「メギド72」オリエンス弱体化は「不具合」か「下方修正」か 運営は「詫び石配布」ではなく何をすべきだったのかモバクソ畑でつかまえて

モバクソゲーサークル「それいゆ」発起人、怪しい隣人さんによるスマホゲームコラム。今回は「メギド72」のオリエンス弱体化騒動を振り返ります。

» 2019年12月03日 22時15分 公開
[怪しい隣人ねとらぼ]

 先週11月26日、2周年を前にさまざまなイベントをこれから盛り上げていこうというメギド72公式から一つの発表があり、ネットでは大変な騒ぎとなりました。一体何が起こり、それについて私自身がどう思ったのか、それについて書かせていただきたいと思います。


ライター:怪しい隣人

モバクソ畑でつかまえて

出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。



この1カ月間、「メギド72」に起こっていたこと

 まず11月26日、オリエンスというキャラクターの「不具合」についてゲーム内にて発表がありました。オリエンスは10月31日に「バレットアーツ」という新しい戦闘スタイルを目玉として実装されたメギド(キャラクターのこと)です。実装の時点で大変強いと評判があったメギドだったのですが、その強さが不具合によるもの(※)であったということになってしまいました。

※編注:さまざまな効果を持ったバレット(銃弾)を消費することで、最大10回まで攻撃できるのが特徴。しかし、本来は1回の攻撃につき1種類ずつのバレット効果が発動するはずが、いざ使ってみると「全部の攻撃に全部のバレットの効果が適用される」という仕様で、例えば5種類のバレットを同時に使った場合、5種類全部の効果が乗ったバレットで5回攻撃できてしまっていた


メギド72 オリエンス オリエンス(公式ポータルサイトより)


 そんな状況なので「不具合ではなく下方修正」と否定的に捉えるユーザーもいました。リリース直後に「これはまずい」と即対応がなされたのであればともかく、すぐ次のガチャで同じくバレットアーツを使うメギド「フォカロル」が実装されていたからです。加えて、オリエンスと同時期にイベントで配布されたバレットアーツ使い(アガレス)も存在し、ユーザーはすぐに「これらを組み合わせるとこんなことができる!」と検証(※1)、その状態が1カ月近くも続いていたわけです。

 中にはその強さに違和感を覚える人もいたようですが、特に公式からのアナウンスもない状況では「これが当たり前なのか」と思っても仕方のないことでしょう。それが突然「修正します」といわれては納得行かない人も多かったようで、ネット各所や公式掲示板では大騒ぎになっていました(※2)。

※編注1:フォカロルとアガレスについては「全部の効果が乗る」不具合はなかったももの、バレットを生成するスキルを持ち、組み合わせることでオリエンスを強力にサポートすることができた

※編注2:単に性能ダウンに怒っていただけでなく、ガチャを引いた後で性能を下げられてしまうと、景品表示法の「優良誤認」にあたる可能性もある


メギド72 オリエンス 公式掲示板に投稿された意見の一部(修正発表直後の公式掲示板

 次に、11月28日に公式サイトで、この件についてのプロデューサーレターが発表されました。これは、上記のゲーム内発表でネットに起こった騒ぎを受けての沈静化のためと思われます。内容はなぜ1カ月もこの問題が放置されていたのかについての説明だったのですが、乱暴にまとめるなら「チーム内の連携が取れていない」「2周年を前に他の仕事に忙殺されていた」というものでした。

◆なぜここまで発覚に時間がかかったのか

この件については、率直に気づけていませんでした。
通常、リリース後の不具合の検知は普段は、主に下記のパターンが多いです。
1:お客様からいただくご意見やお問い合わせ
2:スタッフのプレイでの発見
3:ネットでの話題

(中略)

タイミング的には2周年に向けた施策に集中しており、DeNA側もメディア・ビジョン側も作業に追われていました。
私でいうと、公開生放送の準備、2周年施策諸々確認、TVCM制作、生コロシアムイベント、CDの準備、コンサート企画、その他社内業務…などなど。
各スタッフもいつもより多くの業務を抱えている時期でした。そのため、細かな資料作成ができなかったり、オリエンス実装時点で、さらに先に実装されるメギドたちを同時に編成した動作確認が間に合わないなどが発生しておりました。

(中略)

ただ、ここの経緯は、怠慢だと言われれば、弁解できないと思います。
本当に申し訳ありません。

プロデューサーレターより)




 最後に公式Twitterから、ガチャで消費した魔宝石の返還と、大量の魔宝石配布が発表されました。当初は「説明が不明瞭だった件について100石、オリエンスやフォカロルを持っていたらそれぞれ200石」という少量のものだったのですが、最終的にはお詫びが5000石(10連ガチャ3回強、約1万円弱相当)、オリエンスとフォカロルのガチャに投入された石は全て返却、というものになりました。11月30日に石は配布され、同時に現在のガチャからオリエンスは排出されない状態になっています。


