女々しい野郎どもの詩を歌っている暇はない「ハイスコアガール」15話 ハルオ、「ときメモ」で女心を学ぶの巻(1/2 ページ)

好きとか嫌いとか、誰が言い出したんだよほんと。

» 2019年10月19日 01時30分 公開
[たまごまごねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

ハイスコアガール (C)Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX

 ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育kった恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作アニメ。ゲームを愛した2人の少女と1人の少年の、エモーショナルな恋の物語。アニメ15話が10月19日に放送されました。

 15話は矢口春雄(ハルオ)が女の子の心を学ぶ回。人の気持ちはそう簡単にはわからぬもの、痛みとときめきを覚えて成長するしかない。


ハイスコアガール


ハルオ、「ときメモ」で女心のお勉強

 ハルオのまっすぐなところに惚れた、日高小春。しかし彼、まっすぐすぎてあまりにも女の子の心を考えない。先回の試合で、真剣勝負したのはよかったけれども、デリカシー皆無すぎました。

 今回は大野の姉のが押し付けてきた「ときめきメモリアル」で、女心を勉強することになります。いやまあやりたくてやってるわけじゃないんだけど、こういうところ彼は真面目で「大野のお姉さんのご厚意に応えねーとな…」と考えているらしい。


ハイスコアガール こんな中でギャルゲーやりたくない(6巻)

 ハルオは色恋沙汰に感心が極端にない少年。にぶい云々どころか、そもそも恋愛の存在すら知らないんじゃないかってくらい、興味を持っていない。特に大野との関係は周りから見たら誰しもが気づいているにも関わらず、本人にはなんの自覚もありません。

 「ときメモ」で恋愛を学ぶって無茶があるんですが、彼に必要なのは恋愛のテクニックではなく、ときめくという感情を受け入れることです。そういう意味では恋愛をシミュレーションする「ときメモ」は、まずは恋を意識する刺激としてありかもしれない。

 ただ、真、小春、お母さんと、ハルオと大野の仲をうっすら勘付いている人間に囲まれての「ときメモ」は地獄すぎる。

 「ときメモ」は1994年にPCエンジンSUPER CD-ROM2で発売された「恋愛シミュレーションゲーム」。最近「ギャルゲー」でくくるので、この言葉あんまり言わないかも。PS版は1995年発売です。当時は恋愛ゲーム自体がコンシューマーではほとんど発売されていなかった時期なので、非常に話題になりました。

 ゲームとしての難易度はかなり高いです。ステータスを上げながら人間関係を深めつつ、バランスをとって育んでいかなければいけない。ここにハルオが気付いてのめりこめればばよかったんですが、彼はどうも「女の子の気持ちを考える」という思考ルーチン自体がなかったようで、全くといっていいほど攻略できていない。

 真「女心は女の気持ちになって考えるのよ…わかる?」

 右も左も分からない園児を導いているかのようだ。お母さんも彼の真心のなさにはご立腹。


ハイスコアガール つらい(6巻)

 彼が攻略を目指していたのは、藤崎詩織。このゲーム最難関、かつ「一緒に帰って友達と噂とかされると、恥ずかしいし…。」という、プレイヤーの心をバキバキに折る辛辣な言葉で知られるラスボス的なヒロイン。初プレイのハルオに手が届くはずもない。

 藤崎詩織以外のヒロインが話しかけてきたとき、スルーするハルオ。それを見かねた小春が「あんまりそっけなくするのもどーかと思うよ」と、自分を重ねたかのような一言。ヘビーすぎる。

 でも小春は怒っていいんです。だって彼女が貸したプレステで、大野の気持ちを知るために「ときメモ」で女心を勉強するなんて、あんまりにも残酷の極み。むしろよく我慢してるよ。そういうとこだぞ、女心をわかってないのは。


ハイスコアガール 爆弾こわい(6巻)

 我慢し続けている(試合に負けたから強く言えないしね)小春にも、爆弾マークがつきました。これは『ときメモ』のネタで、ある程度みんなと交流を持っておかないと、嫉妬や嫌悪で不機嫌になってしまう寸前の状態をあらわすもの。爆弾が爆発すると、そのヒロインだけでなく周囲のみんなの評価が下がります(なおこれのおかげで『ボンバーガール』で藤崎詩織がプレイアブルキャラクターになりました)。

 だからプレイとしては、ある程度みんなに気を配りながら、お目当てのヒロインを目指さなければいけません。

 現実に置き換えると、相当器用な生き方だと思います。でもハルオはそういう人間じゃないです。ド正直のド直球な生き方しかしていません。今回もヒロインを藤崎詩織と決めたからには、藤崎詩織以外に全く目を向けない。

 一途なんです。ひいてはこれは、大野以外に思考がいかない彼らしい部分の反映でもあります。

 正直、こういう男の方が愛される気がする。「ときめき」は覚えたほうがいいけど、「恋愛テクニック」は彼の場合、そんなに勉強しなくてもいいのかもしれない。ソニックブームのようにまっすぐ生きているから、ハルオはいろいろな人に信頼されているんでしょう。


「おおのけクエスト」

 ハルオが大野のためのプレゼントとして考えたのが、「RPGツクール SUPER DANTE」で制作した世界で一つしかないゲームでした。タイトルは「おおのけクエスト」

 「RPGツクール SUPER DANTE」のスーパーファミコン版は1995年発売。自分で完全オリジナルなRPGが作れる自由度が人気を博し、今でもシリーズは人気です。スーパーファミコン版はPC版に比べると限界がありましたが、ハルオと大野はゲーム性に思いを馳せるタイプ。そのへんは十分伝わっています。


