ウェイ系の人種はそこまで怖くない「かぐや様は告らせたい?」9話 陰キャ石上の決意(1/2 ページ)
辛いことも多いけど、優しい先輩たちに恵まれています。
恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第二シーズン。とってもいとしくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。
今回から会計の石上が大きく動き始めます。今まで皮肉屋でネガティブだった彼。なぜ嫌われ者なのか、なぜ斜に構えているのか。青春の痛みがうずく。
私のルーティーン
前回8話で、ラブコメでは欠かせない体育倉庫イベントが発生し、事故でキス寸前までいってしまったかぐやと御行。以来、かぐやは初の経験に心臓がバクバク、頭がぐわんぐわんになりっぱなし。通称恋の病で生活もままならなくなりました。
恋愛をして一日中頭がいっぱいになる、というのはよくあることではありますが、さすがに日常生活に支障を来すとなると問題。そこで近侍の早坂がルーティーンを提案します。
ある行動を取ることで、精神状態をリラックスさせたり集中したりすること。何がベストなのかは人によります。現実の話だと、ビル・ゲイツは寝る前に皿洗いをするルーティーンでリラックスしているそうですよ。
一定の経験を何度も繰り返すと、神経細胞間のシナプスが強化されるというのは事実のようですが、あくまでも早坂理論ということで。かぐやが発見したのは「右手で左の頬を触る」という比較的簡単なリラックス法でした。リラックスする=右手で左の頬を触る、と刷り込み幾度も続ければ、心をリセットするスイッチになるのではないか、という説です。
かぐやは天才なので、数日で会得しました。リラックスするときは必ずルーティーン。これもまた努力。
早坂いわく「これを会得すればかぐや様にとって強力な武器になるでしょう」。会得したかぐやの早変わりっぷりは相当なもの。心臓の病気がなんたらと言っていたのがまるでウソのように、触れるだけでリセットされるようになりました。ここまで変わるとなると、いざという試験や試合でも使えそうな、まさに武器レベル。
ただこの描き方でどうしても気になるのは、目の表現がかつての、冷酷にしゃべっていた時期のかぐやになっているところです。今期の2話で、かぐやの中には「現在の通常時」「アホ」「氷」「幼」の4つのペルソナが存在し、脳内会議を行っている様子が描かれました。このリラックス方法を行ったことで出てきたのは「氷」のように見えます。
目に光が入っている通常時かぐやも、ハイライトのない氷かぐやも、どちらも間違いなくかぐや。ただし単純に「リラックスできた」とはちょっといいづらいようにも見えます。
学校で御行が「俺の事を避けてないか?」と心配してかぐやに話しかけるシーン、心臓ドキドキテンパリゲージを抱えたかぐやはアニメでは、格ゲースタイルで演出されていました。ルーティーン習得シーンなど、こういうネタの入れ方が今回のアニメではとても楽しい。
このリラックス方法、今回はギャグで落ちていますが原作ではかなり重要なものとして描かれていますので、気になる方は要チェック。
石上の大きな一歩
生徒会きってのネガティブっ子、石上。学年みんなに敬遠され、相手にされず、いら立ちをつのらせていた少年。「なぜ」がたくさん浮かぶ人物です。嫌われている理由は? 生徒会に入ったわけは?
彼がこの話で「僕が間違っている」と理解し、わざわざ応援団という陽の極みみたいなところに飛び込んだのは、作品の大きな転機になっていきます。
ナレーションでも「陰キャ」といわれてしまう石上。実際にそうかどうかはともかく、応援団に入ると相対的に陰側になってしまいます。そこから動いて、自分を肯定するのはものすごく体力のいることです。
「ウェーイ!」「わしょーい!」「オケ丸水産!」「マジ卍」。恐らく作中の応援団員たち、この言葉に深い意味はないと思われます。勢いとノリです。わざわざ「応援団に入って明るくなれるよう頑張ろう」みたいに考えている石上とはそもそもが相いれない。
アゲアゲなメンツに全然ついていけない石上。彼の中に一つ、悲しい思いがよぎります。「でもこいつ等 僕より成績良いんだよなぁ……」
これは事実。明るく元気で、頭が良くて、友達が多くて、男女の仲も良くて、日々充実していそう。劣等感が刺激されまくってしまう。
でも少なくとも彼のことをいじめたり、爪はじきにしている「ウェイ系」の人間はいません(同じクラスの小野寺以外)。今回特に優しかったのは副団長の子安つばめ先輩。初登場です。ラインの交換で輪に入れなかった石上に声をかけ、連絡用のメアド交換をしにきます。
つばめ先輩がすごいのは、親切の押し売り感がないところ。こういう時にぐいぐい自分たちの価値観を押し付けると、かえって惨めに感じるものです。しかし「もしかしてラインやってない人?」とまず相手の価値観に視点をあわせ、「無駄なスタンプの打ち合いになるだけだし」と相手が気を使わないよう配慮で代替案をあげ、「連絡事項だけメールするからさ」とプライバシーを傷つけないよう前置きもしてくれている。コミュニケーションとしては満点以上。
さらに連絡のメールでは絵文字を使って華やかにし、「一緒にがんばろーねー」と仲間であることをアピール。既に輪に入っていることをフォロー。
この学校の「ウェイ系」は、決して自分勝手な人種ではない。敵ではない。つばめ先輩の行動がしっかり示してくれています。そりゃ頑張ろうって気にもなるってもんです。
もう一人今回優しかったのは、意外にもかぐや。「女装用の制服を借りる」という陰キャにはキツすぎるミッションに、優しく手を差し伸べてあっさり貸してくれました。
今まで石上からすると勉強の鬼コーチ的存在だったかぐや。「別に私の服でよかったら貸しますけど」「せっかくですしメイクもしてみますか?」と驚きの温かさ。
ウェイ系怖い、かぐや怖い、というのは実のところ考えすぎで、案外みんな優しい。今回の体験は、人間不信だった石上の価値観を大きく変えるものになります。
以後恐らく石上絡みの話はさらに深く掘り下げられ、生徒会の在り方もそこに絡んで見え始めるはず。加えてつばめ先輩は、原作ではものすごく重要な人物になっていきます。
残り3話で、アニメがどこまで描いてくれるのかも楽しみ。基本ギャグではあるものの、選挙時の伊井野ミコのような難しい心の問題も丁寧に、優しく描いてくれたアニメ版。石上の話の演出に期待しています。
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