「永久機関がムリなのはエネルギー保存則が成り立たないから」はちょっとおかしいから、実際に作って考えてみた(2/2 ページ)
「ボイルの自己循環フラスコ」の作り方
まずは材料集めです。空きビン1個、曲がるストロー2本、ティッシュ1〜2枚、セロハンテープ適量と、ご家庭にあるもので十分作れますし、なければ100円ショップで購入できるものばかりです。
まずはストローを短く切りましょう。1本はこのようにバッサリと切ります。使うのは曲がる部分がある方です。もう1本はそのままでOK(ビンのサイズに合わせ、必要に応じてカットしてください)。
そうしたら、2本のストローにねじったティッシュを突っ込み、貫通させたらストロー同士をドッキングさせます。
最後に余ったティッシュを切り落とし、ストローをセロハンテープでビンに固定したら……
完成です!
え、地味? まあこの永久機関を世界に広める際には、見た目も気にすべきでしょう。しかし今はまだ実験段階。見た目は二の次で、機能のブラッシュアップに集中します。
パッと見、元の絵とは異なりますが、装置が働く仕組みは同じです。ビンに入れた水をティッシュが吸い取り、ストローを上って滴り落ちます。落ちるはずです。落ちてくれ。
さて、輝かしい栄光を期待しながら水を注ぎます。
また、今回は見ていない間に水が落ちても分かるように、ビンにティッシュでフタをしました。
後は放置するだけ。もし一滴でも水が落ちたらその瞬間世界が変わります!!
「ボイルの自己循環フラスコ」がうまくいかない理由とは
世界中から送られる称賛の嵐を夢見ながら、一晩寝かせた結果がこちらです。
ビタ一滴落ちていません!!!
写真では分かりにくいのですが、ストローの出口からはみ出したティッシュがぬれています。つまり、水はちゃんと吸い上げられ、出口まで来ているのです。でも落下はしていません。ぐぬぬ、あと一歩なのに……!!
なぜ水は落ちてこないのか。ものすごーく簡単に説明すると、“重力よりも強い力”がはたらいているためです。
毛細管現象により、水はティッシュの詰まったストローの中を上ります。ということは、“重力よりも強い力”が作用しているわけです。一方、出口から落下するときには重力に引っ張られるわけですが、ここでも“重力よりも強い力”がはたらき、ティッシュに留まってしまうのです。
「いやいや、そうきんから水が滴ることだってあるだろ」と思うかもしれませんが、それはぞうきんが保持できる以上の水を含んでいるから起こるもの。ビンの中にはたっぷり水が入っていますが、まあ考えてみれば当たり前の話で、保持できる以上の水を吸い上げるはずがありません。
そもそも毛細管現象とは、水が表面積を小さくしようとして生じる現象です。水に管を差すと、管の内壁にごくわずかに水が上がります。その上った水が小さく縮まろうとして、下の水を引き上げることによって生じるのです。
したがって、管の中の水が満たされていればそれ以上は水が入りませんし、重力に勝るので出口が下向きでも落下することはありません。
ちなみに、毛細管現象が起こるきっかけの「管の中で水が盛り上がる」現象ですが、管の太さや材質によって上昇量が変わります。そして引っ張り上げる力も、管の太さや材質によって変わります。
「ということは、入口と出口で管の材質を変えればうまくいくんじゃないか?」
と思ったそこのあなた! そう思ったのなら、ぜひやってみましょう!
先人の失敗から学び、原因を取り除き、少しずつ成功に近付いていく……。それが科学の歴史であり、人類の歴史です。栄光はその先にあります。
さあ、あなたも永久機関の沼にハマりましょう!
(キグロ)
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