メギド72 オリエンス 帰ってきた石とお詫びの石

メギド72 オリエンス 1万円で5600石の価値。ガチャは10連で1500石消費します

 なお、プロデューサーレターがどれだけ慌てて書かれたものかは、「お詫びの量は価値で納得してもらうのではなく、今後のことも考え通常の範囲を選択しました」という記述からも想像できます。1万円相当の石をプレイヤー全員に配布するというのが通常の範囲なのでしょうか。また、書きかけのままアップロードされてしまったと思われるスクリーンショットを投稿しているユーザーもおり、よほど急いでいたというのがよく分かります。



 また、これは私の形成しているTLだけかもしれませんが、上記のプロデューサーレターのトラブル状況を見て「自分が会社でトラブルを起こしたときを思い出した」というユーザーが複数見受けられたのが印象的です。私もインフラエンジニアとして、サーバトラブルで接続不能になっているゲームを見ると胃を痛めることが多いのですが、それと似たような現象がもっと普遍的な形で見られたのは他のゲームにはない現象でした。

 また、熱心なファンの中には「こんなに石を配ってサービスが終了したりはしないか」や「配布された分だけ石を買って運営を支えないと」という人も出てきていました。これもまた驚きの現象です。過去さまざまなゲームでのトラブルを見てきましたが、トラブルに対して運営に声援を送るだけではなく「運営が損をしている」という判断で行動する人がいるのは印象的でした。

 私自身はオリエンスガチャを回しても入手はできていません。なので使用感などについてはコメントできないのですが「不具合」であり「下方修正」と言いたくない理由はよく分かります。「間違った設計から生まれた間違った仕様書をもとに間違った実装がなされた」というのは、たとえ正しい動作が発案者の脳内にしかなくても「思っていた動作と違う」なので「不具合」なんです。「なんか想像していたよりも強いなこれ、弱めよう」という思想に至ってようやく下方修正だと思います。もちろん、ユーザーから見て「俺の手持ちのメギドの攻撃力が下がるんだから下方修正だろう」となるのもよく分かるお話です。


メギド72 オリエンス 過去のイベント紹介であまりにタイムリーに登場したオリエンス

本当に必要なのは「再発防止策」

 ですが、今回のトラブルを収めるための施策には大変不満があります。

 処理としてはメギドプレイヤーだけではなく、周辺の大部分の人も満足する方法だと思います。「石をくれ」と公式に突撃していた人たちは満足して黙るわけですし、これから新規に始める人は思わぬ余得がついてきます。そして「石が増えたのでガチャをただで回せる」というプレイヤーもいれば、さらにそこから課金を積んで欲しいメギド入手にチャレンジする人もいるでしょう。

 しかし今回の対応では「支払ったお金が帰ってくる」わけではありません。となると、例えば「こんな修正をする運営は信用できない、もう辞めるので最低限オリエンスに払ったカネだけでも返してくれ」という人は幸せになれないでしょう。やる気のないゲームの石を山と積まれても意味はないわけです。

 大量の詫び石をこれからプレイする人間にも配布する、という後処理は「アナザーエデン」のガチャ不正操作問題(関連記事)や、「ドラゴンボール ドッカンバトル」のガシャ表示不具合問題(関連記事)などがあります。アナザーエデンについては「ガチャの確率操作」という処理を行っていながらも、結果的には現在も運営を続けています。これらを考えると「こういう処理をするとユーザーは静かになる」という良くない事例集が積み重なっているように思えるため、根本的に「このような問題が二度と起こらないようにするには」という議論も必要ではないかと思います。

 今回のメギドの件については、プロデューサーレターや他の発表には再発防止策などが一切ありません。ものすごく慌てて書いていたというのは想像できる文章なので、そこら辺が抜けているのは仕方ないとは思いますが、「忙しいのが原因」で問題が発生したのであればこれからもこの流れはズルズル続いていくのではないかと不安になってしまいます。今回の問題は「取りあえず終了したもの」かもしれません。ですが、今後を考えると「これからもどうするべきか語り続けられるべきもの」ではないかと考えています。近々2周年を迎えるメギド72が3周年、4周年と続いていくためにも、今後のことを長期的に考えてほしい。そう思いました。


【12月6日16時追記】

 プロデューサーレターが更新され、詳細な再発防止策が発表されました。内容を高く評価するとともに、今後運営がこれを実践できるのか見守りたいと思います。ですが返金希望者への対応ができていないことに変わりはありません。返金についてはメギド72だけの問題ではないので、今後も考え続けなければならないと考えています。



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