「車いすが健常者・二足歩行が障害者」の世界が体験できるレストランに行ってきた もう理不尽すぎて泣きたい(2/2 ページ)

» 2020年02月15日 16時00分 公開
[高橋ホイコねとらぼ]
前のページへ 1|2       

 食事を始めようとすると、オーナーが近づいてきました。テーブルの上にあるアルコールスプレーを指さし「これ、ちゃんと使えてますか?」と聞いてきます。何を聞かれているのか理解できない二足歩行者。戸惑いながら「大丈夫です」と答えるも、オーナーは「お手伝いしますよ。大変でしょ」とスプレーを手にプシュプシュしてくれます。「あ、どうも……」と接客された二足歩行者の方はあっけにとられていました。オーナーは、障害者である二足歩行者に過剰なほど気配りしてくれていたようです。

壁に貼られたパラリンピック選手の写真 パラリンピック選手がオリンピック並の扱いになる

部屋の外はふかふかの絨毯になっている ふかふかのじゅうたんは車いすには使いづらいので店内はツルツルの床

 食事中、突然スタッフが「中腰で食べてください」と声を張り上げます。二足歩行者たちは何を言われているのか理解できず、そのまま立って食事を続けます。すると、何回も何回も「できればかがんでいただけませんか?」と声かけされます。でも、なかなか中腰にはなりません。スタッフはだんだん切れ気味に。「全然、中腰になってくれない」とぼやき始めます。

 すると、オーナーが駆け付け、スタッフを裏に呼び出します。裏からオーナーの叱責が聞こえてきます。

オーナー:「対応が雑だよ。正直、僕だって来て欲しくないよ。でも、やんなきゃダメなんだよ。それが優しさだから。ちゃんとやってください、お願いします。対応が雑すぎます」

スタッフ:「(不満そうに)申し訳ございません」

 ぼうぜんと聞いているしかありません。この騒ぎのあと、オーナーが出てきて「料理いかがですか? 産地直送の玉ネギで……」と接客しに来てくれましたが、どんな顔をしたらいいものやら。

 他のスタッフが背後で「対応が雑っていっても、あんまり構えすぎてもさー」「っていうか、今日二足歩行者多くない?」「なんか、イベントでもあんのかなー」と愚痴をこぼしているのが聞こえてきました。モウ、ワタシ、カエリタイデス。

バリアフルレストラン店内の様子 ハード面より人の対応が苦しかった……


 いかがでしたでしょうか。この体験から感じることは人それぞれではないかと思います。教科書的な答えが示されるわけではないので、モヤモヤが残ります。

 “バリアフルレストラン”は公益財団法人日本ケアフィット共育機構が“チーム誰とも”という活動戦略の中で実施しています。事務局の佐藤氏は、バリアフルレストランの目的は「障害の社会モデルの考え方」を直感的に感じてもらうことにあるといいます。

 レストラン入店前に「車いすユーザーが暮らしやすい環境」を考えてもらいましたが、そこで何を考えたか思い返してみてください。「車いすに乗っていない人は今の生活のままで、そこに車いすユーザーに合流してもらおう」という発想に自然になっています。バリアフルレストランを立ち上げた理由は、このような無意識の偏りに気づいてもらいたいからなんだそうです。

バリアフルレストラン店内の様子 日本ケアフィット共育機構 佐藤雄一郎氏

 バリアフルレストランでは、車いすユーザーはなんの困りごともなく暮らしていました。それに対して、二足歩行者はいろんなことに障害を感じ、しいたげられた対応をされました。これを二足歩行者は障害があるから仕方がないと思えたでしょうか。

 バリアフルレストランでされた数々の対応は、車いすユーザーである寺田さんやスタッフ役の方々からすると、“車いすあるある”なんだそうです。少し大げさにはしたものの、似たような経験をしているのだそうです。

 このイベントは答えが提示される訳ではありません。まずは、無意識で起きている問題を認識し、誰もが、自分と違う人と共に生きる社会をどうやって作ったらいいのかを考え続けていくためのものだそうです。今回は、期間と参加者を限定したイベントでしたが、2020年秋には一般公開される予定です。

2020年秋公開予定のバリアフルレストラン・外観イメージ図 2020年秋公開予定のバリアフルレストランのイメージ(外観)

2020年秋公開予定のバリアフルレストラン・内観イメージ図 2020年秋公開予定のバリアフルレストランのイメージ(内観)

高橋ホイコ

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた