子ども視点の「虐待体験VR動画」はどのように生まれたか プロジェクト代表者に思いを聞く

多くの反響があった動画の舞台裏とは。

» 2019年10月05日 11時00分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 子どもの目線で虐待をVR体験する動画のパイロット版が9月に公開され、話題になりました(関連記事)。動画再生は9万回を越え、多数の人から反響が寄せられています。動画を制作したWESTE & Co.(ウェスト アンド カンパニー)の代表、西江祐哉さんにお話を聞きました。


虐待体験VR 注目を集める虐待体験VR

VRを活用し「世の中の負を引き上げる」


虐待体験VR WESTE & Co.は映像やVRなどデジタルコンテンツを作る会社

 映像(VR向けも含む)の企画・制作、デジタルコンテンツの企画・開発などを行うWESTE & Co.を2019年1月に立ち上げた西江さん。「世の中の負を引き上げる」――いじめや虐待など、マイナスの状態にある人を、フラットな状態に引き上げるための活動をしたいという想いもあったといいます。これまでに培った映像制作のための技術やノウハウ、人材を生かして、児童虐待撲滅のためのプロジェクトをスタートしました。


虐待体験VR 貧困や格差など、さまざまな社会問題に関心があるといいます

 西江さんは、虐待事件に対する世間の意識を向上させるには疑似体験が効果的ではないかと考え、子ども視点のVRを作ることに。2018年に横浜市で起きた幼児虐待事件の詳細を独自に調べ、それをもとに動画のストーリーを構成しました。VR体験動画を、「周囲への意識付けによって生まれる『虐待への気づき』と、実際の虐待を見た際に声をかけたり、通報したりする『勇気』が得られるコンテンツにしたい」と西江さんは話します。


虐待体験VR 最新の映像技術を、虐待防止への意識向上につなげたい

あの「トラウマ級」の動画はどうやって生まれたのか

 実際に動画のパイロット版を見ると、母親役や父親役の表情やセリフに圧倒されます。また、父親のいら立ちに追い詰められた母親が徐々に暴力的になり、最後には積極的に虐待するようになったり、虐待者が気まぐれに優しい声をかけたり、微笑みかけたりするなどディテールの細かさも感じられました。


虐待体験VR ピリピリと緊張感が高まっていきます

 演じているのは劇団などに所属しているプロの俳優さん。「パワーポイントで作った絵コンテを演者さんに一度だけ読み込んでもらい、あとは自由に演技をしてもらいました」(西江さん)。細かく演技をつけず、俳優さんの特徴や技量を信頼したことで、動画の「リアルな恐怖感」が生まれたそうです。


虐待体験VR フレンドリーに話しかけてきたと思ったら……

反響とプロジェクトの今後

 虐待の様子を迫力満点に再現した動画にはたくさんの反響がありました。「VRの普及率は全体の3%と言われているので、本コンテンツをVRとして視聴した人は多くないことが予想されます」と西江さんは語っていますが、YouTubeには多くのコメントが書きこまれ、虐待防止に取り組んでいる人から「本当にうれしかった」というメールが送られてきたそうです。

 「本プロジェクトにあたっては、とても注意深く進める必要があると感じています」と西江さん。今後は賛否あった意見を取り入れつつ改良を加えていきたいと語っていました。さまざまな角度からの声を生かしながら、虐待防止につながる、さらに意義のあるコンテンツへの成長が期待されます。

パイロット版児童虐待体験VR

(谷町邦子 FacebookTwitter

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」