「小学1年生が4割増えるかも」「卒業式が体育館で行えない学校が出てくる」 現役教員に聞く「9月入学制導入」の“多過ぎる課題”(2/4 ページ)

» 2020年05月04日 10時00分 公開
[ねとらぼ]

2:入学時期が5カ月間先送り→学校関連業者の体力が持つか

 もう1つお金の話をするよ。

 学校に副読本やワークを納入している教材屋さんって、新学年に移行する4月がかきいれ時なんだよね。でも、9月入学制に移行すると、それが5カ月間先送りされることになる。体力が持つかどうか。政府による支援を行うとなると、これもきっとお金がかかると思う。

 教材以外で言うと……パッと思いつくところだと給食関連の業者も大変だろうね、今年の4月〜8月のあいだは給食が出ないことになるから。細かく考えていくと、さまざまな業種、企業に影響が現れると思う。

3:“卒業式が体育館で行えない学校”が出てくる?



 入学が9月になると、卒業シーズンは夏休み前の7月になると思う。そうすると、卒業ソングに出てくる花も桜からひまわりに変わり、卒業式は涙なのか汗なのかよく分からない感じになり……というのは半分冗談だけど、実際、季節の違いで影響が出る部分もあると思う。

 夏場の暑い体育館で、これまでのような長時間にわたる卒業式を行うのは熱中症のリスクがある。入学式も、新入生(中学1年生)は小学6年生から上がったばかりで、まだ体力がないから心配だ。

―― “実はこの季節だったからできた行事”というのも考えられるのか。

 体育館にエアコンが入らない限り、このあたりの行事は難しくなるかもね。

 また、授業の話をすると、国語の学習指導要領には「我が国の伝統と文化に対する関心や理解を深め〜」「我が国の言語文化に親しんだり理解したりすることができるように〜」などと書かれていて、教科書では最初の方に春を題材にした作品が載っていることが多い。

―― 四季の移り変わりを意識してるのかな。俳句の理解などにも必要なことだろうし。

 でも、今年度から9月入学にすると、生徒は暑い時期に春らしい文章を読むことになるわけだよね。季節感が全くない。かといって、教科書のページは簡単なもの→難しいものと並んでいるから、単純に「途中のページから教えていき、春になったら最初のページに戻る」で良いのか、という疑問もある。

―― 9月入学に対応した新しい教科書ができればクリアできそうな問題だけど、それにはどれくらいかかりそう?

 教科書ができるまでには、3〜4年くらいかかる。教材探しをして、著作権まわりの掲載許可をもらって、教科書検定に合格して……とやることがいろいろあるからね。来年度でも対応しきれないと思う。

4:入学時期と一緒に、卒業時期が変わると起こること

 学校では、長期休暇を利用していろいろなことが行われている。例えば、部活動の大きな大会。高校の話になってしまうけど「春の甲子園」は3月、「夏の甲子園」は8月に行われるよね。

 野球部に限らず部活動は課程外だから、基本的には学校がないタイミングでやる。だから春休み、夏休みシーズンを利用するわけ。

 ここで問題なのは“入学時期の変更に伴う、卒業時期の変更”。さっきも「入学が9月になると、卒業は7月になると思う」と言ったけど、これだと「夏の甲子園(8月)」は、3年生の卒業後に行われることになる。

―― その場合、3年生最後の大会は3月に移るのかなあ。

 教員採用試験も学校がない夏休み期間、7〜8月を利用して行われている。現行のスケジュールのままだと、大学4年生で受験する人は「受かれば教員、落ちれば無職」ということになってしまう。

 特に公務員系の試験は、こんな風に夏に行われるものがけっこうあって、大幅に日程変更されると思う。

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