重量3.2キロ、総ページ数1328! 花嫁の欲望を解放させる最強の結婚ブートキャンプ『ゼクシィ』を、君は真面目に読んだことがあるか(2/2 ページ)
ゼクシィって4冊読んだら十分って自分で言ってるの、知ってました?
さて、ここからようやく雑誌を最初から読み始める。表2(表紙をめくった裏面のこと)の広告はカタログギフト形式の引き出物。なるほど、引き出物の広告という広告のジャンルがあるのか……と次のページをめくると、またしてもブライダルアイテムの通販専門店の広告。さらにめくってもまた広告。さすが、300円で売られている雑誌の広告の量は並ではない。
その次の目次(ページ数でいうと9ページ)を見て、またしてもおれは驚いた。そこには「ゼクシィは4冊読めば安心です」という見出しが書かれた、大きな囲みが載せられているのである。つまりゼクシィは「4カ月購読すればそれでお前を一人前の花嫁にしてやる」と言っているのだ。まさにブートキャンプ、海兵隊の訓練もかくやという言い切りである。
ゼクシィをちゃんと読んだことがなかったころ、おれはゼクシィについて「どの号を読んでも、書いてあることは一緒なんじゃないの?」と思っていた。この「4冊読めば大丈夫」という宣言は、ゼクシィ自身が「同じ内容が書いてあるけど、何か?」と開き直っているに等しい。
もちろんゼクシィの内容は、時期やトレンドに合わせてアップデートされているのだろう。だからこその「結婚するまでに4カ月だけ付き合ってくれれば、現時点で最新型の花嫁にしてやるし、恥ずかしくない結婚式をあげさせてやる」という宣言なのだ。ずっと買っても意味がない雑誌、それがゼクシィなのである。
この編集方針には衝撃を受けた。普通、世の中の雑誌というのは、読者になるべく長く書い続けてほしいと思って編集されている。例えば趣味の本であればその趣味をやっている間はずっと買ってほしいし、何らかの情報誌であっても、1冊買ってもらったら次の号も買いたくなるように作られている。だからこそ「連載」という形式が存在しているし、次回予告にわざわざページを割いたりするのだ。
しかし、ゼクシィはそうではない。読者の一生のうち、4冊だけ買えばそれでおしまいという雑誌である。
だからゼクシィの目次を見ても、編集部員の簡単な情報ページと囲みで構成されたニュースのページ、「BE IN LOVE WITH THE MOMENT」と題されたウエディングドレスなどファッションを紹介するページと、「What a Wonderful Wedding!」という全国のカップルの結婚式をレポートするページしか連載がない。しかも、これらは単に毎号掲載されているだけで内容的に大きな違いはなく、どの号から読んでも全く問題がない。
例えばいろんな有名人に結婚について聞きに行ったりするような連載もなく、結婚式場や指輪やエステなどの紹介(というか広告)以外は、特定のトピックを取り上げた単発の記事だけが掲載されている。普通の雑誌で言う「連載記事」が、目次を見る限り1328ページの中に1ページも存在していないのだ。当たり前といえば当たり前だが、連載がない雑誌という構造におれは衝撃を受けた。ゼクシィ、連載ないんだ……。
欲望を解放して花嫁となれ! 「ゼクシィメッセージ」という危険な檄(げき)文
この目次をめくると、10ページには「ゼクシィメッセージ」と題されたページが収まっている。そこには、森の中の草原を歩きながら、こちらを振り返るウエディングドレス姿の花嫁の写真が、見開きでドカンと掲載されている。細かい情報に移る前のイントロ、まずはここを見て気分を盛り上げ、幸せな結婚のことで頭をいっぱいにしてくれよな、というページである。
ここに掲載されているゼクシィメッセージの内容が、これまた凄まじい。大きく「結婚式だから、いいんです」と右ページ中段に見出しが入り、その下には中央ぞろえでなにやら詩のようなものが書かれている。それはまず「結婚決まっておめでとうございます」から始まり、次いで「ゼクシィから伝えたいこと」へとつながっていく。このメッセージの中で、ゼクシィは結婚が決まったカップルの特に花嫁の方に、結婚式だからできること、感じられることを、存分に味わってほしいと書いている。
以下の文章は、文末がすべて「いいんです」で終わるものが続く。大好きな人に思いっきり「大好き!」と伝えてもいいし、家族に感謝を伝えてもいい。ドレス姿の自分に浮かれてはしゃいでもいいし、ふたりのしたいことや好きなことを好きなだけ詰め込んでいい。思い切り笑って泣いて楽しめ。結婚式だから全ては許されると、ゼクシィは巻頭で我々にメッセージを投げている。
恐ろしいことである。「ふたりのお手伝いをさせてください」と言いつつ実際に語りかける対象が常に花嫁の方であり、4冊読めば大丈夫と豪語するこの雑誌が重要なメッセージとして伝えてくるのは、「欲望を解放しろ! 結婚式だから全ては許される!」という檄文なのだ。その檄文の横で振り返って微笑む花嫁の着ているウエディングドレスのレンタル料は、32万4000円である。う〜〜〜ん、32万か………………。
第二次世界大戦でフランスを降伏させる原動力となったドイツ軍装甲部隊。その有名な指揮官であるハインツ・グデーリアンの口癖は「ちびちび遣うな、つぎ込め!」だったという。金とアイデアの逐次投入を許さず、結婚式というその一点に向けて全てのリソースをつぎ込むことを全力で肯定するゼクシィの檄文を読んで、ふんわりと幸せそうな花嫁とは正反対のいかついグデーリアンの顔がチラつくとは……。欲望を解放し、リミッターを外してやりたいことをやれというメッセージは、これ以降のゼクシィの全ページに影を落としている。
ということで、奥付を見てたった10ページを読んだところで4000文字近くになってしまった。残りの1318ページにおいても、ゼクシィは花婿完全無視、花嫁だけに向けた豪速球を投げ込み、次から次に読者を波状攻撃するのだ。
関連記事
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
-
【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
-
「プロ野球チップス」で誤字 伊藤大海投手を「176m」と記載してカルビー謝罪
-
「ママ友襲来10分前」→さぁ、どうする……? 大爆笑の“あるある”再現が400万再生突破「腹ちぎれました」「バナナ食べんでもええやん」
-
富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
「大型魚の餌に!!」 熱帯魚店の“思わず目を疑うPOP”に恐怖 「サメでも飼うの?」
-
2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに手をスリスリされた瞬間…… 愛と幸せあふれる空間に笑顔になる「これぞ天使だ」
-
漂う違法感 東京に戻る息子へ持たせた“大量のブツ”に「九州人あるある」「帰省からの帰りいつもこれ」の声
-
異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」