てた。

合宿免許 今回のお題は「合宿免許」

オタクとチャラ男の共同生活、開幕……!

 当時は、実写映画版のトランスフォーマーが公開されたタイミングだった。だから、我々オタクはカバンにパンパンにトランスフォーマー(と、ついでにゲームボーイアドバンスと名作「ワリオランド」も)を詰め込み、「どうせ向こうではヒマだろうし、みんなでトランスフォーマーで遊ぼうぜ〜」とキャッキャしながらバスで移動した。道中、田舎によくある巨大なラブホの看板に遭遇、ホテルの名前が「ホテル アパッチトマホーク」だったところで「フヒ……アパッチとトマホークって、湾岸戦争かよ……」とスケベな笑いを漏らしたりもした。バカである

 で、自動車学校の合宿所に到着する。合宿所は6人が1部屋に収まるルール。というわけで、おれたちの他に3人の生徒が同室になる。どうせ皆大学生だから似たり寄ったりだろ……そう考えていた我らオタク3人の前に現れたのは、絵に描いて額に入れたようにチャラい、茶髪で細いジーパンを身につけ、先っちょのとんがった靴を履いた3人組だった。我々は一気に無言になった。

 ろくろく挨拶もせず、特に我々の希望を聞いたりはしないで勝手に各々の場所を取り始めるチャラ男3人組。話題といえばバイトと合コンとドルチェ&ガッバーナの話だけ。大声で「は〜マジダリぃ〜!」「帰りてェ〜!」「てかドルガバ買いてェ〜!」と雄叫びをあげ、夜になれば我々が存在しないかのように大声で地元の彼女と携帯で話す。自分たちと全く生存エリアが違うであろうチャラ男集団に、我々オタク3人は完全におじけ付いた。出発前には「トランスフォーマーで遊ぼうぜ〜!」「ゲームもしちゃおうぜ〜!」「おっ、ワリオランド! 名作ですな〜!」なんて、あんなに楽しくおしゃべりしていたのに……。現地に到着してみれば、トランスフォーマーをカバンから出すタイミングすら全くつかめない。チャラ男集団の前でデストロン軍団を変形させて遊ぶほどの度胸は、当時の我々にはなかった。

黄金銃を持つ教官

 しかし、泣こうが喚こうが教習は進む。というか、なんとしてでも早く教習を終わらせて、このチャラ男ルームから脱出したい。だいたい、周囲に何もなさすぎて、教習以外にやることがない。合宿所の周囲には飲食店はおろかコンビニすらないので、晩飯は学校から合宿所までマイクロバスで帰る途中スーパーに寄り、食べたいものを各自買って帰るという生活スタイルである。あまりに食事にレパートリーがなさすぎて、途中から「カップ焼きそばを2つ買って帰り、ブレンドして食ってどの組み合わせが一番おいしいか探る」というハイカロリーな遊びに熱中したほどだった。エースコックの大盛りいか焼きそばと日清焼きそば(UFOとかじゃなくてオーソドックスなやつの方)の組み合わせが一番うまかった記憶がある。

 そんな教習ばかりの生活の中で、おれは担当の教官と多少親しくなった。聞けば、教官はちょっとしたガンマニアで、家にはエアガンやモデルガンの類も何丁かあるという。「へえ〜、今度見せてくださいよ〜」とおれは適当に相づちを打った。

 そしたらあくる日、教習が終わったところで教官が手招きする。なんだろうと行ってみると、「昨日言ってた拳銃、持ってきたんだよ〜!」と、自分の車のトランクの方に回り込む。「え、ほんとですか!」と言うおれ(鉄砲が見られてちょっとうれしい)の前に現れたのは、金色のオートマグであった。

しげるの恋愛通信空手 金色のオートマグ(写真はイメージです)

 夕焼けに照らされた鳥取の教習所の駐車場で、車のトランクから姿を表す拳銃……。シチュエーション的には完全に銃器密売、しかも出てきたのは金色のオートマグという、絶妙にカルテルのボスっぽいチョイス。これもまた忘れられない教習所の思い出である。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」