「刃牙さんとジルベールは似ている」 BL愛好家が「刃牙」シリーズの魅力をプレゼンするイベントの“圧”が強かった話(1/2 ページ)
ッッ!?
『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ』の刊行を記念して、ボーイズラブ研究家の金田淳子さんが 人気格闘マンガ『グラップラー刃牙』シリーズの魅力をプレゼンするイベントが2019年12月5日に東京・下北沢「本屋B&B」で開催されました。
『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ』(通称『ばきろく』)はボーイズラブ研究家の金田淳子さんの初単著。昨年夏まで『刃牙』シリーズ未読だった金田さんですが、何気なく最初の数冊を読んだことによって、「濃厚なボーイズラブなのでは?」「乙女の必読書なのでは?」という想念が止まらなくなり、『刃牙』への熱い想い、熱いおじやが溢れ出すままに、noteで刃牙愛をつづっていきました。この感想シリーズを元に、秋田書店の協力を得て、河出書房新社から刊行されたのが本書。ボーイズラブ格闘家(グラップラー)と『刃牙』の真剣勝負、殺し愛の記録をつづった奇書です。
イベントでは、書籍での語りと同様、金田さんが「刃牙=BL」説を熱弁する展開に。登壇者も来場者も“圧”に心を動かされた様子をレポートします。
百聞は一見にしかず 百見は一触にしかず
登壇したのは金田淳子さん、福田里香さん(お菓子研究家)、三角絞めさん(覆面ブロガー)の3人。
『グラップラー刃牙』全選手入場シーンにちなんだコールとともに入場。「『三角絞めでつかまえて』こそが映画ブログの代名詞だ!! まさかこの男がきてくれるとはッッ 覆面ブロガー三角絞め!!」「全作品のベスト・カップリングは私の中にある!! お菓子とマンガの神様が来たッ 福田里香!!」「ボーイズラブは実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦BL!! 日本から金田淳子の登場だ!!!」――とコールがかかると、会場から拍手が湧き上がりました。
金田さんと刃牙の出会いは約1年ほど前、あるWebコミックサイトで『刃牙』シリーズの一部が無料試し読みキャンペーンをしていたのがきっかけ。その9冊(『グラップラー刃牙』1〜3巻、『バキ』1〜3巻、『範馬刃牙』1〜3巻)の中には、主人公の範馬刃牙が何かにつけて男を誘惑する場面や、他の男性キャラクターが男を誘惑する場面、男が男を執拗につけ狙う場面があったといいます(金田談)。そんな数々の場面を目撃した金田さんは、『刃牙』はBL(ボーイズラブ)作品なのではないか?と感じたとのこと。
『刃牙』といえば1991年から続く人気格闘マンガ。記者ももちろん知ってはいますが、格闘マンガとしてしか読んだことがありませんでした。BL……?
ここから怒涛(どとう)のプレゼンがスタート。『刃牙』のBLなシーンとして金田さんが挙げたのは、『グラップラー刃牙』第1話、刃牙が空手団体「神心会」会長・愚地独歩から突然のパンチを受け、独歩の拳の先に「CHU(ハートマーク)」とキスをするくだり。
「ありがとうという気持ちでいっぱいになった、素晴らしすぎる第1話ですね。最初に『刃牙』を読んだときに一番度肝を抜かれた場面で、『続きを読まなければならない』と思いました。キスされた独歩も特に驚いてはおらず、『よくあること』的なリアクションをしているのもよい。少年マンガとしてはかなり不思議な世界観だと思うんですが、『だが、それがいい』と思いました」(金田)
続けておもむろに「刃牙さんグラビア集」(お気に入りの単行本表紙と扉絵)を紹介。
「作中の内容とは全く関係なく、刃牙さんが水の中などに入りシズル感を出している」「刃牙さんは美少女」「『バキ道』の2巻があまりにもアイドルマンガ」(金田)
金田さんが“アイドルマンガ”と評した『バキ道』2巻については、三角締めさんから「これは相撲の立合いです」と冷静なツッコミが入る一場面も。しかし金田さんのプレゼンに影響を受けた福田さんから「あきらかに胸の谷間を寄せるポーズ。これが相撲だったらグラビアアイドルが全員、四股(しこ)を踏んでいることになる」という意見が出るなど、“格闘マンガの視点”からの鑑賞のほうが、むしろ土俵際まで追い詰められていきました。
(注)立合い…相撲において、両力士が蹲踞(そんきょ)の姿勢から立ち上がって取組を開始する瞬間のこと。
こうして“目覚めた”視点から見ていくと、刃牙の父親範馬勇次郎の「闘いはSEX以上のコミュニケーションだ」「アンタとヤリたかった」という発言は“刃牙BL論”を補強するかのようです。
「範馬勇次郎は強い男が好きなんですよ。よく分からないけど『強ェェ男には芳香(かお)りがある』と言い出す。13歳の刃牙さんと戦ったときにも、『世界中探したって、これだけの芳香(ほうこう)にはそう出遭えるものじゃない』『オレの好きな芳香(かお)りだ』と言う。強い男たちが集まっている場に、勇次郎はいつも『いい芳香(かお)りだ』って言いながら入ってくるんですね」(金田)
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