【レポ漫画】外国人漫画家が日本でデビューする難易度が高かった話(1/2 ページ)

テラスハウスやスピリッツで活躍するペッペさんと担当編集の豆野さんに取材しました。

» 2019年12月10日 21時00分 公開
[カエルDX, 高橋史彦ねとらぼ]
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ペッペ ミンゴ レポ漫画

 アニメの影響でアウトドアが趣味になったオタク、カエルDXがいろんなところを巡るコーナーです。今回は『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載中の漫画『ミンゴ イタリア人がみんなモテると思うなよ』の作者ペッペ(Twitter/Instagram)さんを取材しました。ペッペさんはイタリア出身。日本の漫画やアニメが好きで、大学卒業後に片道チケットで来日し、モデルとして働きながら漫画を描き続け、2019年9月から「テラスハウス」出演、10月に漫画家デビューという異色の経歴の持ち主です。

カエルDX プロフィール

関西出身のオタク。自身をカエルのキャラクター「カエルDX」に投影したレポート漫画を描く。LINEスタンプ「カエルDX」シリーズが人気。2019年12月24日発売の『きららフォワード』に読切「観音寺睡蓮の苦悩」が掲載される

ペッペ ミンゴ レポ漫画
ペッペ ミンゴ レポ漫画
ペッペ ミンゴ レポ漫画
ペッペ ミンゴ レポ漫画

外国人漫画家のデビューは予想外に大変

 日本で暮らす外国人は2019年6月末時点で282万9416人(出入国在留管理庁調べ)。東京都の20代では18万3542人と、約10人に1人を占めます。そして、その大半の人々が一定期間ごとにビザの手続をしており、また就労に制限が設けられています。

 イタリア出身のペッペさんもデビューするにあたって、実は漫画を描くこと以前に「ビザの申請」が大変だったといいます。具体的にどのような手順が必要なのでしょうか。「スピリッツでの連載に至った経緯」「日本で漫画を描く理由」などとあわせてご覧ください。

(取材・文/ねとらぼ編集部 高橋史彦


画像 ペッペさん

自称漫画家はアーティストビザを取得できない

――デビューまでの準備が大変だったそうですね。

担当編集・豆野: 連載が決まってからいろいろ課題が出たんですよ。「アシスタントに入って練習しないとデビューできない」とか。それで西炯子先生のアシスタントになってもらって、その間にビザの申請をしていました。職業・漫画家はアーティストビザ(在留資格:芸術)というもので、ペッペがモデル時代にとっていたビザとは種類が違う。在留資格と別の仕事をするためには「資格外活動許可申請」を出す必要があって……。

【資格外活動】日本に在留する日本国籍を持っていない人は、入管法に定められた在留資格をもって在留する取り決めがある。許可なく資格以外の活動を行うと不法就労と受け取られる。是正勧告をスルーしていると場合によっては強制送還される。就労に制限がない在留資格は、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つ。

――ややこしい。

豆野: 当初はモデルを続けながら、漫画家を資格外活動でやろうと。そうしたら「正業は漫画家なんですよね、じゃあアーティストビザで申請してください」と変更を迫られて。どっちが副業なのかを役所は考えるんです。

――なるほど。

豆野: 漫画家といっても「自称漫画家」じゃアーティストビザは取得できない。だから、先に「賞を獲っている」という実績と、連載にあたって「原稿料○○円払う」という契約書を作って、それを証拠として提出しました。確実な収入があるかがチェックされるわけです。

――実績のない人が「これから漫画家やりたい」と思っても無理なわけですよね。

豆野: だめでしょうね。

――別の仕事でビザを取って、それやりながら持ち込みなりして成果がでたら切り替える。漫画家になるには最初の壁がヤバいですね……。


ペッペ ミンゴ モデル時代の経験が描かれている『ミンゴ』。

ビザの手続きは長蛇の列

豆野: アーティストビザは連載が決まったから申請できました。それがなかったら……って感じですね。あと入国管理局に直接申請しに行くんですけど、すごく混むんですよ。

ペッペ: 人が多すぎて、あんまりいい香りがしない……。しかも品川のめっちゃ遠いところにある。駅からバス乗らなきゃいけない。

【めっちゃ遠いところ】東京出入国在留管理局品川本局は、品川駅港南口のバス停から約10分。歩くと25分はかかる。申請受付は9時~16時。8時半から番号札が配布される。

豆野: ペッペから「朝8時15分に待ち合わせよう」と言われて、そんな早く? と思ったけど、現地に着いたら80人待ち。その後は300人とかの行列になって。これがもう毎日なんですよ。

ペッペ: うん、大変だね。

豆野: 書類1つ不備があったら帰されるし、申請してから待つ時間も長いし、「外国人ウェルカム」と言っててあれは……。何回も行きたくない所だよね。

ペッペ: 受け取るときも、また並ばなければいけない。

【受け取るとき】ビザの発給は申請内容に問題がない場合は最速で5営業日ほど。通知書が届いたら、申請者本人、または代理人が結果を受け取りに行く。なお、内容に疑義があったり、混雑状況などで発給まで1カ月以上かかることもある。

――どのくらいの頻度で手続きするんですか。

豆野: 今回は1年のビザが取れたから年1度。在留期限は受け取るときじゃないと分からない。申請は3年でしていました。

【1年のビザ】アーティストビザの在留期限は3カ月、1年、3年、5年の4種類。

ペッペ: 期限が来たら更新しなきゃいけない。結婚の配偶ビザは3年から切り替えるときに永住ビザへの申込みができるけど、他のビザは1年、3年、5年と切り替えていって、合計10年以上住まないと申請できない。

――漫画じゃないところでそんなに大変なんですね。日本国籍持ってないというだけで……。

豆野: 次のビザの申請は来年だけど、さっき言った「資格外活動許可申請」もあるから、例えばテラスハウスに出演するとなったらその申請をしなきゃいけない。

ペッペ: 私のパスポートに「テラスハウス」と書いてある

――(爆笑)。

豆野: 他にもテレビに出るときは……(略)。法務と一緒に勉強して、ビザにはだいぶ詳しくなりました。申請の準備から無事終わるまでには半年くらいかかりました。

ペッペ: ありがとうございます。

――ところで現役の外国人漫画家はとても少ないように思うのですが、何か理由があるんですか?

豆野: 応募が少ないですね。持ち込みはたまにあって、スピリッツだと中国語を話せる編集が中国籍の作家を担当してたりしますが、なかなか難しいですね。でもビザの取り方は分かったので、うちは外国人フレンドリーな編集部として頑張ります。連載が決まればビザの申請はできる!

【外国人漫画家】『ORIGIN』『Dr.STONE』のBoichiさん(韓国)、『群青のマグメル』の第年秒さん(中国)、『晒し愛』の新堂エルさん(米国)――商業誌で活躍している作家はあまり多くない。

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