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» 2020年06月17日 19時00分 公開

月刊乗り鉄話題(2020年6月版):雨の景色、山の呼吸。南海電鉄「天空」の思い出 (1/3)

50歳の電車が晴れ舞台でがんばります。そして「雨天こそ旅のリアル」です。

[杉山淳一,ねとらぼ]

 緊急事態宣言が解除されました。しかし、まだまだ予断を許さない状況です。旅に出たい気持ちをグッとこらえて、今回も旅の思い出に浸ります。

 梅雨の空、雨の車窓のオススメはどこかと言えば、南海電鉄の観光列車「天空」の旅です。ぜひ今年も、とオススメしたいところですが、残念ながら2020年6月15日現在、「天空」は感染症拡大対策のため運休しています。今回は机上でお楽しみください。

南海 天空 観光列車 高野山 南海2200系電車を改造した観光列車「天空」。あの日も雨だった

高野線の絶景を楽しむ列車「天空」

 南海高野線は大阪の中心、難波駅から極楽橋まで延長64.5キロの路線です。有料特急「こうや」に乗って極楽橋へ行き、ケーブルカーに乗り継いで高野山へ上がる。これが高野山参詣の代表的なルートです。

 南海電鉄は2009年、このルートに新たな旅を提案しました。世界遺産・高野山へ向かう道のりを楽しんでもらいたい。「こうや花鉄道プロジェクト」です。南海電鉄と地域の人々が参加し、協働する取り組みです。

 具体的には高野線の橋下〜極楽橋間を「こうや花鉄道」と名付けて、九度山駅に花壇を、高野下駅には花屏風を設置。沿線に菜の花を植え、竜王渓の森林整備などを行って、車窓風景を整えました。そして、こうや花鉄道の景色を楽しむ列車として観光列車「天空」がデビューしました。

南海 天空 観光列車 高野山 高野山へ、そして「こうや花鉄道」の景色を楽しむ観光列車「天空」
南海 天空 観光列車 高野山 南海高野線の位置 赤い線が「天空」の運行区間(地理院地図を加工)

 森林をイメージした深い緑色に、高野山根本大塔を思わせる朱色のアクセントライン、室内は木材を使ったインテリア。畳敷きのチェストもあります。最大の特徴はオープンデッキです。つまり吹きさらし。森林の風をたっぷり浴びられます。座席は進行方向に向いた2人掛け、グループ向けのボックスシートとガラス張りの簡易個室。そして車窓に向き合えるベンチシートが並びます。「和モダン」風ですね。

 しかし、外観はレトロな「むかしの電車」です。じつはこの車両は、1970年に作られた通勤電車22000系です。なんと50歳!!

 22000系は高野線の勾配区間に乗り入れる高性能車「ズームカー」として誕生し、当初は南海高野線の急行として活躍。後に花形の座を後輩電車に譲り、延命処置として車体を更新して2200系となり、ローカル運用に就きました。この世代はとても丈夫で、いまだ多くの車両が現役。南海貴志川線だった和歌山電鐵の「たま電車」(関連記事)や「いちご電車」も仲間です。

 このうち、南海に残留した2両が「天空」に改造されました。元ズームカーの勾配走破性能に白羽の矢が立ったのでした。そして天空は10年以上も人々に親しまれ、高野山観光ルートとして定着しています。還暦を迎えるまでがんばってほしいです。

南海 天空 観光列車 高野山 車内に貼ってあった製造銘板。昭和45年、つまり1970年製。東急車輌は現在の総合車両製作所。大阪製作所は和歌山に移転した
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