迫力満点 京都・大将軍商店街の妖怪パレードが“ガチ”すぎると話題 誕生の背景を聞いた

100体を越える妖怪を目撃する一夜……。

» 2019年10月31日 19時00分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 夜の街を歩く妖怪パレードの写真が、「雰囲気ある」「幻想的」「実際に見てみたい」と話題になっています。これは大人も圧倒される迫力……!

 フォトグラファーの矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さんが「本物志向」「大人の方が楽しめるかも」「泣き叫ぶ子供もおります」とパレードの写真を投稿。“本物”が混ざっていても気づかなそうな本格的な仮装パレードの様子は、Twitterで10万件を超える「いいね」を集めました。

 パレードの正体は、大将軍商店街(京都市上京区)を妖怪の仮装で練り歩く「一条百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)」。2019年は10月19日に開催されました。


一条百鬼夜行 夜の大将軍商店街を妖怪に扮して練り歩く(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)


一条百鬼夜行 「見越し入道」子どもじゃなくても、夜遭ったら泣いてしまいそう(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)


一条百鬼夜行 「本当に人間入ってる?」と思うほど精巧な造り(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)


一条百鬼夜行 なんとも言えない表情の「鬼女」(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)

 このユニークなイベントは、いったいどんなきっかけで行われるようになったのか。そして百鬼夜行だけに、妖怪は100体いるのか。大将軍商店街「一条妖怪ストリート」のプロデューサーであり、嵯峨美術大学の専任講師でもある河野隼也(こうのじゅんや)さんにお話を聞きました。


一条百鬼夜行 たぶん人間(のはず)! プロデューサーの河野隼也さん(画像提供:大将軍商店街、以下同)

はじまりは商店街のピンチから

 「一条百鬼夜行」が行われる大将軍商店街は、およそ400メートルにわたって商店が並び、市内北西部の商業地として発展してきました。しかし近くに大きなスーパーマーケットができてから、客足が遠のいてしまったそうです。

 商店街の人たちは危機感を持ち、商店街にある食堂に通う歴史に詳しい常連さんの「かつて、大将軍商店街を通る一条通りで、百鬼夜行という妖怪の大行列が行われていた」という言葉を頼りに、「妖怪ストリート」と銘打って、商店街の活性化を図ります。そして2005年、商店街にある大将軍神社の秋祭りの前夜祭で、「妖怪仮装行列」をすることに決めました。


一条百鬼夜行 古くなって捨てられた道具が、人間を恨み妖怪化

 「当時、僕は嵯峨美術大学の学生で、町おこしの取材のため大将軍商店街を訪れたのですが、商店街の人から話を聞くうちに、スタッフとして参加することになりました」(河野さん)

 子どもの頃から妖怪好きだった河野さんは大学の後輩を30人集め、妖怪の衣装やお面を制作。当日は妖怪の仮装をして歩きました。 


一条百鬼夜行 京都の一条通りを歩く、百鬼夜行に

100人を越え、増え続ける参加者

 妖怪仮装行列は第1回目から大盛況。メディアに取り上げられ話題となりました。翌年の2回目から「一条百鬼夜行」という名前になり、2008年の第4回目からは嵯峨美術大学の学生だけでなく、一般の人も仮装行列に参加できるように。2009年からは妖怪をテーマにしたアートフリーマーケット「モノノケ市」も開催されるようになりました。


一条百鬼夜行 知名度や人気の高まりで、公募制が始まった2008年。

 「回を重ねるごとに『私たちも参加したい』という人が増えていったので公募制にしました。第5回(2009年)から参加者は100人を超えました。第15回の今年は約130人です」(河野さん)


一条百鬼夜行 マスコットキャラクター「夜行童子」。百鬼夜行を復活させるべく暗躍しているという

ド迫力の百鬼夜行はこうしてできた!

 さて、子どもが泣くほど迫力のある百鬼夜行の仮装行列はどのようにつくられたのでしょうか。

 「一条百鬼夜行は室町時代にできた『付喪絵巻(つくもえまき)』という物語をモデルにしているので、もともとの古風なイメージを大事にしたいと思いました」(河野さん)


一条百鬼夜行 妖怪サークル「百妖箱」は、お面や衣装の製作、仮装行列でも大活躍

 一般参加者はアニメのコスプレ風の仮装が多い傾向なので、行列の雰囲気を統一するため、2008年に河野さんが立ちあげた嵯峨美術大学の妖怪サークル「百妖箱」のメンバーが、伝統的なスタイルの妖怪の仮装で参加し、全体のバランスを取っているとのこと。「百妖箱」はお面や衣装も製作しています。


一条百鬼夜行 行列全体の雰囲気に統一感を持たせるため、参加者は事前に「妖怪度審査」を受けるそうです

 また、「百鬼夜行」だけに参加者は100人以上になるようにしていて、定員は120人。「百妖箱」のメンバーで人数を調整しているのだそうです。


一条百鬼夜行 「百妖箱」が手掛けた衣装

長く参加し続ける人、他府県から駆けつける人

 「一条百鬼夜行」に参加するのは「百妖箱」の他、立命館大学をはじめ関西の学生の和太鼓サークル「和太鼓ドン」のメンバーが演奏しながら参加者と一緒に歩きます。一般の参加者は大人が多く、親子で参加する人もいます。


一条百鬼夜行 歩く人も、見る人も百鬼夜行をエンジョイ!

 「小学生から参加していた大阪の子が、成長して大学生となり『百妖箱』のメンバーとして運営に携わってくれています」(河野さん)

 他府県の参加者もおり、2019年は「酒天童子の出身地」新潟県燕市から鬼の仮装で参加した人も。「実は9月の末、燕市で行われた『越後くがみ山酒呑童子行列』で『百妖箱』が作った衣装を使ってもらえたので、妖怪による町おこしのコラボになったんですよ」と河野さんは語ります。


一条百鬼夜行 今年(2019年)の参加者、勢ぞろい。右端に「酒呑童子行列」の赤いのぼりが

商店街の「ピンチ」とは……? 「一条百鬼夜行」は見られなくなるのか

 ところで、今年の「一条百鬼夜行」ポスターには「主催の大将軍商店街がピンチ」と書かれており、どのようなピンチに見舞われているのか気がかりです。果たして、今後も百鬼夜行は見られるのでしょうか。


一条百鬼夜行 「絶滅危惧種 百鬼夜行」! ただごとではない雰囲気がひしひしと伝わります

 「イベントの運営は商店街の負担が少なくなく、毎年赤字でした。今年から僕も商店街に『京都一条妖怪雑貨 百妖堂』(妖怪グッズショップ)を構えたのですが、商店街の一員として参加することで、より財政的な厳しさを実感するようになったんです」(河野さん)


一条百鬼夜行 募金で「一条百鬼夜行」をサポート! これからもずっと怖がらせてね

 そこで、2018年から行っていた募金を、ポスターでも呼びかけるなど本格化。おかげで2019年は赤字を回避できたといいます。2020年の「一条百鬼夜行」は10月17日に開催される予定。これからもずっと、たくさんの人を楽しませたり、怖がらせたりし続けてほしいです。

2014年の「一条百鬼夜行の様子」。お囃子が流れ、妖怪たちが動きます!

(谷町邦子 FacebookTwitter

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2505/15/news022.jpg 「子供泣くぞこれ」 トーマスの塗り絵、描き始めて2秒で…… “予想を超えた変貌ぶり”に反響「夢に出てきそう……」「ヒィィ…!!」
  2. /nl/articles/2505/15/news034.jpg ショウガを土に埋めて水やりすると……「すごすぎる!!」 想像もつかなかった、とんでもない状態に37万再生
  3. /nl/articles/2505/16/news151.jpg 90キロ超女性、「仰天ダイエット」きっかけがなかやまきんに君だった! “45キロ減”の別人すぎる姿&本人降臨で大反響「ドギャーンと変わるのすげぇ」「めっちゃ美人」
  4. /nl/articles/2505/16/news116.jpg マクドナルド、ハッピーセット新おもちゃ発売日に“早朝から行列” 一部店舗で混雑・混乱も 「すぐ売り切れちゃいそう」と不安の声
  5. /nl/articles/2505/16/news144.jpg 生前動画に「前よりかなり痩せられて」……“SixTONESとも共演”人気医師、3月に死去していた 闘病中に明言「必ず復帰して診療続ける」
  6. /nl/articles/2505/13/news020.jpg 小5のときに描いた絵→4年後…… 「ねぇ何があったん?」「鳥肌立った」中3になって描いた絵が160万再生
  7. /nl/articles/2505/15/news025.jpg のどかな釣り場に現れた“妙に風格のある”おばあちゃん→釣り上げた“とんでもないヤツ”に仰天「本当におばあか?」
  8. /nl/articles/2505/15/news032.jpg ぬいぐるみと眠る子犬→4年後…… 同じポーズで撮影した“現在の姿”に驚き「キャー」「大きくなっても可愛い」
  9. /nl/articles/2505/11/news004.jpg 小学生女子3人のお泊まり会、母が用意したのは…… 圧巻の朝ご飯が「こんな友達のお母さん羨ましい」と326万再生
  10. /nl/articles/2505/16/news043.jpg 「こ、これは便利」 セリアで買った“万能すぎる皿”に反響続出 「一家に一皿欲しい」「発想すばらしい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 急性骨髄性白血病で闘病中だったVTuber、死去 「復帰を目指して闘病」 専門学校の講師としても活動
  2. 万博の“着物ショー”に天皇陛下だけ許される「装束」登場で物議…… 「深くお詫び」主催者謝罪
  3. 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」 投稿者に話を聞いた
  4. 大人なら解けないと恥ずかしい? 「(1/8)−(1/8)」を計算せよ!【算数クイズ】
  5. 「女の子みたいな顔だね」と言われ続けた男の子、20歳になったら→「神がかってる」姿に驚がく 「人体の不思議」「オーラが凄い」
  6. 使わなくなったカラーボックス→“ずぼらシンママ”が簡単DIYしたら…… 天才的な仕上がりに「かしこーい!!」「これ作ってみよう」
  7. クリスマスに出会ったギャルとギャル男が21年後…… 誰も予想できない現在に「素直に凄い」「人に歴史あり」と称賛の声
  8. カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収
  9. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「待ってました!」 人気作の登場に混乱の懸念も「すぐ売り切れそう」「初週ヤバいぞ」
  10. お隣さんから丸見えの土地→巨大ウッドフェンスを7日かけてDIYしたら…… 雰囲気ガラリで「すごい大作ですね」「ワクワクした」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  2. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  3. 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
  4. 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
  5. 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫、1年後の姿に「泣いた」と大反響 それからどうなった?現在の様子を聞いた
  6. 100万円の“錦鯉”を自宅の池に入れたら…… 「おかしいでしょ」3日後、まさかの事態に「鯉は難しい…」「信用が大切ですね」
  7. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  8. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  9. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  10. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」