「やる夫スレ」の傑作4編が書籍になるようです 今再び脚光浴びる「やる夫」、企画者に意図を聞いた(2/4 ページ)

» 2019年10月11日 11時00分 公開
[福田瑠千代ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

いのしし 僕も、どうやってコンタクト取るんだ? って半信半疑でした(笑)。

カミチ 血眼になって連絡方法を探しました。そんな中、あるサイトの投稿フォームから事実そのままに「書籍化したい作品があるんですけど、どうやって作者本人に連絡とれますかね……」と相談してみたら「そもそもあなたは本物のKADOKAWAの社員ですか?」って疑われたり(笑)。

――おつらい……。

カミチ でも、丁寧に本名と社名付きで連絡を入れたらとても良い方で、その方にいろいろな作法といいますか、こういう感じで連絡すると良いですよとご教示いただきました。作家さんによっては個人サイトの投稿フォームがあったりして、そこからやはり個別連絡をしてみた感じです。

「やる夫スレ」から「小説」へ

――連絡は手探りかつ地道な作業だったんですね。しかし作者を見つけたとしても、スレと小説では表現がかなり違うと思うのですが、その編の翻案はスムーズにいきましたか?

カミチ 大変失礼ですが、最初は小説が書けるのか、半信半疑でした。そこでまず、それぞれ1章分くらいを文章にしてほしいとお願いしてみました。すると、みなさん書けてしまったんですよね。

いのしし 何年も創作を続けられてる方って言うのはクリエイターとして「強い」なと、今回あらためて思いました。お金がもらえるわけではないのに5年、10年と地道に連載をして、そこに付いてきている読者がいてという環境を経験してきている人たちなので。

カミチ よくよく考えてみると、やる夫スレ界隈って、その道に詳しい方なんかも集まっていらっしゃるじゃないですか。面白さがきちんと伝わらなければ、途中で淘汰されてしまうはずで、文章力がある方々の作品が生き残っていたのだなと。

いのしし 読者の反応も、スレだと鋭い意見がより参照されて、議論の土台になったりしますよね。スレ民はその議論を踏まえて読んでいくので、手軽に深い読解ができてしまう。さらに作者もそれを踏まえて続きを書きますから、すごい相乗効果が生まれるんだと思うんです。

――やる夫スレでは二次創作要素も大きな特徴です。二次創作まわりは翻案する際、特に難しかったのでは?

カミチ そこは作品を選ぶ際に、そもそもオリジナルの小説に落とし込めるかを考えながら選定していきました。

いのしし 『アキトはカードを引くようです』(編注:やる夫スレ版は「やる夫はカードを引くようです」)なんて、僕が読んでいたときはスレ版でちょうど某超有名キャラが登場して盛り上がっていたところだったので、「書籍化するには○○出版さんにキャラの使用許可取ってこないといけないのか……?」って、頭が真っ白になりましたよ。


カミチ 当然それはできませんから(笑)。あくまでもオリジナル作品として作り直す作業は必要でした。

――「やる夫はカードを引くようです」は特に既存キャラが大量に登場するので、「一体どうやって小説化するんだ?」と、ファンもSNSでざわついてました。

カミチ スレ版だと、知っているキャラが活躍するから楽しいという部分も確実にありますよね。でも物語を分解していくとオリジナリティーが詰まっていて、二次創作以外の部分もめちゃくちゃ面白い作品です。川田両悟先生はバトル描写が抜群にうまく、小説ではスレ版とはまた違った展開も盛り込みつつ再構築してくれてます。

――皆さん小説を書かれた経験はあったんでしょうか?

カミチ 『朝比奈若葉と○○な彼氏』(編注:やる夫スレ版は「翠星石と白饅頭な彼氏」)の間孝史先生は、もともと小説賞への投稿歴もあった方で、青春小説的な、詩的できれいな文体でした。『クレイジー・キッチン』の荻原数馬先生も「カクヨム」で作品を発表されていて、ギャグセンスが突き抜けてましたね。


いのしし 僕は『君は死ねない灰かぶりの魔女』(編注:やる夫スレ版は「白頭と灰かぶりの魔女」)を担当したんですが、ハイヌミ先生は大量のキャラの処理がとてもうまかったです。やる夫スレだと既存キャラが出せるので、10人姉妹がドンっと一気に登場しても比較的簡単にさばけてしまうんですが……。

――確かに、キャラのプロフィールが事前に読者と共有できてますね。

いのしし キャラが20人も30人もいると、途中で誰が死んだかとか忘れてしまいますよね。「このキャラを立たせたい」というときに、口癖とかの小手先だとどうにもならないんです。そこはきちんとエピソードやモノローグの厚みを加えて、小説として面白く仕上げていただきました。


――「やる夫はカードを引くようです」と「白頭と灰かぶりの魔女」はスレ版がまだ連載中ですが、書籍版との兼ね合いはどうなっていくのでしょうか?

カミチ やる夫スレ版は別モノですので、基本的には著者さんにおまかせしてます。これまで趣味としてずっと続けてこられたものを、商業化するから終了してくださいというのも違うと思いますので。

いのしし ハイヌミ先生からは執筆中に、むしろ「早くスレを更新したいんです」って言われたりもしました(笑)。

カミチ 『カード』の川田先生もスレの更新にすごい使命感を持たれていて、本が出ることによって更新頻度が落ちるというのはできるだけ避けたいとおっしゃってました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  5. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  8. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  9. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
  10. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」