署名、公開質問状、調査、そしてオリジナル声優復帰へ “映画版の声優が芸能人問題”を乗り越えた「シンプソンズファンクラブ」12年間の記録:連載「オタクの幸せ」(2/2 ページ)
なぜオリジナル声優復帰が叶ったのか
映画版でのオリジナル声優復帰が叶ったことについて、現在ファンクラブの会長を務めるピンクドーナツさんは「怒りの感情で配給会社に抗議するのではなく、芸能人声優版とは別にオリジナル声優版を製作上映することで得られる現実的な利益を示しながらオリジナル声優版シンプソンズの劇場上映を提案するなど、シンプソンズのファンらしく理性的な話し合いによる解決を目指したことでしょうか」と振り返ります。
「ザ・シンプソンズ」との出会いは意外にもゲームセンターだったというピンクドーナツさん。KONAMIのゲーム「ザ・シンプソンズ」をプレイした際に「この黄色いキャラクターはなんだ?」と心を惹かれ、2000年代に放送された飲料のCMで「日本語吹替版」の存在を知り、その不思議な魅力に夢中になりました。
一人暮らし用の部屋探しを行った際も「『ザ・シンプソンズ』が視聴できるよう衛星放送が入ること」を最優先にしたと振り返り、「昔はものすごく面白いテレビ番組という存在でしたが、ファンクラブの活動をきっかけに現実の世界でも1000人以上のファンや日本語吹替版の声優さんなどと出会えるなど奇跡のような出来事をもたらしてくれた、自分にとって『ザ・シンプソンズ』はかけがえのない存在です」と作品愛を明かしました。
またDVD版制作の報告を受けた際には、「不可能だと思われていた『(僕らにとって)本物のシンプソンズファミリーが帰ってきた!』と感激の極みでした。大平透さんからは『(芸能人声優の起用により)もうホーマーを演じないつもりでいたけれど、熱烈なファンの声があったから復帰を決意した』と伺い、『誰かが何とかしてくれる』と他人任せにせず自ら抗議活動に参加してよかったと思いました」と当時を振り返ります。
またファンクラブブログにて日本語吹替版エピソードガイドの作成など、運営の中枢を担うゲッツさんは当時について「声優変更問題についてはmixiやネット上でかなり話題になっていたことに加え、一城みゆ希さんが2007年10月30日付けのブログで『色々ご心配を頂きました皆様のシンプソンズファミリーは、皆様方の熱い思いが届き、再び私たち家族をスプリングフィールドの家に戻して下さいました』『どの様に感謝をしたら良いでしょう、本当に、本当に有り難う御座います! 皆様方のお陰で本日ザ・シンプソンズ ムービーのビデオ・DVDの収録を開始する事が出来ました』と触れてくださったことも影響し、大盛り上がりでした。大平さん本人からの熱いメッセージの数々にも心が揺さぶられ、まるで『ザ・シンプソンズ MOVIE』のラストシーンのような大団円でした」と懐古。
ゲッツさんと同じくエピソードガイドの作成などに取り組むviewbooさんは、「幼少期から親しんできたアメリカのアニメへの、良くも悪くも自分の中で固定していた印象を、更新してくれたアニメが『ザ・シンプソンズ』です」と話し、「放映開始から30年もの間愛され、そしてこれからも世界中で支持され続けるシリーズだと思います。ファンクラブを通じて多くの同好の士と、距離や年代、また社会的な位置づけなどとは関係なく、知り合えたのは本当に良かったです」と語りました。
延べ1000人以上のシンプソンズファンと交流
2008年から2013年まで計5回が開催された「シンプソンズファン感謝祭」では、第1回を劇場版「ザ・シンプソンズ MOVIE」の発売記念として開催したところ500人が集まったほか、第2回がDVDシーズン12発売記念で200人、第3回がDVDシーズン13発売記念と東日本大震災のチャリティーで100人、第4回がDVDシーズン14発売記念で100人、第5回が日本語吹替え復活祈願で50人が集まりました。
また感謝祭とは別にシンプソンズファン交流会も定期的に開催されており、これまでに通算1000人以上のファンがシンプソンズファンクラブを通じて交流を行ってきました。その年齢層は未就学児から社会人まで幅広く、職業もマスコミ関連や教職員、会社員などさまざまです。後編では2019年に開かれたファン交流会にお邪魔し、「声優さんにとってファンはどんな存在なのか」を伺ってきました。
連載:オタクの幸せ
この記事は、ねとらぼとYahoo!ニュースによる共同企画記事です。何が自分の幸せか、何をして喜ぶのか。幸せにはさまざまな形があり、周囲と同じものになるとは限りません。人生に悩む人も多い現代社会で、他人とはちょっと違うところに没頭し、我が道を行く「オタク」な人々に話を聞き、豊かな人生の歩き方を探ります。
(Kikka)
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