塩野瑛久に聞く「来世ではちゃんとします」撮影秘話 「大人たちがぼくの股間を前に真剣な表情をして」
“ハイスペックなのにSM趣味”のAくんを好演。
性をこじらせた男女たちが織りなすラブコメディーとして、SNS世代から絶大な支持を得ている、いつまちゃん原作の『来世ではちゃんとします』(グランドジャンプ連載)。「恋愛あるある」満載の同作が、5人のセフレを持つアラサー女子・桃江を主人公に、連続ドラマになりました。
1月の放送スタートを記念して、桃江のセフレ・Aくんを演じる塩野瑛久さんにインタビュー。ジュノン・スーパーボーイ・コンテストからキャリアをスタートし、昨年は映画「HiGH&LOW THE WORST」の小田島有剣役で、SNSでの人気が爆発した塩野さん。オファー時の心境から、話題となった「アレ」のシーンの制作秘話、2020年の目標まで聞いてきました。
こだわったのは「愛を出しすぎない」ライン
――性に奔放で5人のセフレがいるアラサー女子・桃江(内田理央)と、彼女のまわりの“こじらせた”人々を描くドラマ「来世ではちゃんとします」がスタートしました。オファーを受けたときの心境はいかがでしたか?
攻めてる作品だなあ、と思いましたね。「これ地上波でやっていいのかな?」と。事務所の大人たちがよく承諾したなあと感心しました。
――桃江の最愛のセフレ・Aくんは、なかなか一筋縄ではいかないキャラクターです。最初、どんな役と聞いたんですか?
それはもう、「ハイスペックな経歴で、良い企業に勤めていて、性癖がハードコアでSM趣味」と、そのまま聞きました!
――台本も拝見したのですが、そのまま「ハァハァ……(と息が荒くなる)」と書いてあるんですね。
おもしろいなと思いながら、演じています。
――昨年、話題をさらった「HiGH&LOW THE WORST」の小田島有剣について、「日常の自分の延長線上での役作り」をしたと以前のインタビュー(an・an2180号)で話していました。Aくんと塩野さんには、なにか共通点はあったのでしょうか?
「はっきりしているところ」にはとても共感しています。桃江を決して彼女にしないけど、他に彼女ができたら、うやむやにしたり、真実を曲げたりせずに、自分の口で「そういえば彼女できた」と言うのがAくん。その潔さには、ぼくも親近感を持てましたね。
役作りでこだわった点は、「愛を出しすぎない」ことですね。彼に桃江への愛があるのかないのか、なんとなくわからないラインを目指してます。ドライさ8割で演じてます。
――原作をベースにしつつも、セリフを言うときの表情だとか、キャラ同士の絡み方だとか、細かなやりとりに演出が効いていて、原作ファンとしてはそこも楽しく見ています。
「来世ちゃん」は各回で監督が違うので、回ごとにもテイストがあって、都度それぞれの監督と話しながらシーンを作っています。先日撮影した回では監督から「今回、キスから始まりたいんだけど」と提案されたのですが、そこは手前の回までに作ってきたAくん像とズレちゃうなと思い、キスはなしでお願いしました。
――ドライじゃなくなっちゃうってことですよね。
そうそう、そこまでのAくんは桃江に愛あるスキンシップをしてなかったんですよね。そこも踏まえてプレイで、だからこそ2人のやりとりがコメディタッチに見せられるなあと思っていて。なので、「実は、Aくんについてはこういうふうに考えて、こういうふうに思ってやっていたんです」とお話したところ、「ああ、そうか。じゃあ大丈夫。違うやりかたでやろう」と受け入れてもらえました。
――塩野さんの中に芯が通った「Aくん」像があるからこそ、ドラマ版「来世ちゃん」ができあがっているんですね。
そう見えないけど、実は◯◯なんです
――コメディながらドキッとする濡れ場も多い「来世ちゃん」。内田さん演じる桃江がセクシーだろうことは放送前から予想できていましたが、塩野さんのAくんも、想像以上の色香でした。
ドライさを重視しているので、色気もあんまり出してないつもりなんですけど……。最中もドライで、事後はもっとドライに、のつもりでした。ああ、でも髪が結構長いのを癖をいかしたスタイリングで短めに見せていて、それが濡れ場になると崩れて長く見えるので、そのギャップが影響しているかも?
――1話では、原作でも衝撃だった「緊縛した桃江にオムライスを食べさせる」シーンが忠実に再現されていました。撮影、大変じゃなかったですか?
あの日はすごく寒くて、それで撮影が大変でした。普通の服を着ていても、カットがかかったらすぐ上着を羽織らないといけないような寒さなのに、内田さんは縄がかかっているし、僕も僕で、ベッドシーンだから基本は脱いでいるわけですよ。だからもう、カットがかかるたびにベッドにずんって入らざるを得なくて。ベッドの中が一番あたたかいじゃないですか。「(内田さんと)2人でベッドに入りたい」という気持ちからではなく、とにかく寒さをしのぐために布団をかぶっていました(笑)。
――桃江のセフレという役柄上、基本は内田さんとの撮影だと思いますが、原作で好きなキャラクターはいますか?
