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» 2019年11月01日 20時30分 公開

水平思考(ねとらぼ出張版):『岩田さん』という本のこと、永田泰大という編集者のこと (1/2)

かつてファミ通に「風のように永田」という編集者がいたことを覚えていますか。

[hamatsu,ねとらぼ]

 ブログ「色々水平思考」のhamatsuさんによる不定期コラム第4回。今回は7月にほぼ日から出版され、ベストセラーを記録している『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』についての文章をお届けします。

 任天堂の元社長・岩田聡さんが、糸井重里さんや永田泰大さんといったほぼ日メンバーに語った言葉を集めた同書。同じゲームクリエイターでもあるhamatsuさんはどう受け取ったのか。ほぼ日のサイトではちょうど、同書の半分にあたる第一章、第二章、第三章が無料公開中。こちらの記事と併せてぜひどうぞ。


岩田さん 『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』(撮影:hamatsu)

ライター:hamatsu

hamatsu プロフィール

某ゲーム会社勤務のゲーム開発者。ブログ「枯れた知識の水平思考」「色々水平思考」の執筆者。 ゲームというメディアにしかなしえない「面白さ」について日々考えてます。
Twitter:@hamatsu



永田泰大と『ゲームの話をしよう』のこと

 永田泰大という人物をご存じだろうか。

 現在、ほぼ日社の取締役であり、ほぼ日刊イトイ新聞の編集部長を務める彼は、かつて週刊ファミ通で編集者をしており、週刊ファミ通誌上で「ゲームの話をしよう」という連載をしていた人物でもある。

 「ゲームの話をしよう」という連載は、注目タイトルをリリースしたクリエイターにインタビューするなど、いかにもゲーム雑誌らしい回もあれば、同僚の編集者とゲームにまつわるユルいトークをしたかと思えば、小学生を相手に小学校でのゲーム事情を聞いてみたりと、ファミ通誌上でも一風変わった存在感を放っていた。

 かつては隔週の刊行だったファミ通が週刊ファミ通になり、掲載する情報にスピード感や鮮度が求められ、時間をかけた特集記事がなりを潜めるという流れにあらがうかのように、その連載はユルい雰囲気を常にまといつつ、普遍的かつ本質的な「ゲームの話」を展開していた。

 そう、この連載が優れていたのは、ゲーム業界の「トレンド」を追いかけることにとどまらない、単なる情報として消費されるだけではない「スタンダード」な話をし続けていた点にある。だからこそこの連載は書籍化され、第3集まで刊行されるに至ったのだろう。

 そして、この連載の書籍版第1集には3人の人物が登場する。その人物とは、宮本茂糸井重里、そして当時まだHAL研究所の社長だった岩田聡である。


岩田さん 『ゲームの話をしよう』(撮影:hamatsu)

 「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の発売前、発売後の二度に渡って登場し、生き生きと歴史的傑作が誕生する過程の話をする宮本さん。書籍版特別ゲストとして登場し、濃密なクリエイティブにまつわる話を展開する糸井さん。そして当時はまだイロモノ扱いされていたニンテンドウ64版「大乱闘スマッシュブラザーズ」の評価を少しでも正当なものにしようと、連載史上初めて自分から登場を希望し、まだ当時HAL研究所社員だった桜井政博さんとともに開発裏話を惜しみなく開陳する岩田さん。この3人と永田さんの間で交わされる「ゲームの話」は今読んでも面白い。他にも面白い箇所はたくさんあるが(小学生にインタビューする回なんか本当に秀逸!)、第1集における白眉といえるインタビューはこの3氏のものではないかと思う。

 ファミ通編集者時代の永田さんの岩田さんとの交流については、ファミ通.comでの下記インタビューなんかを読むといいだろう(関連記事:『岩田さん』編集担当・永田泰大インタビュー。岩田聡のこと、『MOTHER』のこと、糸井重里のこと、あとファミ通のことを聞く)。



 『ゲームの話をしよう』という書籍は、私にとってゲームにまつわる書籍ではベストの一冊であり、刊行されて以来擦り切れるほどに読み返した本だ。そしてこの度、永田さんが編集、構成を担当し、宮本さん、糸井さん、岩田さんの3氏の発言をまとめた書籍が刊行された。

 それが『岩田さん』という本である。

 私にとってこの『岩田さん』という本は、永田泰大、宮本茂、糸井重里、岩田聡という黄金メンバーによって構成される、19年ぶりの新作なのである。


岩田さんがいなくなり、任天堂はどうなったか

 任天堂の元社長、岩田さんが亡くなり、4年の年月が流れた。


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