漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』、映画化を機に修正 予告なしの“修正版”切り替えにファン騒然
小学館「より多くの方にお読みいただくために一部修正」。
水城せとなさんの漫画『窮鼠(きゅうそ)はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は2度跳ねる』が、“完全版”制作に合わせて“修正版”に予告なく切り替わり、ファンに衝撃が走っています。
『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は2度跳ねる』は2004年から連載が始まったレディースコミック。妻帯者の異性愛者サラリーマン・大伴恭一と、彼に思いを寄せる大学時代の後輩・今ヶ瀬渉という2人の男性の恋愛を描いたシリーズです。ボーイズラブ(BL)レーベルからの出版ではないものの、「JFY2009BLアワードコミック部門」「このBLがやばい2010年」で1位を獲得するなどBL好きから高く評価されています。6月には関ジャニ∞の大倉忠義さんと俳優の成田凌さんによる実写映画化も控えています。
作者の水城さんは1月28日、「『窮鼠はチーズの夢を見る・完全版(仮)』の発売と、<修正版>への全シリーズ移行のお知らせ」というタイトルでブログを更新。2冊を1冊にまとめた完全版が4月に発売されること、完全版は「多数の箇所にわたって、絵やセリフの加工・修正・削除といった措置がなされました」と修正が加わったと明かしました。
さらに単巻版(エントリ内では「オリジナル版」と表記)の『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は2度跳ねる』も修正版に切り替わったと発表。1月28日付で電子書籍は修正版に差しかわり、また紙版も「現在書店さん等に流通している紙の単行本が最後となり、電子版・紙の単行本、どちらも今後 <オリジナル版>が販売されることはもうありません」としています。
もともと同作は性的な描写を含んでいましたが、レーティングはなし。今回の修正の内容は、せりふの表現(ホモ→ゲイなど)や、性表現に対してのものが中心です。水城さんは「当初想定されていたよりもずっと若い年齢層の読者さんが購入してくださる可能性もあり、映画がR15指定のため、映画を見られない年齢の方が、そのかわりにコミックスを手に取ってくださるというケースも想定されます」と修正の意図を説明しています。
水城さんは「ストーリー自体に影響のあるような改訂ではありませんが、ちょっとした描写やセリフにも愛着を持ってくださっていた読者さんもいらっしゃったと思います。心苦しいですが、ご理解いただければと思います」「これまで長年お読みいただいた<オリジナル版>は、 今回をもって終売となります。何卒ご承知ください。すでにお手元にお持ちの方には、長く大切にしていただけたら嬉しいです」と結んでいます。
小学館「より多くの方にお読みいただくために一部修正」
事前の予告なく修正版に切り替わったことで、作品ファンからは戸惑いと悲しみの声が上がっています。また単巻版の紙の単行本も、「改訂版」などの表記なく書店に並べられるため、オリジナル版を探して買うことは難しそうです。
小学館の広報部を通じて第一コミック局に取材をしたところ、「本作(『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は2度跳ねる』)に関しましては、より多くの方にお読みいただくために一部修正をさせていただきました」とコメント。
1月28日に電子書籍版を修正版に差し替えたとのこと。「差し替え前(オリジナル版)の版を今後手に入れることはできないのか」という質問に対しては、「すでに書店にある紙の単行本については、差し替え前の版がある可能性がある。今後の版についてはコメントを差し控える」とし、修正版を作成した詳しい理由についても「コメントを差し控える」としました。
なおSNSでは、「1月28日以前に電子書籍版を購入しており再ダウンロードをした場合、電子書籍ストアによっては差し替え前バージョンを読めることもある」「バージョンを更新するかどうかのメッセージアラートが出る」といった声も上がっています。一方で、「再ダウンロードしたら切り替え後のものになってしまった」といった声も。
電子書籍を購入した際、ユーザーが得られるのは「利用権(アクセス権)」であり「所有権」ではありません。過去には、電子書籍ストアがサービス終了すると、「購入した本が消滅する」「買いなおししなければならない」といった問題が発生することがありました。今回の『窮鼠』シリーズの修正は、「購入した書籍の中身(内容)が無告知で変わりうる」という電子書籍の課題点を浮き彫りにしたといえるでしょう。
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