ハイスコアガール こんなんされたら惚れるしかないよ……(6巻) 掲載協力:RPGツクール(株式会社KADOKAWA エンターブレイン ブランドカンパニー) (C)1995 ASCII CORPORATION / (C)1995 空想科学

 先程は「ハルオは女心が分かっていない」と書きましたが、大野の喜ぶものはちゃんと分かっている。ゲームが作った絆があまりにも強い。

 大野の家の境遇を考え、一緒にゲームをやりたいという思いを伝え、待ってるぞと思いを滑り込ませる。彼からの告白のようなものです。恋愛とは別の、もっとシンプルで強い思い。


ハイスコアガール 萌美先生ですら気づいたぞ(6巻)

 萌美先生と大野の関係が決裂したとき、彼女はハルオの元を訪れました。ハルオはそのとき、萌美先生に大野をどう思っているか告げます。

 ハルオ「尊敬できる女で…一緒に遊びてぇなぁ〜って思わせて…」「俺が支えになれたらいいなぁ〜とか思ったりして…」

 四角四面な萌美先生ですら気づいたハルオの大野への気持ち。でもハルオは気づいていない。

 彼が女心より先に学ぶべきは、自分の心。これは『ときメモ』では学べない、難題だ。でもハルオは高校に入ってから『ときメモ』のステータス上げのように、自分を磨くことにも熱心でした。このページを見ると分かるように、彼は極めて真面目にアルバイトをしています。そのお金を家に入れ、ゲームはお金を節約するため遠くの50円ゲーセンまで行ってプレイ。高校入学前に、大野と同じ学校に行くため猛勉強したあたりから、彼の誠実さはしっかり磨かれ続けています。


今度は二人で


ハイスコアガール これがときめき(6巻)

 萌美先生の厳しさが揺らぎ(ここで以前お母さんが貸した傘が生きるのがあまりにもうまい)、2人でAOUショー(アーケードゲームの展示会)に行くことになったハルオと大野。突然の急接近です。電車の中ではどちらかというと大野視点で表現が進みます。

 もう大野の方は、ハルオに対してのはにかみが止まらないわけですよ。大野が電車で倒れ込んだとき、ハルオの手を握りしめます。彼に対しての絶対的信頼感があふれているシーンです。ハルオはまだ「一緒に遊びてぇ」「支えになれたらいいな」なのかもしれませんが、ちゃんと彼女の手を握り返している。


ハイスコアガール これはさすがに気付く(6巻)

 彼に入ったクリティカルヒットは、帰りの電車で見せられた、景品の指輪。小学生のころ変なゲーセンで取り、海外に行ったときに大野に手渡した思い出の品。ハルオの顔を見ると、しっかり覚えているようです。

 この寸前までそこまで真剣に考えていなかった大野の思いに、はっきり気づいた瞬間でした。


ハイスコアガール 言えたね(6巻)

 ハルオ「…今度 二人で行こうぜ ここ…」

 今までの会話の選択肢で絶対選ばなかったであろう発言を、ついにハルオが言った。大野を女の子だときちんと受け止め、女心を考えたシーンです。「ときメモ」が効果あるとは!


ハイスコアガール こんなこと言われたら泣いてしまいそうだ(6巻)

 今回は、真の言った発言が非常に印象的です。「ゲームってスゴイね ただ遊ぶだけじゃなくって… これだけ人との関係値が出来ちゃうんだもの」

 20世紀に「ゲームなんて」「たかがゲーム」と言われた人はかなり多いと思います。確かにただの娯楽なのは間違いない。でも人間関係を築くことはあるし、真剣にやったとき芽生える思いもたくさんある。『ハイスコアガール』はゲームを愛した人たちの思いを、肯定してくれます。




       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/25/news108.jpg 「ふざけてる」「作品を知らないのになぜ?」と怒りの声 マクドナルドと「HUNTER×HUNTER」コラボの“PR施策”が物議【台湾】
  2. /nl/articles/2410/26/news025.jpg 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた
  3. /nl/articles/2410/22/news162.jpg たった築8年で“ぶっ壊れた”マイホームのリアル おそろしい戸建て事情に「声出た」「我が家もそうでした」
  4. /nl/articles/2410/24/news052.jpg 大家に「好きにしていいよ」と言われて薄暗い部屋をDIY改装したら…… あまりの変貌に仰天「すっげえええ」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2410/25/news019.jpg 【今日の計算】「3+3÷3−3」を計算せよ
  6. /nl/articles/2410/13/news082.jpg 荒れ放題の“悪夢の庭”をたった1人で11時間掃除したら…… あっぱれすぎる働きぶりに「あなたはヒーロー」と称賛
  7. /nl/articles/2410/25/news207.jpg 一度も髪を切ったことがない女性が、髪をほどくと…… 美容師も驚がくのスーパーロングヘアに470万いいね「リアルラプンツェル!」【海外】
  8. /nl/articles/2410/26/news028.jpg 生後0日→1歳10カ月の赤ちゃん成長ビフォーアフターが衝撃の700万再生 それから2年たった現在は…… さらに驚く姿に反響
  9. /nl/articles/2410/26/news023.jpg 2歳娘が一時保育に行ってる隙に“空き巣”が…… まさかの正体に「留守を狙ったんですね」「かくほしちゃうぞ」
  10. /nl/articles/2410/23/news154.jpg 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫が、1年後…… まさかまさかの“現在”に「うわあ!よかったねえ!」「お幸せに」と100万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  3. 「Snow Man」の映像が中国で物議→公開停止 所属会社「歴史的事象に対する配慮に欠けた」と中国語と日本語で謝罪
  4. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  5. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  6. 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
  7. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  8. 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
  9. 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
  10. 飛行機で傷口が感染し「身体の一部を切除」 133万フォロワーの元アイドル「痛みで涙が止まらない」悲痛の現状報告
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声