男の子が女の子と付き合ったら何するかの正解ってあるのかな「ハイスコアガールII」16話 一触即発、恋の嵐(1/2 ページ)
大野と小春、再びの対峙。
ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作/アニメ)。ゲームを愛した2人の少女と1人の少年の、エモーショナルな恋の物語。
16話からはいよいよ「ハイスコアガールII」がスタート!(13〜15話はOVAという扱い) 大野晶、矢口春雄(ハルオ)、日高小春の本気の恋愛バトルが開始。3人の心のうねりがゲームとともに描かれ始めます。
まだ出会う前の日の思い出
前半は原作5巻に掲載されている、大野がまだハルオと出会っていない小学校時代から始まります。過去の彼女の抑圧と解放の様子を、アニメと漫画から追ってみます。
主に彼女を束縛していたのは業田萌美先生でした。バイオリン、ピアノ、茶道、生花、乗馬うんぬんかんぬん。総合格闘技まで習っていたというのだから、どうりでハルオに対して猛烈なパンチが飛ぶわけだ。
業田先生は初期を見ると、「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤーさん的な「厳しい先生」という立場のテンプレ的な女性。ギャグとしてはそのままポジションキャラとして見られるのですが、先のアニメの回で一気に変わりました。自分の理念で教えていたのに、間違っていたと気づいてヘコむ先生。彼女の思想と人間味が出ました。上のページを見るとわかるように、自分の人生の何もかもを注いで教えているのも事実です。
それでも、やっぱりやりすぎ。大野は耐えに耐えています。文句も言いません。
じいや「あそこはゲームセンターという場所でございます ご興味がおありの様子ですが近づいてはなりません きらびやかな外観とは裏腹に あそこは不良の巣窟でございます 低俗な人間同士が些細な事で小競り合い 卑猥で暴力的なゲームの数々が立ち並んでいるのです」
まだゲームを知らなかったころ、ゲーセンを見つめる大野に対してのじいやの発言。散々な言い方に見えるかもしれません。でも当時ゲーセンに通っていた人なら「間違ってない」と思うはず。今と比べようもないくらい、汚くてギスギスしていました。ケンカもあったし、タバコの灰は散らばっているし、卑猥な麻雀も並んでおりました。脱衣麻雀があるアングラさが、子供の心をチクチク刺激したものです。
この「不良」発言が、大野の印象に残っていたんでしょう。
勉強と縛り続けられる日々、優等生であり続けることが当たり前じゃないといけない人生。彼女が逸脱するには、ゲームセンターに行くしかない。気になって仕方ない、禁止された場所に入るなんて、大冒険。
家を飛び出し、「いい子」を捨てた大野がゲーセンで見たのは、暴力的でへんてこなゲームの数々と、ガチで喧嘩をする人々、そして本気がぶつかりあう格闘ゲーム「ストリートファイターII」でした。ここが全ての始まりです。
正直な話、小学生の女の子が90年代のゲーセンに行くってなったら、親や先生ならまず止めますよ。一回百円と高額ですし、どんな人間がいるか分からないし、タバコ臭いし。ただ大野は、自分の日々の苦しさからの自由と、全てを注いで楽しめる快感を覚えました。あと脱衣麻雀をクリアして裸を見る腕前も身につけてました(1巻より)。
一方でハルオは学校では成績が悪く、みんなから見下げられっぱなし。けれども彼は、ゲーセンで勝てば英雄になれる(気がする)。当時のへんてこな世界観の中で暴れて鬱憤(うっぷん)を解消しているうちに、ゲームへの愛情はどんどん深くなりました。
小学生時代から、共通項であるゲームへの2人の愛情は変わりません。ただ、大野は自らを理解し、追いかけ、共に歩んでくれる存在として、ハルオのことを真っすぐに見つめるようになりはじめました。彼女の心の解放が、ハルオにありました。
「大野はゲームとハルオどっちに興味があるか」なんて聞いてはいけない。どっちも欠かせない、両方あってこそです。高校生になっても、小学生時代にもらったゲーセンの景品の指輪を、ネックレスにして大事にしている。たまに見ては微笑んでいる。そこにあるのは、ハルオとゲーセン、両方の大切な思いです。
『ハイスコアガール』では、恋愛でどうするべきなのかの問いが出てきますが、ヒントはこのシーンに詰まっていると思います。
女子と付き合ったら何をすれば正解?
ハルオといつも一緒に遊んでいる友人の宮尾光太郎。ものすごくよい子です。ハルオが大野のことを好きだというのをちゃんと見抜いた上で、彼の背中を真剣に押してあげようとしています。そのためのおぜん立てを全力でしてあげています。2人のためにものすごく献身的です。
彼はハルオのことを思って言います。「次会ったら男と大野さんが付き合ってたらどーすんだ?」
読者・視聴者はハルオ目線で見ているので「大野に限ると、それはありえないな…」という感想になると思います。でも宮尾のような思考になるのは、男子高校生なら当然でしょう。
宮尾の優しさは、いわば「一般的」な恋愛の視点です。何も間違っていません。でも「正しい」のかといわれると違います。大野とハルオの関係を、「こうあるべき」な平均の恋愛の流れにあわせることはできません。
ハルオ「お前は女子と付き合ったら何すんだ?」
彼のこの発言は、心からの素朴なものだと思います。なんせ「ときメモ」やるまで恋愛のれの字も意識してない男。と同時に、彼は大野に対して素で接することが当たり前になっていたから、「普通は付き合ったら何をするべきか」なんて想像もしたことがない。
いわゆるデートをして、いわゆるイチャイチャをして、いわゆるエッチなことをして。なるほど幸せかもしれない。でもそれは「一般的な幸せ」で、「ハルオと大野の幸せ」とは限らない。
恋愛を分かっていないハルオなりに、「自分たちに大切なもの」はぼんやり分かっているように見えます。大野が昔の、何の価値もない、でも2人しか知らない思い出の指輪を大切にしているの、見ちゃってますもの。
対して、小春の気持ちはとんと分かっていないハルオ。彼女のイライラや悲しみを察することができない。そこか、その差なのか。誰もが(小春すらも)、大野のことばっかり考えて、と言ってしまうのもムリはない。
この回での小春は少々横暴で、思いっきりビンタするなどかなりトゲトゲしい。でも彼女のどうにもならない境遇や、ハルオの鈍感さを考えると、ムリもない。見る度に悲しい状況が重なり続ける小春、見ていてかなりしんどい。
地獄の始まり
ハルオの部屋に、大野と小春が一緒に入ってしまったから大変。ここからが地獄の始まり。
大野の姉の真(画面左上)は、小春とは知り合い。一緒にハルオの『ときメモ』プレイを部屋で見ていました。ハルオに対しての小春の恋心のことは、知りません。
宮尾は、大野とハルオの関係も、小春がハルオに告白したのも、知っています。何言っても地雷なのを知っている、一番この中で悲惨な状態の子。ぶっちゃけハルオよりも客観的に、全てを知っているというのが、立場的に厳しい。
ハルオ、大野、真、宮尾、小春。五人の思いが交錯します。にしても「気づいちゃった」真と宮尾の冷や汗ダラダラっぷりが尋常じゃない。誰もしゃべれない。なおハルオはことの重大さを分かっておらず、のんきに菓子を食っていました。この時のお姉ちゃんの様子が、今までになくムズムズしていてかわいらしいので必見。
一触即発、格ゲーでゲージを満タンまで溜めた状態で向き合っている状況よりも恐ろしい。どうなる大野。どうする小春。気付けハルオ。続く次回。
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