全員が魅力的だなと思っていますが、なんとなく好きなのは、松田ですね。なんとなく。
――「なんとなく好き」、わかります。普段はクールながら、あらゆる女性をホイホイしてしまう魔性の男。しかし、男友だちの面倒見もよくて憎めない松田……。
あとは、梅ちゃんも好きですね。桃江とは正反対に、リアルな恋愛よりも趣味に夢中な梅ちゃんには、共感する女性も多いんじゃないでしょうか。実写での太田莉菜さん演じる梅ちゃんを見て、ぼくもなおさら好きになりました。
――桃江へのクールなツッコミと、BL妄想でニヤニヤしている様子のギャップ、最高ですよね。
絶妙ですよね。Aくんとカフェでばったりあって会話が続いたり……なんてシーンがあったらいいのに!
――どのキャラクターも、普段は一生懸命仕事に打ち込んでいるんだけど、私生活では「ダメ」なところがあって、そこが「来世ちゃん」の魅力です。塩野さんには、ダメなところはありますか?
結構あるんですよ。ちょうど昨日後輩と飲みに行ったんですけど、財布が見つからなくてずっとカバンの中をごそごそ探していたら、結局テーブルの上にあって恥ずかしかったですね。普段から忘れ物が多いです。後輩からもよく「もう本当に、塩野くんのこういう姿を世間にさらしたい!」と言われます(笑)。朝持っていった傘をぶじに持ち帰ることができたらお赤飯を炊きたくなるくらい。
――そこはAくんと違いますね。
たしかに。Aくんは、折りたたみ傘とか持ってそう!
2020年、演じたいのは「高校生」
――Aくんの「きっちり」感を出す上でこだわった部分はありますか?
スーツをただ着る上では、あまりアレンジはしようがないんですよね。ただ、例えばオムライスを作るときに、ネクタイをしているべきかしていないべきかとか、腕まくりはしているべきかしていないべきかとか、着崩しの細かいところは逐一、衣装さんや監督と相談していました。それと、Aくんを演じるうえで外せないのが……「股間」ですね。
――桃江とセフレのシーンには欠かせない、「股間」の表現。あれはどうやってるんですか?
衣装さんがタオルで作ってくれる「棒」がありまして、それを毎回入れています。映像というのは大変なもので、同じ棒でも、横から撮るのと、正面から撮るのと、ななめから撮るので、大きさが変わってくるわけですよ。大人たちがぼくの股間を前に真剣な表情をして、「あ、もうちょっと上」「もうちょっとそります」「いや、さっきのほうがいいね」「あ、じゃあもうちょっと立てます」ということを言い合うんです。すごく異様な光景!
――普通に生きていたら多分ないですね(笑)。これまでの作品でファンになった方にとっては「そんな、塩野さんが股間をアップに!?」と衝撃を受ける方もいるのかなと思うのですが。
ぼくはもともと、そういう役者です! それこそ、過去に裸で縛られるような役もありました。
――縛られる側から縛る側になったと。映画、テレビドラマ、ネット配信作品と、さまざまなフィールドで活躍している塩野さん。複数作品の撮影が並行することも多いと思うのですが、役と役はうまく切り替えられますか?
すんなり切り替えられるほうですね。脚本を書いている人が違えば、全然違うセリフまわしと世界観になっているので、セリフを読んでいるうちに切り替えられます。体型とか髪型とかはどうしても難しいですけど。
あと、役への向き合い方は、作品ごとのターゲットやニーズに合わせて変えています。たとえば「PRINCE OF LEGEND」シリーズなんかは、キュンキュンしてもらうだけじゃなくて、「振り切りすぎている面白さ」があるわけじゃないですか。そこは汲み取って、ぼくもとことんやろう! となる。役者さんによってもいろいろなスタイルがあると思いますが、ぼくは「この役はこう見られてほしい」とかなり意識して演じていますね。
――「来世ちゃん」はどんな人に観てほしいでしょうか。
誰でもどこかしら心当たりがある話だし、まわりに必ずいるだろう人たちの話だから、意外と全員好きなんじゃないかな。それを作品として、大人たちが大真面目に作っているので、世代を問わず、本当にいろいろな人に観てほしいですね。ただ、誰かと一緒に観るのは大変かもしれない(笑)。夜に一人でこっそり、一杯引っ掛けて観るのがいいかも。
――1月3日に25歳になった塩野さん。今後、演じたい役はありますか?
年齢的にぎりぎりで厳しいですが、高校生を演じたいです。ぼく、中卒で実家のクレープ屋で働きはじめて、高校に行かなかったので、高校生ライフへの憧れが強いんです。歳を重ねるごとに「無理かな?」と考えていて、今年はまだ高校生役のお話がないんですね。みなさん、ぜひお待ちしています!
――2020年の活躍も楽しみにしています!
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